令和2年11月10日発行の『天台宗報』通巻336号には、天台宗典編纂所による「日光山輪王寺・身延山久遠寺資料調査を実施」という報告書が掲載されています。天台宗の法灯を絶やさないために、貴重な文献をマイクロフィルムにするという作業が実施され、その模様が詳しく紹介されています。
なぜマイクロフィルムかといいますと、デジタル機器は、最近の機材で画素数が向上する傾向があり、機材を変更するたびに現像された画像に大きな変化が出てしまいます。また、被写体をフィルムに焼き付けることで、時代が変わってもの解像度の変化がないばかりか、管理を適切に行うことができるからです。
本年は8月25日から27日まで日光山輪王寺宝物殿、28日は日蓮宗総本山身延山久遠寺が調査の対象となりました。
同編纂所は、日光山輪王寺では幕末の千日回峰行者願海編『佛頂尊勝陀羅尼明実験録』三冊、江戸後期の碩学である慧澄大和尚撰の『儀軌伝授要略』や慧澄大和に関連する興雲律院蔵『興雲院輪番記録』3冊について撮影しました。
また、身延山久遠寺では『一流相伝法門見聞』などとともに、伝教大師最澄撰の『決権実論』の最古とみられる写本も確認撮影しました。
『決権実論』というのは、渡邊守順著の『伝教大師著作解説』によれば「徳一法師の三乗一乗の主張に対して反論した問答書」です。そこには徳一の反論文も載っている貴重な文献です。
日本仏教の歴史が解明されるためにも、天台宗典編纂所による資料調査は大事なことです。それに携わっている皆さんには、心から敬意を表したいと思います。
合掌
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