今回も大谷同様に館蔵品展で、絵画は三部構成の展示でした。
第1部は「新しき仲間たち」として2015年度に寄贈された37点の作品を展示、第2部は「万葉コレクション」として歴代の寄贈作品18点が展示され、第3部は「万葉日本画大賞展」で、これまで万葉文化館が主催した「万葉日本画大賞」の受賞作品のうち15点が展示されていました。他に、万葉陶磁器人形10点と、常連の感がある大亦観風の「万葉集画撰」から10点が展示されていました。
絵画はいずれも名品ぞろいで見ごたえタップリ。
第1部は、井上 稔と烏頭尾 精の作品がズラリと並んでいて壮観でしたが、私は中路 融人(なかじ ゆうじん)の『山湖』と、三瀬 夏之介の『風土の記(かぜつちのき)』が良かったです。『山湖』はそれほど大きな作品ではないのに遠目からも目立つインパクトのある絵でした。対照的に『風土の記』はパネル8枚組の大作で、力強い筆致でド迫力。
第2部では、新井 冨美郎の『穂高岳』、久保 嶺爾の『曽爾冬声』、三輪晃久の『万緑』と由里本 出の『激つ瀬(たぎつせ)』が印象に残りました。
三輪晃久の『万緑』です↓
とくに久保 嶺爾の『曽爾冬声』は、学生の時よく通った曽爾高原がリアルに描かれていて、冬の静かな高原のたたずまいや、遠くに描かれた古光山がなつかしく、しばらく画面に見とれていました。
第3部は万葉文化館が主催した「万葉日本画大賞」の第1回から第5回までの受賞作品が展示されていました。いずれもさすがに受賞作品だけあって逸品ぞろい。この展示だけでも見ごたえ十分でした。
中でも第2回の大賞に選ばれた古屋 雅子の『緑薫(りょくぶ)』がよかったです。↓(当日購入した絵葉書から)
次は第1回の準大賞に選ばれた大矢眞弓の『秋色』と、
第2回の準大賞作品の長谷川 喜久の『アサヨヒ』が
甲乙つけがたいいい絵でした。
でも、館蔵品展とはいえ今回も観客は少なくて、その分ゆっくり観られたものの、いささか寂しかったです。おかげで何度も展示会場を往復したりして楽しめましたが、ヨメさんも「せめて大谷ぐらいのお客さんがあればね」と嘆いていました。やはり交通の便が悪いのでしょうか。でも定期バスは通っているので、知名度が低いせいかもと思ったり。
観終えて、館内のカフェで昼食。
私は、サンドイッチ+カレーセット、ヨメさんはスペシャルサンドと水出しコーヒーを注文しました。パンは天然酵母でおいしかったですが、ランチメニューが少し前から無くなってしまったのが残念。
ミュージアムショップで絵葉書や便箋などを買いましたが、会場内に見本があった中路融人展の図録が売り切れでプチがっかり。
というわけで、館蔵品展なのであまり期待せずに出かけたのですが、大谷記念美術館に続いていい絵が観られて、満足でした。
万葉文化館は完全バリアフリーで、車椅子利用者も快適に見られるし、富本銭の出土遺構や、万葉集の時代の生活を紹介する展示も多彩で、本当にいい施設だと思います。
ぜひ皆さんもお出かけになってご覧ください。おすすめです。
今年初の美術館巡りとして、1月2日に大谷記念美術館に行ってきました。
館蔵品の中から「日本画にみる 四季のうつろい」と題して約50点が展示されています。
(画像は当日購入した絵葉書から)
ちなみに去年の最終は、大阪国立国際美術館の「アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」でした。(1月15日まで開催)
宗教画が中心で、ジョヴァンニ・ベッリーニからクリヴェッリ、カルパッチョ、ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼまで、ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たちの傑作が展示されていました。とくにティツィアーノの晩年の大作「受胎告知」(サン・サルヴァドール聖堂)は圧巻でした。
それはさておき、大谷美術館の開館は午前10時なので、9時すぎに出発。予定通り10時には駐車場に到着しました。まず庭園のロウバイの開花を確認しましたが、今年はまだ蕾ばかりで、ちょっとガッカリ。
気を取り直して館内に。初日ですが、正月とあって、観客は少なく、ゆったり鑑賞できました。
まず目に入ったのは山下摩起の「雪」。
これまでも何度か観ていますが、いつ観ても新鮮です。
笹に積もった重い湿った雪が、時折葉から落ちて、静かな庭にその音が響くといった感じがよく表現されています。近くで細部を見ると何が描いてあるのかわからないような荒々しい筆致ですが、少し距離を置いて観ると、くっきり笹や雪が見えてくるのが不思議です。
この画家の作品は他にも「椿」・「さざんか」・「女三態之図」が展示されていましたが、とくに後者の「女三態之図」は、古典的な女性を題材にしながら現代的な表現が印象的でした。
「さざんか」↓
「女三態之図」↓
今回の目玉は河合玉堂と上村松園、伊藤深水の作品群です。いずれも代表作といえる逸品ぞろいで見ごたえ十分。中でも河合玉堂の「乗鞍」をはじめとする8点の作品はどれも詩情があふれ、分かりやすくて(笑)、いい絵ばかり。
「乗鞍」↓
上村松園は3点、伊藤深水も4点並べて展示されているので、両者の作風の違いがよくわかりました。
松園は端正で上品、それに比べると深水は親しみやすい(平たくいうと俗っぽい(殴))し容貌も写実的です。でもどちらもいい傑作ばかりで、しばらく足が止まってしまいました。
松園の「蛍」と
深水の「菊」がとくに良かったです。
単品でも小倉遊亀の「赤鉢絵」や
横山大観、菱田春草に前田青邨、堂本印象、山元春挙など、日本画の大家の名品が展示されていて、お正月にふさわしい豪華な展示でした。
菱田春草「秋林遊鹿」↓
山元春挙「雪渓遊鹿図」↓ さて鹿はどこにいるでしょう?
観終えて受付で絵葉書(@50円!!)を買ってから、庭園巡り。
先に書いたようにロウバイはまだでしたが、シコンノボタン(紫紺野牡丹)がたくさん花をつけていました。
この展覧会は2月12日まで開催されています。ぜひご覧ください。おすすめです。
今回の展覧会はピカソ・シャガール・セザンヌ・モネ・ゴッホ・ドガ・ゴーギャン・カンディンスキー・ルソー・ダリ・マグリット・マティス・クレー・ミロと、ビッグネームぞろいの豪華さ!
展覧会のホームページでも、
圧巻!すべてが代表作
スイスが誇る美の殿堂チューリヒ美術館のコレクションを、日本で初めてまとめて紹介します。出品されるのは幅6メートルにおよぶモネの大作やシャガールの代表作6点に加え、ホドラーやクレーといったスイスを代表する作家の珠玉の絵画、さらにはマティス、ピカソ、ミロといった20世紀美術の巨匠の作品など、これまでなかなか来日の実現しなかった印象派からシュルレアリスムまでの傑作70点以上。スケッチや習作がほとんどない、まさに「すべてが代表作」といえるラインアップです。
と、これを見逃すと一生後悔しますよ、みたいな感じで宣伝しています。
ちなみに会期等は以下の通り。
■ 場所: 神戸市立博物館(神戸・旧居留地) www.city.kobe.lg.jp/museum/
〒650-0034 神戸市中央区京町24
■ 会期: 2015年1月31日(土)〜5月10日(日)休館日毎週月曜日 ただし、5月4日(月・祝)は開館
■ 開館時間:午前9時30分〜午後5時30分 土曜日は午後7時まで
ということで、晴れの予報だったので、公園に行ったほうがいいかなと最後まで迷いつつ(笑)、神戸に行くことにしました。
でも美術展にしてよかったですね。途中の天候は予報に反して、どんよりした曇り空。
途中渋滞もなく、9時に出発して快走、1時間もかからず博物館に到着。近くのタイムズに駐車して館内へ。
木曜だったせいか会場もそれほど混雑しておらず、車椅子でも楽しく観ることができました。
来るたびに思いますが、神戸市立博物館は本当に車椅子にやさしい。
まあ障碍者手帳の提示で本人と付添1名を無料にしてもらえるというのもありますが(笑)、それよりなにより、施設の配置が利用者本位、館内は明るくトイレやエレベーターのサインもわかりやすく、適所に配置されたスタッフも親切。このあたり、兵庫県立美術館とはまったく対照的です。
でも今回の企画展は、日本スイス国交樹立150年記念催事の一環として、その兵庫県立美術館のホドラー展とタイアップしています。(笑)
なので、美術館でホドラー展の当日券を購入する際にチューリヒ美術館展の観覧券(半券可)を見せると100円引き、逆に博物館でホドラー展のチケットを見せると、チューリッヒ展のチケットが同額の割引になるとのことです。ただしホドラー展のほうが早く終わるので、相互割引も終了しますが。
今回も、マイペースで気楽に観るのがいいので、解説のヘッドホンは借りませんでした。途中でわかったのですが、解説マークの付いた絵も少ないので、あまり意味もない感じです。(笑)
会場内はそこそこの人出。でも並んで押し合いへし合いではなくて、車椅子を押しながらでも、周りにそれほど気兼ねせずに鑑賞することができました。
会場は14のセクションに分かれていて、本来は3階から観て、2階に行くというのがコースですが、私たちはエレベーターの階番号を確認せずに降りたため、2階から観てしまいました。^^;
ということで、変則的ですが「ムンク」コーナーから観始めました。ムンクといえば「叫び」でしょう。しかも今回の展覧会のキャッチフレーズが「すべてが代表作」となっているので当然「叫び」があるかと思ったら、これがムンク?な作品ばかり。でもいい絵です。(笑)
この肖像画↓など、とてもムンクとは思えないです。
解説ではこれを描いたのは生活のためでもあるとのこと。でも肖像画としてある種のインパクトはありますね。思わずこんな絵も描けるんや!でした。ちょっと以前のデュフィ展で見た肖像画に似た感じです。
続いて「表現主義」のコーナーではベックマンが目を引きました。
デフォルメが入っていますが、「マックス・レーガーの肖像」など、モデルの人柄がよくわかる気がします。
次の「フォーヴィスムとキュビスム」のピカソはいかにも!でしたが、「シャガール」のコーナーは意外というか新鮮なシャガールばかり。
この↓「婚礼」という作品も初めて観ました。
ユダヤ人だったシャガールは大戦中、ナチスの迫害から逃れるためアメリカへ亡命、その最中に、最愛の妻ベラを亡くしていますが、この作品は1945年の作品で、失意を乗り越えて妻との婚礼の記憶を描いたものだそうです。同じ画家の「戦争」や「窓から見えるブレア島」もいい絵でした。
2階の最後のコーナーは「シュルレアリスム」。
ダリが大好きな私は今回一番楽しみにしていました。でもダリの絵を観て思わず「ちっさー!」
絵柄はダリそのものですが、予想に反し35×27cmという小さい絵。ちょっとガッカリ。^^;
それと、同じコーナーのマグリットですが、私的には彼の代表作といばあの浮遊する岩の絵だったり、「顔のない人物」とか巨大なリンゴだったりしますが、展示されていたのは、「9月16日」という結構地味な絵でした。これもそれほど大きくない絵です。
で展示は終わりとなったので、ヨメさんとこれはおかしいねということで、近くのスタッフに聞いて入口を間違えていたことに気づきました。それで急きょ3階に移動。
会場で眼に入ったのはあのセガンティーニ。この画家の絵は2011年に佐川美術館で「特別企画展 アルプスの画家セガンティーニ -光と山-」で初めて観ましたが、なかなかわかりやすくて(笑)いい絵ばかりでした。
今回展示されていたのは「虚栄(ヴァニタス)」と「淫蕩な女たちへの懲罰」の2点。これは確かに代表作といえそうです。
で、その横があのホドラー。(笑)
確かに展示されていたのは代表作ですね。中で一番気に入ったのはこれ↓ 「日没のマッジア川とモンテ・ヴェリテ」です。
ホドラーの風景画では一番馴染めます。(殴)
でもモネとなるとちょっとね。
「睡蓮」だそうですが、もう朦朧としています。最近観たターナーの例↓のとおり、
多くの画家がその最晩年になると絵の輪郭がぼやけてきたりしますが、モネも同じ。大作ですが、よくわからない絵。
同じ場所にあったドガの「競馬」も、意表を突く作品。
チューリッヒ美術館の歴代の蒐集担当は只者ではないです。(笑)
次の「ポスト印象派」もかなりユニークでした。
ゴッホの「サント=マリーの白い小屋」とか↓
ゴーギャンの静物画や
セザンヌの「サント=ヴィクトワール山」など
アンリ・ルソーは「X氏の肖像」といういかにもな作品です↓
次の「ナビ派」ではボナールの「犬と一緒にいる女性」が印象的。
ということで、このチューリッヒ美術館展、かなり意外性のある作品が多くて、それなりに面白かったです。
先に紹介したキャッチコピーの「すべてが代表作」というのはちょっと強引ですが、それに続く説明文が「近代美術史を彩る巨匠たちの傑作や、画業を代表する名品ばかり74点が集結。」というのはまあまあ妥当かな。(笑)
でもこの美術展は、先のホドラー展とは対照的に、多彩な画家の多彩な絵が観られるので、かなりお得でお勧めです。
さて次の神戸行きは、2015年4月18日より開催される兵庫県立美術館「堀文子 一所不住・旅」展です。楽しみです。
平日の木曜日でしたが、高速道路は超空いていて、1時間で到着。
会場は立錐の余地のない超満員!なわけなくて、珍しく少なめな観客。車椅子での鑑賞には願ってもないことですが、チラっと不安も。(笑)
館内で記念撮影↓
今回は鑑賞に集中できるようにヘッドホン・ガイドは借りませんでした。ヨメさんは借りたそうでしたが、あえて気付かないフリ。(笑)
余談ですが、あのヘッドホンはどれも使い勝手が悪いですね。絵の前に立ったら自動的に音声が流れるようにしたらいいのにといつも思います。操作に気を取られて集中出来なくなるのが嫌ですね。
今回の展示会場は7つのセクションに分かれています。最初は「光のほうへ-初期の風景画」。
↓こんな絵が架けられています。
あと《インターラーケンの朝》とかも平凡ですがいい感じでした。
ところで今回も、展覧会に行こうと言い出したのはヨメさんです。
彼女はNHKの「日曜美術館」をいつも見ているので知っていたようですが、私はその時間帯は夕食の後片付けや風呂の準備で忙しくて見られず。なので、ホドラーなる画家の作品は全く知りませんでした。
ただその番組で、スイスを代表する画家とかの紹介がちらっと聞こえたので、2011年に観たあのセガンティーニみたいな画家かな程度に思っていました。
で、最初のセクションではそういう風景画もあったりしましたが、次の「暗鬱な世紀末?-象徴主義者の自覚」では一転して《死した農民》とか《病み上がりの労働者》などの暗い題材へと変化。
別にそういうモチーフでもいいのですが、なんか画風が私にはあわないなと思い始めました。描き方がどうも手抜きな感じ(殴)で気になります。ええ、単なる好みの問題なのですが、その好みが、実は私にとって決定的。(笑)
そういう違和感を抱きながら次のセクションの「リズムの絵画へ― 踊る身体、動く感情」に移動。
なにしろリズムの絵画!そして 踊る身体、動く感情ですからね。期待しながら絵に向かいました。
そして冒頭の展示は《オイリュトミー》↓
男たちがみんなうなだれて歩いています。葬送の列みたいです。(殴)
ちなみにオイリュトミーとは「良きリズム」だそうですが、よくわからなかったですね。鑑賞眼ナシですね。
でも次の《感情 III》はちょっと動きがあるかな。
でも顔をそむけながらなにかから逃げていくようで、あまり良さがわかりません。
そして《夕べの休息》↓
踊る身体とか動く感情とは対極の絵だと思って観ていました。
唯一テーマの意味が伝わってきたのが《恍惚とした女》↓
宣伝でも使われていますが、これだけは踊っていますね。モデルは画家の愛人でモデルを務めたヴァランティーヌ・ゴデ=ダレルでしょうね。
次は「変幻するアルプス ― 風景の抽象化」というコーナー。
《ミューレンからみたユングフラウ》です。↓
荒々しいタッチで、インパクトがあります。画家はユングフラウやシュトックホルン山群、レマン湖といったアルプスの風景を繰り返し描いていますが、みんないわゆる風景画とは異なって変わった絵が多いです。どれもユニークですが、も一つピンとこないです。
で、そんな乗れない気分のまま「リズムの空間化 ― 壁画装飾プロジェクト」で《木を伐る人》とかを観てから、「無限へのまなざし ― 終わらないリズムの夢」と回って、最後は「終わりのとき ― 晩年の作品群」。
ここでヴァランティーヌ・ゴデ=ダレルの癌発症後の肖像の習作や、死後の痩せ衰えた姿の絵を観せられてとどめを刺されました。(笑)
自分の子までもうけさせながら、冷徹な観察眼で突き放したように描く一連の絵にはちょっとついていけない感じでした。
画家とはそんなものだよと言われるかもしれませんが、私はダメですね。
観ながらちょっと小野小町の九相図を連想したり。まあそこまでグロではありませんが。
ホドラーは装飾画家からスタートしたとのことで、それが終生画風にあらわれていますが、彼のいう「パラレリズム」の原理とか、よくわかりませんでした。絵は理屈で描くものではないと思いますが、浅学菲才の私が分らないだけかもしれません。
観終わってから、阪神・淡路大震災から20年の節目となる日を含むこの期間中開催されている↓の展覧会を観ました。
震災をテーマに、コレクションを軸に借用作品も交えて展示されていて、
第1部 自然、その脅威と美[常設展示室6]
第2部 今、振りかえる-1.17から[常設展示室1・2・3]
第3部 10年、20年、そしてそれから-米田知子[常設展示室4]
という三部構成になっていました。
とくに第1部では、震災発生当時無防備に展示されていたコレクションがどのような被害にあったのか、その修復と展示方法の改善手法などがよくわかって興味深かったです。
常設展示も口直しに最適で(殴)、ホッコリした気分になっていつものカフェへ。
私はコレ↓
まあ値段相応で納得。
でもヨメさんのコレはちょっと落ちている感じ↓
まあ今回のホドラー展、混雑も他の展覧会ほどではなく観やすかったですが、知人には勧めなかったです。でも個人的な感想で、あくまで好みの話なので、今後展覧会に行かれる予定の方はぜひお出かけください。
ヨメさんは「変わっていて面白かった」と言っていました。(笑)
さて、いよいよ星組のサヨナラ公演観劇です。どうなりますやら。
はじめは何で子供の描いた絵など観たいのかなと怪訝に思いましたが、子供が描いた絵ではなく、こどもを描いた絵の展覧会だったのですね。(笑)
で、会場は大阪市立美術館。天王寺公園の中にある美術館です。初めて行ったのは「ボストン美術館 日本美術の至宝」(大阪展)でしたが、早いものでもう一年以上前のことになります。
このときはかなりの観客で混雑したので、今回はどうかなと思ったのですが、まあとにかく行ってみようと、出かけることにしました。
朝9時すこし前に出発。阪神高速の天王寺出口を出たらすぐ駐車場の入口です。天王寺公園の地下にある駐車場内はまだガラ空きでした。
障害者スペースに停めましたが、場内の案内表示板に従うと美術館への出口はそこからかなり離れています。
最初はその案内板に従ってその出口まで車椅子を押して行き、車もその付近まで移動させようと私はまた車に戻りました。そして車を移動させていると、ヨメさんの車椅子が誰かに押されてこちらに来るのが見えました。押してくれているのは清掃作業をされている女性スタッフです。
近づいたらヨメさんが「あの出口は階段しかないので、もとの障害者スペースの横にあるアベチカ入り口横のエレベーターでないと車椅子は地上に上がれないらしいよ」と。
件の女性、それを教えてくれた上に、わざわざ元の位置まで車椅子を押してくれたのです。本当に親切でした。
私もお礼を言って、再び車を戻し、アベチカ通路のエレベーターで地上に出ました。考えてみれば前回もそうしたはずなのにすっかり忘れていました。
公園の入場口で手帳を見せたら、本人と付添の私は無料にしてくれました。
公園ではもう秋バラが咲き始めていました。前回は建設途中だったハルカスが園内から見られます。
美術館に着いたら観客の長蛇の列ではなく、閑散としています。
美術館でふたたび手帳を見せて展覧会場へ。入り口で音声ガイドを借りて中へ。外の様子と違って中にはそこそこの観客が来ていました。ちなみに音声ガイドは竹内まりやの解説で聞き取りやすく、途中彼女の歌も入っていたり、解説内容も的確でお値打ちでした。
展覧会の正式名称は『こども展 名画に見るこどもと画家の絆』でした。展示は序章から第6章まで7つのエリアに分けられています。
展示作品は全部で87点。
入り口では閑散としていても中はそこそこの先客がいました。
『序章』で眼に入ってきたのはクロード=マリー・デュビュッフの作品です。いずれも正統派の肖像画です。
『第1章 家族』ではデュビュッフの『デュビュッフ一家の肖像、1820年』が古典的な精緻な画法でよかったです。でも解説にあったように家族の視線がバラバラなのが面白いです。
裕福そうな上記作品とは対照的なのがアルフレッド・ロールの『故郷を後に』でした。
ぐったりと元気のない子どもを心配そうに覗き込む農民のような夫婦の姿が胸を打ちます。まるでロシア・移動展派の作品みたいな絵です。
『第2章 模範的な子どもたち』ではアンリ・ルソーの『人形を抱く子ども』が異彩を放っていました。
どうみても子どもに見えなかったり。(笑)
それと全く異なるリアルな作品が、アンリ・ジュール・ジャン・ジョフロワ(長い名前です)の『教室にて、子どもたちの学習』です。子どもたちがさまざまな表情や姿で生き生きと描かれていて、資料的にも興味深い絵でした。当時の学校教育の一面がよくわかる絵です。
このコーナーで一番好きな絵はアンリ・デティエンヌの『娘、あるいはS嬢の肖像』です。
まるでメアリー・スティーンバージェンを少女時代に描いたらこうなったみたいな絵です。(笑)
『第3章 印象派』ではベルト・モリゾの『庭のウジェーヌ・マネとその娘』も印象に残るいい絵でした。
でもこのコーナーの一番の目玉はやはりルノワールですね。
『遊ぶクロード・ルノワール』とか
『ジュリー・マネの肖像、あるいは猫を抱く子ども』をはじめ4点も展示されていました。
ただ私的にはルノワールってみんな同じ人物に見えてしまうのですが、『ジュリー・マネの肖像』についてはユニークで新鮮な人物像で気に入りました。
次は『第4章 ポスト印象派とナビ派』
ポスト印象派とはセザンヌ、ゴッホ、ゴーギャンとその周辺の画家を指すとのことですが、この展覧会のテーマの子どもとなるとゴッホは生涯独身で子どもはなく、ゴーギャンも家族と別居状態になって子どもを描いていないということで、残るはセザンヌですが、その作品は大阪では展示されていません。なのでちょっと羊頭狗肉な感ありです。(笑)
多かったのはモーリス・ドニの作品で4点が展示されていました。
このコーナーではエドゥアール・ヴュイヤールの2作品が好みでした。とくに『ジェヌヴィエーヴ・ベルネーム・ド・ヴィレール』がなぜかインパクトがあってよかったのですか、絵葉書にはなっておらず残念でした。
『第5章 フォーヴィスムとキュビスム』はマティスやドラン、ピカソと巨匠の作品が展示されていました。
まあピカソはやはりピカソなので(笑)ちょっと好みではありませんが、↓の絵はいいと思いました。『ポーランドの衣装を着たクロード』です。
あと、アンドレ・ドランの『画家の姪』もこのコーナーでは逆に普通な絵(笑)で、かえって目立っていましたね。
最後は『第6章 20世紀のレアリスト』。
キスリング、パスキン、フジタなどのエコール・ド・パリの画家たちの絵をはじめ、20世紀の具象画が展示されていました。
ここではやはりレオナール・フジタの作品が人気でしたね。↓はそのひとつで『フランスの48の富』と
『機械化の時代』です。
『機械化の時代』では当時のフランスの最新の工業製品の代表として斬新なデザインで注目されていたシトロエンの乗用車や、飛行機のシュド ボートゥールがかなり正確に描かれています。
どちらの絵もユーモラスな描き方で、フジタとしては明るい楽観的な印象の絵でした。
作品を観終わって、思ったより内容の充実した展覧会だったので、観に来た甲斐があったと二人とも満足でした。観客も時間が早かったので少なくて観やすかったし。私たちが帰る頃(11半頃です)になって多くの人が詰めかけていました。
駐車場では料金が出口の受付で割引処理してもらえて感謝でした。やはり車で来られるというのは手軽でいいですね。
この展覧会、10月13日まで開かれています。19世紀から20世紀にわたる巨匠たちの描いた子どもの絵をテーマとした展覧会、ぜひご覧ください。
今回はいつもと違い、車椅子で電車に乗って出かけることにしました。電車でのお出かけは彼女が10年前に倒れて以来初めてです。
といっても数年前に、一度リハビリで二人で隣の駅まで電車に往復乗ったことがありますが、これは短時間の杖歩行で、往復しただけでした。車椅子で目的を持って出かけるのは今回が初めてです。
出かけたのは8月24日でした。
もともとデュフィ展については、開催を知って以来ずっとヨメさんが行きたそうにしていました。でも私はハルカス周辺の道路事情がゴチャゴチャしているので余り気が進みませんでした。
でも本当に行きたそうなので、JRで行くことに挑戦することにしました。
でも、これがなかなか簡単ではありません。
自宅から駅まで健康な人なら7・8分で行ける距離ですが、結構急傾斜の坂道なので車椅子での往復は無理です。
なので駅までまず車でヨメさんと車椅子を運び、私が車を家に置きに帰って(駅周辺にはタイムズなどもないので)、ふたたび徒歩で駅に行くということになります。
でも炎天下の歩道でヨメさんが私を待つのも大変だし、私も坂道を走るのは老体にこたえます。(笑)
それで、究極のズボラですが(笑)、私が車を置きに帰ってから原付に乗り換えて駅まで戻り、駐輪場に預けることにしました。料金は1日250円とリーズナブル。
うまく障害者の乗り降りするスペースが駅前広場にあったので、そこで車椅子とヨメさんを降ろしてすぐ自宅のガレージに戻り、Di0で駅横の駐輪場へ。この間5分もかかりませんでした。
そして車椅子を押して駅のエレベーターで改札口まで上がって切符を買い、また下がって地上のホームへ。でもこれ、かなり無駄な動きに感じますね。
というのは、以前エレベーターができるまでは、駅のインターホンで駅員さんを呼んでホームに入れてもらい、同時に乗車証明書を受け取って、それを目的地の駅の改札で見せて精算するというやり方でした。こちらのほうがよほど合理的だと思うのですが、それでは駅員が一時不在となるので、現在のように変えたのでしょうね。
切符は、本人と付添い1名が半額となるので、駅員さんの指示で小人用を2枚購入。
スムーズに事が運んだので、予定より1便早い電車に乗れました。
それと予想していたよりホームと電車との段差が小さかったので、車椅子の前を少し上げるだけで楽に乗り込めました。降りるときはバックで。
ヨメさんは久しぶりの車窓からの景色を喜んで見入っていました。
でも今回は天王寺についてからがややこしいことになっていました。まずホームのエレベーターで跨線橋に上がり、ぐるっと9番ホームに回って中央口を出て、駅構内のエレベーターで地下鉄御堂筋線の改札口方向へ。そしてまたエレベーターで地上に上がり、ハルカス前の歩道を左に進んで、ようやく美術館専用のエレベーターに乗るという経路です。
美術館はハルカス内の施設ですが、一般のハルカスのエレベーターでは行けないので、こんなややこしい手順になります。初めてなので各エレベーターの位置が分からずウロウロしました。
ようやく16階の美術館に着いて、切符売場へ。手帳を見せたら半額にしてくれました。
美術館入り口にはすでに結構な人の列ができていました。10分ほど待って定刻となり中に。
今回の展覧会はフランス人の画家ラウル・デュフィの回顧展です。
といっても、デュフィとはどんな画家か、全く知らなかったです。名前は聞いたことがあるかな程度。(笑)
開館直後なので入口周辺はたくさんの人で混み合っていました。
画家の初期の展示作品はそれほど特色のある画風ではなく、普通の油絵です。いろんな画家の影響でコロコロ変わっています。
でもだんだん個性が出てきて、最後は独自のスタイルを作り上げていきます。
でもこの画家は、生涯を通してわかりやすい画業ですね。とくに後半になると色彩も明るく、軽快なタッチで、富豪に依頼されて描いた肖像画ですらデザイン画みたいな感じです。野獣派に分類されるということですが、やさしい野獣ですね。(笑)
余談ですが、少し以前に見たフランス映画『ル・アーブルの靴みがき』の舞台ル・アーブルの港が、今回展示されていた多くの作品に描かれていて興味深かったです。画家の生誕の地とか。
展示は4章に分かれていました。
第1章は「1900-1910年代 -造形的革新のただなかで」というテーマで、ラウル・デュフィが独自の画風を模索する過程の作品が展示されています。上に書いたように、いろいろな画家の影響が観てとれて興味深い展示でした。
初期の作品「マルティーグ」(1903年制作)です↓
第2章は「木版画とテキスタイル・デザイン」。
挿絵に使われた木版画や布地の柄、クロッキーが展示されていました。多才です。生活の糧を得るためでもあったのでしょうが。
木版画「ダンス」(1914年制作)です↓
第3章は「1920-1930年代-様式の確立から装飾壁画の製作へ」
この時期になって画家は自分の進む道がはっきりしたのでしょうね。以降の作品に共通する明るい色彩の絵になっていきます。
でもデュフィは画家というよりイラストレーターといったほうがシックリしますね。(笑)
展示としては最も充実した見所の多いコーナーでした。
「サン=タドレスの大きな浴女」(1924年制作)
風景画の建物などは軽いタッチで描かれていますが、人物デッサンが正確なことが印象的でした。
「突堤ニースの散歩道」(1926年頃)
「イェールの広場」(1927年制作)
「馬に乗ったケスラー一家」(1932年制作)家族の肖像画ですが、全員体格にあった馬に乗っているところがユニーク(笑)↓
「パリのパノラマ」(1924-1933年制作)まるで横尾忠則です。(笑)
「ゲルマ袋小路のアトリエ」(1935年制作)
「アンフィトリテ(海の女神)」(1936年制作)大きな浴女と共通するモチーフです。
この時期の集大成というべき作品が、パリ電気供給会社の社長の依頼で、パリ万国博覧会電気館の装飾壁画として描かれた「電気の精」です。残念ながら画像はありません。ぜひ会場でご覧ください。電気にちなんだ歴史上の人物が描かれているので面白いです。
それと画面からあふれる楽天的な技術至上主義が、この時代の一面をあらわしていますね。
この頃に多発性関節炎を発症しています。
第4章は「1940-1950年代-評価の確立と画業の集大成」です。
暗示的な黒い貨物船シリーズなどを制作する一方で、華やかな色彩の花も描いています。
「アネモネとチューリップ」(1942年頃)
「アイリスとひなげしの花束」(1953年制作)
前後しますが「マキシム」(1950年制作)です
デュフィは1953年3月23日にフランス、フォルカルキエで心臓発作のため亡くなったそうです。享年75歳。墓地はニース市の郊外にあるシミエ修道院にあるとのことです。
観終わっての感想です。
繰り返しになりますが、デュフィは気楽に楽しめる画家ですね。明るい色彩と軽快な筆遣い。分かりやすく洒落た画面構成。重く余韻を引きずるようなテーマの作品はほとんどなく、観ていて気が晴れ晴れする作品ばかりでした。こういうのもアリだなと思いました。
会場のハルカス美術館ですが、巨大建築物のオマケ程度に思っていましたが、まあまあスペースはギリギリ確保されていましたね。
でもエレベーターが障がい者にとってやや分かりにくいです。
会場の混み具合は大したことなくて、特に後半の展示になると空いていて、ヨメさんは車椅子から降りて杖歩行で観まわれたほど。
中高年の観客が疲れて休憩し始めるので、ゆったりしてきます。(笑)
それとどの展覧会でもそうですが、11時頃が一番観客が減ってくる時間帯ですね。私たちは車椅子なので交通の便もあって早行き・早帰りが必要ですが、柔軟に対応できる健康な方は、生真面目に開館時間前に行くより、一時間ほどずらすのが吉です。
この展覧会、大阪では9月24日まで開かれています。あべのハルカスの建設については壮挙というより暴挙だと思っていますが(笑)、今後デュフィの作品を網羅的に見られる機会はそうないと思いますので、ぜひご覧になるようお勧めします。
私は全く知りませんでした。前回万葉文化館を訪れた時、この作家の画展の開催予告を見ていましたが、すぐ忘れていました。
最近私の頭はほぼ揮発性メモリ化しているので、よほどのことが無い限りみんな瞬時に消去されていきます。(笑)
そして今回、その画展を観に行くことになりましたが、前回の展示がかなりトホホな館蔵展だったので、聞いたことのない作家だし、村おこしのため奈良県吉野郡川上村が設けた芸術村で活動していたとのことで、まあローカルな絵画活動をしていた人の展覧会だろうなと軽く考えて出かけました。
この日は連休の最後の7月21日でした。いつもより早く着いたのに、駐車場には結構な車の数。展覧会の初日だったので、関係者の車かなとか言いながら駐車して、開館時間まで庭園の花を見に行くことにしました。
花の少ない時期ですが、それでもハギやナデシコやユリ、ヤブカンゾウ、キキョウなどが咲いていて、シモツケも咲き始めていました。
時間になったので玄関先に戻ると、大勢の親子連れ。列を作って玄関前の受付に並んでいました。ガラスコップにサンドブラストで模様を描くイベントが行われるとのことで、その受付待ちの列でした。でもそれらの参加者が絵画展のほうに流れてくることはなかったですね。今回も初日のセレモニーにもかかわらず、展覧会の観客は少なかったです。
で、車椅子を押して奥の展覧会場に行き、入口の大きなポスターを見てびっくり。
予想とは全く違って、これまで観たことのない作風の本格的な洋画です。ヨメさんもびっくり。まだまだ無知な私たちです。
そして会場内に入って、まず展示作品をざっと見渡しただけで、その迫力に圧倒されました。大和の農山村を描いたローカルな画家だろう程度(殴)に思っていたのが恥ずかしかったですね。
会場では、すでに親族(ご子息)による関係者を対象としたツアーガイドみたいなものが行われていました。会場のボランティアのスタッフに勧められて、私たちも途中参加。まもなくそれが終わったので、再び入口に戻って最初から観なおしました。
描かれている人物の背後の世界は、よく観ると英語だったり日本語だったりで国籍不明ですが、どれも郷愁に満ちた懐かしい風景です。
7UPならぬ8UPの看板があったり、昭和の香りプンプンなホーロー看板があったり。でも基本はヨーロッパとかアメリカンな光景。
作家が訪れたヨーロッパやアメリカの下町の風景の雰囲気が色濃く現れていました。
全体に、作品に登場する人物はみんな寡黙で、その表情には深い哀愁や諦観が漂っています。老若男女みんなひょろりと痩せていて、疲れ果てた感じです。裸婦も描かれていますが、肋骨が浮かび上がっていて痛々しさが目につきます。
とくに前半の作品はどこまでも暗く、胸を打ちます。
↓これは最初期の作品『少年立像』です
初期の作品では『餐』がよかったです。
作品は人物画がほとんどで、初期には母親らしい女性もよく描かれていますが、そのどれも赤い服を着ているのは作者の原風景にある母親像なのでしょうか。
描かれた人物の顔つきは、最初期以外はどの作品にも共通する細面の憂い顔です。その視線は決して正面を見ず、左右にそらされています。顔つきはアフリカなどの木彫りの工芸品の面を連想しました。
どの作品も哀愁や孤独さ、寂しさ、悲哀に満ちていますが、一方では今回のテーマにうたわれているように、作者の温かなまなざしが感じ取れて救いもありました。悲しみや辛さに耐えていても、決して絶望はしていないのがわかります。
そんな作品も、画業の後半になると画風に明るさが出てきます。絵も大きくなっていました。会場を観てまわりながら、ふと同様に辛い境涯にあった藤沢周平の作品の変化に通じるものを感じました。
作者は自らの作品上の人物について、かつて雑誌に寄稿して次のように書いています。
「描いて半年も経つと、自分の絵でも割と冷静に見ることができる。そこで自問自答が始まる。
画面上の人物は一体どういう人たちなのか、などと考える。(略)
別にわざわざ底辺の人たちを描いているわけでもないけれども、恨むこともなく、悲しむでもなく、力むこともなく、ひたむきに生きる姿みたいなものに惹かれるのかなあ、と思ったりする」
これは46才の時の文章だそうです。
作者自身、小学生時代に両親を亡くし、父方の親戚の世話になりながら旧制中学校を卒業し、神戸に出て地方貯金局に働きながら定時制高校を卒業したものの、間もなく結核を病み、5年間の療養所生活を余儀なくされるなど、幼くして「不条理・混沌の中に身を置く」生活を強いられ続けてきました。描かれた人たちは、作者のそんな生活の中での思いと、同時代を生きた市井の人々への共感が対象化されていると思います。
小西保文の絵にはよく車が描かれています。シトロエンDSみたいな車とか、フェアレディとかスバル360のような車がよく登場しています。ただ、作家自身は免許を持たなかったとのことです。
また画面の隅には、必ず猫や犬、コーラの缶などの小物が描きこまれていて作者のユーモラスな一面がうかがえます。
小西保文は川上村から誘われて、最後の10年間ちかくは前記の故郷に創作の拠点を移して活動を続けました。前記の会場での親族の解説では、アトリエが格段に広くなったので、絵も大きくなったということでした。絵のサイズだけでなく、色調もハッキリわかるほど明るくなっています。
そして絶筆となった『窓辺の家族』がすばらしい作品。彼のモチーフのすべてが描きこまれていて、本当に集大成と言える作品でした。
画面下の方で膝に寄りかかっている小さい人物が主人公とのこと。
2008年7月に肝臓がんの宣告を受けながらも、画集の編纂を続ける一方で絶筆となった作品を完成させ、9月22日に二紀展にそれを搬入、生前に「お別れ会」も済ませて10日後に亡くなったそうです。壮絶な創作への執念だったと思います。77歳の生涯でした。
ミュージアムショップで購入した画集です。作家のすべてがよくわかるいい画集です。
表紙です↓
裏表紙です↓
今回の万葉文化館の絵画展は、久々に(笑)見応えあるいい企画展でした。初日なのに観客の少ないのが気になりましたが、一つのテーマを追求し続けた異色の画家の素晴らしい画業がよくわかる展示になっていました。
みなさんも明日香方面に行かれる機会があれば、ぜひご覧ください。おすすめです。
いつか記念館にも行ってみたいです。
さて、星組公演観劇が目前に迫ってきました。良い舞台だといいのですが。
途中の道は車も少なく順調に西宮へ。着いたのは開館10分前でした。開館まで周囲の庭園で写真を撮ったりして時間調整してから館内に入りました。通路を通って展示会場に向かう途中で衝撃の発見!いつも利用していたカフェが無くなって、休憩室になっていました。
上記のように長い休館期間があったので心配していたのですが、やはりキツかったのでしょうね。コーヒーとかサンドイッチ、カレーとかおいしかったので残念でした。この日もそこで昼食の予定だったので当てが外れてプチパニック(笑)。
というわけで展覧会の感想です。
展示は大きく4つに分かれていて、テーマとしては、館のコレクションの形成史をたどりながら、日本における洋画の展開の歴史を紹介するというものです。
第1章は「大谷コレクションの時代」。西宮市大谷記念美術館の基となった実業家・大谷竹次郎氏のコレクションには多くの日本画がありますが、洋画のコレクションもなかなかの傑作ぞろいです。それら大谷氏の個人コレクションの洋画を紹介しているのが第1章です。
代表的な展示作品として、ピエール・ラプラード《カルーゼル広場とパヴィヨン・ド・マルサン》や児島善三郎《南仏カーニュの小橋》・《レースを着る女》がありますが、私は三番目の作品が気に入りました。
児島善三郎《ダリア》↓も良かったです。
(以下の画像はすべて絵葉書から)
ちょっと黒田清輝のような画風ですが、石川寅治《窓のそば》も明治期の洋画の典型ですね。↓
第2章は「エコール・ド・パリと日本の近代」。ここでは1972年に開館した西宮市大谷記念美術館が、大谷コレクションを軸としながら新たに作品を収集してきた20世紀前半のフランスのエコール・ド・パリの作品と、同時期の日本近代洋画が展示されています。
私たちは今回の展覧会を観るまでは館蔵品の大部分は寄贈された大谷コレクションだろうと思っていたのですが、開館後公費で購入したものもかなりあることがわかってちょっと驚きました。ここでは美術館が独自に購入した作品も多く展示されています。
ここでマリー・ローランサン《青衣の美少女》とか小出楢重《裸婦》(ルノワールそっくり)、佐伯祐三《帽子のある静物》などの作品が展示されていました。
前にも観た絵ですが、今回も小磯良平《ギターを弾く男》がパッと眼に入ってきました。↓
ビュッフェの《ヴェネツィアのカドーロ》もこのコーナーだったかな↓
第3章は「阪神間の洋画家たち」。この美術館は、大谷氏からコレクションと共に寄贈を受けた宅地に立地しています。この場所は関西では「阪神間」と呼ばれていますが、戦前から多くの画家がアトリエを構え、活動してきたところでもあります。当初の大谷コレクションにも含まれるこうした地元作家の作品が、このコーナーで展示されています。このコーナーを観て、戦前は関西でも活発な美術活動が取り組まれていたことを知って驚きでした。まだ大阪を中心として関西が日本経済の中で大きな位置を占めていた時代ですね。
展示されていた伊東慶之助とか渡辺一郎、辻愛造など、これまで知らなかった画家の絵が展示されていました。どれもいい絵でした。
最後の第4章は「洋画を超えて」。
戦後の阪神間で見られた、絵画における実験的な試みとして創造された各グループや個人が生み出した様々な抽象絵画が展示されています。さまざまな新しい技法で描かれた作品が掲げられていましたが、やはり現代アートとなると私たちにはイマイチピンとこないので、このコーナーの滞在時間は短かったですね。どうも現代抽象絵画はその価値がよくわかりませんです。
そんな中で、渡辺一郎《ロードローラー》↓が不思議な魅力で印象に残りました。
この展覧会は展示されていたのが館所蔵品ばかりで、展示数も多くないのであまり話題になっていないのか来館者は極めて少なく、少々寂しい感じでした。その分ゆっくり鑑賞できたのはよかったのですが(あるフロアではスタッフ以外は私たちだけしかいなかったり)、法人化したこともあり経営が心配になったり。(笑)
でも展示品は小品が多かったもののいい絵ばかりなので、ゆっくり絵画鑑賞したい人にはお勧めです。
観終わってから、障害者+付添い1名は入館者無料にしてくれているので、せめてものお返しにと入口受付で絵葉書を6枚購入しました。でもこれも税込@50円と格安、あまり売り上げに貢献できませんでしたね。
いつもならこの段階で館内のカフェで軽く昼食となるのですが、先述の通りカフェは撤退。殺風景な休憩室になってしまいました。
前回訪問時に食べたコレ↓とか
このサンドイッチ↓も楽しみにしていたのですが‥。(泣)
加えて店内から庭園が眺められて、スタッフの年配の女性お二人もいい雰囲気だったので本当に残念でした。
どの美術館内のカフェでも、程度の差はあれ経営は本当に難しそうです。これは劇場などでもいえることですが、カフェの経営努力も、基本的に集客については美術館側の企画如何にかかっているので限界があります。
とくに今回のケースは、美術館が設備改修工事で長期にわたって閉館していたのが致命的だったと思います。
野坂昭如が以前「主人持ちになってはいけない」と言っているのを読んだことがありますが、いろんな意味で考えさせられますね。
帰宅前に美術館の庭園を見ることにしました。ちょうど今、庭園はハナズオウがあちこちで咲いていました。
珍しい白のハナズオウも植えられています。
それにボケもまだ咲いていてびっくり。
ミツバツツジの仲間も↓。
珍しいといえば金色に輝く葉のオウゴンガシワもひときわ目立つ存在でした。
展覧会はこじんまりとしていて派手さはありませんが、じっくりと絵画鑑賞したい方には好適な名品ぞろいです。
機会があればぜひご覧ください。
主 催:西宮市大谷記念美術館
後 援:西宮市、西宮市教育委員会
会 期:2014年4月5日(土)~5月25日(日) 午前10時~午後5時
休館日:水曜日
入館料:一般500円/高大生300円/小中生200円
*西宮市在住65歳以上は無料(要証明書呈示)
*ココロンカード・のびのびパスポートを呈示の小中生は無料
*身体障害者・療育・精神保健福祉手帳などの呈示があれば無料
*ちらし割引券持参の場合は一般500円を400円に割引(複製不可)
*20 名以上の団体は各料金から100 円割引
そこかしこに春の予兆があふれていて、たとえ一時的に寒い風が吹くことがあっても、もう間違いなく春が来ている!と確信できるのがうれしいですね。
そんなわくわくした春の風に誘われて、今年2回目の万葉文化館に出かけることにしました。
公式HPで開催案内を見ていた三瀬夏之介の個展「風土の記 -かぜつちのき-」を観るためです。
画家・三瀬夏之介という名前は初めて聞きます。まるで藤沢周平の時代小説に出てくる剣豪みたいな名前ですが(笑)、資料では1973年奈良生まれとありますからかなり若い画家ですね。
京都市立芸大大学院を終了後、1999年から奈良の高校で教鞭をとりながら個展やグループ展の開催を重ね、2012年には「東山魁夷記念日経日本画大賞」の選考委員特別賞を受賞するなど、近年注目を集めている気鋭の画家と紹介されています。
で、上記HPの「本展の見どころ」では↓
和紙に墨という日本古来の素材を使用し、意欲的に制作をつづける三瀬夏之介。
そんな三瀬氏の個展である本展のみどころは、本展開催のために制作された、旗のような形状をした新作「日本の絵~小盆地宇宙~」と、全長約17mにもなる巨大なスケールで三瀬の故郷である「奈良」が表現される、本展注目の新作「風土の記」が、今回初公開の作品となります。
また、今までの三瀬の代表作の中からは、2009年VOCA賞受賞作品である「J」(第一生命保険株式会社所蔵)や、巨大な和紙に墨といったデリケートな素材や、表面に施されたコラージュの数々を見ることのできる「君主論- Il Principe-」、「ぼくの神さま」(大原美術館所蔵)の他にも、当館の展示室を縦横いっぱいに埋め尽くす大型の三瀬作品も、迫力満点のみどころです!
と紹介されています。ただ、私は「和紙に墨」とはまた若いのに渋いというか地味というか、まあ現代風水墨画みたいだろうなと勝手に思って、正直あまりピンとこない印象でしたね。
でもなかなか力が入った展覧会のようなので、二人で出かけることにしました。
ただこの日はスペシャルミッションが課せられていて(笑)、午前10時までに万葉文化館前に着くことが必須条件でした。
なので早めに出かけましたが、なぜかこの日はどの高速道路も一般道もガラガラの特異日。9時40分には文化館前の石ベンチでノートパソコンを開いてスタンバっていました。
いい天気で、何人か先客がすでに開館を待っていました。
何をするのかというと、この日の10時開始の宝塚歌劇オンラインチケットでチケットを確保するのです!(殴)
公演は宙組の『ベルサイユのばら―オスカル編―』。もう見飽きたも通り越した、シーラカンス芝居そのものですが、やはり宙組とあってはパスもできないだろうと、万葉文化館前で、春風に吹かれながらキーボード連打と相成ったわけです。
事前に調べたauの受信エリアマップで明日香村はOKだったので、Wifi Walkerを持参してチケットを確保しようということになりました。
でも知らない人が見たら、もう開館時間が過ぎているのに、なんで入らずにパソコン画面を覗いているのだろうと思ったでしょうね。でも私たちは必死でした。(笑)
で結果ですが、10時受付開始から10分間ぐらいはアクセス殺到でサイトに入れず焦りまくりましたが、第二希望日でなんとか席をゲットできました。
気をよくして、パソコンを片付けて展覧会場へ(笑)。
この日は館内でいろいろイベントも用意されていて、結構賑わっていましたが、まずは目当ての個展会場へ。
入り口で展示作品をチラッと見ただけで、すごいと思いました。とにかく作品がドでかい!それで度肝を抜かれ、次に驚いたのがディテールの緻密なこと。広大な画面の隅々まで覆い尽くされている細密描写に圧倒されます。
作品から放射される画力はちょっと比較するものが思い浮かばないほどの強さがあります。その執念というか、画家の創作力のタフなことは全体としてちょっと淡白な傾向のある日本の画家にはない異質さを感じるほどです。肉食系の画家です(笑)。
↓パンフレット裏面
↓万葉文化館HPから。制作風景です。
入り口にある「J」という作品でも250×400cmもあって大きいなと思いますが、その次の「君主論-ⅡPrincipe-」では245×737cm、6番目の作品「だから僕はこの一瞬を永遠のものにしてみせる」は272×1,456cm、最後の展示でこの展覧会の主題となっている「風土の記」では272×1,710cmもあって、圧倒的なスケールです。
↓これも万葉文化館HPから。作品「J」です。
普通の展覧会では、大きな作品は3mぐらい下がって鑑賞することにしていますが、今回の作品ではその程度では全体の構図はわかりませんね。それでもっと下がって作品を眺めましたが、実は今回の作品はそんな鑑賞方法だけでは価値がわからないと思いました。
というのは、至近距離でないと見えない、びっしりと画面に描きこまれた細密描写も重要な要素になっているからです。描かれているのは旅客機であったり仏頭であったり、風景や動物、古今東西・新旧織り交ぜた建築物など。
それにさまざまなコラージュも加わって、まさに現代版「風土記」です。混沌としながら、それ自体が一つのダイナミックなうねりとして私たちの前に提示されていて、ただただ茫然として見上げるばかりです。画面から離れて見えてくるものと、接近しないと見えてこないもの。画面全体から受ける印象と、細密描写されたモチーフの対比が面白いです。思わず神は細部に宿るという言葉が浮かびました。
こういうパワフルな作品群に出会うのは久しぶりでした。
展示会場の片隅には、作家のアトリエを模した展示があって、そこだけは撮影フリーでした。
そこに展示されたものも面白いものばかり。そこにも絵が何点か展示されていて、それもなかなかのものばかりでした。このくらいだと家に飾れそうなので欲しいと思いました。(笑)
展示会場は、いままでの展示と違って仕切りを使わず、すべて壁に展示されていますが、2連の「日本の絵~小盆地宇宙~」だけは天井から吊り下げられています。この絵が一部透かしになっていて、それにあてられた照明で作られた木洩れ日のような影が面白かったです。
作品は16点ですが、どれも超大作ばかりなので見ごたえ十分。そのすべてに表現された巨大曼荼羅のような世界に浸るには、到底1日では足りないほど。本当にインパクトのある展覧会でした。ただ、この日も観客は少なく残念でした。
もっと観ていたかったのですが、ヨメさんの体調不良もあって正午前に会場を出ました。それから最初に見ていた庭園めぐりのクイズなどを楽しんで、ちょっとうれしい景品などをもらってから帰途に。出足の遅かったお客さんも増えてきて、駐車場も埋まって来ていました。よかったです。
すっかり気温も上がって、周辺の明日香の里の満開の梅などを楽しみながら帰宅しました。
久しぶりに以前のような万葉文化館らしい新鮮で意欲的な企画を満喫できて良かったです。
まだ観ておられない方には絶対おすすめの展覧会です。
平成26年3月9日(日)~平成26年5月11日(日)まで開かれています。ぜひお出かけください。
ターナー展開催のニュースなどを聞いても当初余り気乗りしなかったのですが、それは画家だけでなく、神戸周辺は道路の渋滞とか、前回の「マウリッツハイス美術館展」みたいな入館待ちの長蛇の列だったらとか、周辺の駐車場探しも難儀しそうとか、行きたくない理由も多々ありました。
でもヨメさんは観たそうにしていたし、当日朝、途中の高速道路や博物館周辺道路の状況をチェックしたらそれほど大した渋滞もなかったので、思い切って行くことにしました。
ところが道路は渋滞ゼロ、あっけないほどよく流れていて、50分程度で神戸に到着。10時の開館時間を少し過ぎたぐらいに博物館につきました。駐車場も最短距離のタイムズに停められたうえ、博物館前にも誰も並んでいません。去年とはえらい違いでした。ちょうど今頃が中だるみなのでしょうか。
駐車場から車椅子を押して博物館前に行き、看板の前で写真を交代で撮っていたら、近くで荷物を車から下ろしていた若い女性がニコニコしながら近づいてこられて、「一緒にお撮りしましょうか」とありがたいお申し出。自然な親切が身に染みました。お言葉に甘えて撮ってもらってから館内へ。
この博物館はまだ2度目ですが、館内の施設のレイアウトがわかりやすく、サインも各所に表示されているので迷うことはありません。その上親切なスタッフが大勢配置されているので快適に移動できます。エレベーターの配置もわかりやすいです。
この辺は、兵庫県立美術館の迷路のような不便さとは対極にあります。
チケット売り場に行って障害者手帳を提示したら、本人と付添1名は無料とのことでちょっとびっくり。
公共施設の場合ではこれは普通のことですが、上記の兵庫県立美術館では割引はあっても無料ではなかったので、神戸の施設はどこも同じだろうと思い込んでいたのです。温かい印象がさらに強くなってホッコリ気分で会場へ。
入口で音声ガイド@500円を借りて、鑑賞開始です。
↓博物館内で配布されていた子供用の鑑賞ガイドですが、よくできています。
展示作品はロンドンのテート美術館所蔵のジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775-1851年)の油彩画・水彩画・スケッチなど計113点。
展示会場は「初期」「「崇高」の追及」「戦時下の牧歌的風景」「イタリア」「英国における新たな平和」「ヨーロッパ大陸への旅行」「ヴェネツィア」「色彩と雰囲気を巡る実験」「後期の海景画」「晩年の作品」の9つのセクションに分けられていました。
今回は観客はそれほど多くなく、車椅子でもよく観ることが出来ました。
以下の絵は私たちの印象深かった作品です。
当日購入した絵葉書からスキャンしました。
「セント・ジョン村からハモウズの入江を望む、コーンウォール」(油彩)
(セント・ジョン村はコーンウォールのプリマスの近くに位置しています。)
「河畔の家、木立と羊の群れ」(油彩)↓
「田舎の鍛冶屋」(油彩)↓風景画の多いターナーですが、こんな民衆の生活を描いた絵も描いていたのですね
「スピツトヘッド:ポーツマス港に入る拿捕された二隻のデンマーク船」↓
これは上の「子供のための鑑賞ガイド」からの画像なので小さいです^^;
「スカボロー」(水彩)
(このスカボローは行ってないですが、近くのウィットビーはたまたまバンクホリデーの時に行ってえらい目にあったことがあります。(^^;)
こうやってみると「戦時下の牧歌的風景」に気に入った絵が多かったですね。
「イタリア」コーナーでは、「ヴァティカンから望むローマ」(油彩)に人気が集中していました。ラファエロが描かれていたりします↓
「ヴェネツィア」コーナーでは「ヴェネツィア、嘆きの橋」がよかったです。ただ、今回観た限りでは、ターナーは余り人物のデッサンが上手くない感じでした。
観て回って感じたことですが、やはりターナーの絵は予期した通りでした。
一目見た印象は、デジカメ画像で例えればコントラスト・彩度・ガンマ値が低くてくすんで眠い感じが強い(笑)のと、絵そのものもあまり魅力的な題材でないのが多いと思いました。
でもすべてがそうではなくて、例えば「レグルス」は画面からあふれ出てくる光が眼を引いてインパクトがありますね。
「レグルス」↓
ただ、今回の感想としては、油彩の大作よりも画集のために描かれた水彩の原画群などのほうが魅力的な作品が多かったです。でも小品のせいか絵葉書がなかったのが本当に残念。
油彩では風景画より帆船や海を描いたもののほうが好みでした。
でもその帆船、上記の拿捕されたデンマーク船の絵は船の形が正確ですが、「トラファルガー海戦のための第二スケッチ」の戦艦は当時も批判された通り子供の絵みたいな出来。この落差には驚きでした。
風景を描いてきたターナーも、晩年の絵になると何が描かれているかわからないほど形が朦朧としてきています。
これは晩年に属する「平和-水葬」という絵です。帆ははっきり描かれていますが、他はかなり輪郭がぼやけてきて代わりに光の表現が強くなってきています。
そして最晩年のこれ↓などは、一応「湖に沈む夕陽」とされていますが、実際のところターナー本人が何を描いたのかははさだかではないとか。
まるでルノワールみたいで、ほとんど別人の絵になっていますね。
こういう変化をたどってみるのもまた面白いかもしれません。
もうひとつ興味深かったのが、ターナーの人間臭いところ。パトロンの意向に沿うべく苦心して絵を描いていたのがわかって親しみを感じました。早い話、彼の絵画制作動機にはかなり打算的で俗っぽいところがあります。
今回の展覧会、油彩画が少ないのが物足りない感じでしたが、これでもかなり大規模な回顧展だそうです。
まあ昔観たレンブラントとかドラクロア、モディリアーニクラスの展覧会になると観終えてかなり疲れたりしますが、今回は幸か不幸かそれほど疲れなくて(殴)よかったです。
まあ会場が空いていて、観やすかったことも多分に影響していますが。
会場の出口のショップで絵葉書@150円を6枚買ってからトイレへ。そして前回同様また昼食のために館内のカフェ「エトワール」に行きました。
前回の超混雑の展覧会でも空いていた所なので、安心して店内へ。
期待した通りの落ち着いたレトロな雰囲気の店内で、ゆったりくつろげました。
私はミックスサンドとウィンナコーヒー(久しぶりでした)を注文しましたが、どちらもおいしかったです。
駐車場に戻って道路に出るときも相変わらず周辺道路は空いていました。
阪神高速も全く渋滞はなく、往路と同じ所要時間で帰宅できました。いつもこうあってほしいのですが。
出発前のプリウスの燃費表示は24.9km/lでしたが、帰ってガレージに入れた時点では26.2km/l。冬では望外の好燃費でちょっと満足。
しかたなく(殴)、今年は万葉文化館の「絵画で綴る大和古道」展を観に行くことにしました。
ただ、これまで何度か万葉文化館について書いてきたとおり、この施設もご多聞に漏れず、予算削減で以前のような気鋭の画家による企画展が大幅に減って、代わりに館蔵品による展覧会が開催される状況になっています。今回の展覧会もその流れで、館蔵品展なので、私たちもあまり期待せずに出かけました。第一、展覧会のテーマが道。道がテーマの展覧会となるとどうなるか、あまりいいイメージがわいてきませんでした。
自宅から飛鳥までの道は正月明けでいつもより車も少なく、50分程度で到着。駐車場も通常よりさらに車が少なく閑散としていました。
人気がないのは館蔵品だけの展示なのでみなさんも二の足を踏んでいるのだろうと思いながら入り口に向かいました。
館前の庭園も冬枯れで、わずかにウメモドキだけが色を添えていました。
冷え込みも強かったので早々に館内へ。会場入り口でいつものようにアリバイ写真を撮ってから(笑)観覧開始です。
ところが、展覧会場に入ってチラ見しただけでよさげな作品が目に入り、期待が一挙に高まりました。うれしい誤算みたいです。
展示会場の床には大和古道を描いた古地図「大和國細見圖」の拡大コピーが貼られているなど、いろいろ工夫されていました。
今回の展覧会では上記の「絵画で綴る大和古道」をテーマに、これまで館が蒐集した「万葉日本画」と、別に寄贈を受けた絵画や展示資料も公開されていました。また、会期中の前期と後期で展示を入れ替え、合わせて計100点余りの館蔵品を陳列展示する予定とのことです。
入り口に最も近いところに展示されていたのは平山郁夫の「額田王」。この絵の制作過程は館内のミニシアターで見ることができます。
ただ、この絵は余り好みではありません。(笑)
以下の画像は館内のショップで買った絵葉書をスキャンしたもので色調も正確ではありません。掲載も実際の展示順ではありません。
良かったのはまず「夢想」です。作者は市原義之。以前にも観ていますが、いい絵は何度見ても飽きませんね。
「明日香川夕照」(作・奥田元宋)も何度か観たことがありますが、印象に残る絵です。
それ以外では、「早蕨」(作・平岩洋彦)とか
似たテーマですが、「山川の瀬音」(作・岡 信孝)もわかりやすい絵(笑)でした。
この絵も好みです。「秋風」(作・林 潤一)です。
でも、今回の展覧会で一番良かったのは、「曽爾冬静」(作・久保嶺爾)です。遠目でも真っ先に目に入ってきました。で、帰宅する際に館内ショップで絵葉書を探したのですが、残念なことに絵葉書化されていませんでした。
描かれている曽爾(そに)高原は、私のホームグラウンドみたいなもので、学生時代は四季折々に十数回通っていました。
ただ近年、観光開発の影響か、現地は私が行っていたころとはかなり違う雰囲気になっていて足が遠のいています。
でも今回のこの絵では、私の記憶している曽爾高原がそのまま描かれていて、懐かしくて足を止めて見入ってしまいました。
ただ絵に描かれているような馬の放牧はなかったですが、これはあくまで画家の心象風景ですからね。でもよく似合っていました。
この画家の絵はもう一点、「神の池」が展示されていて、深みのある色彩のいい絵です。
もう一つ、今回の展覧会での収穫は「多武峯遠望」(作・上田勝也)でした。こんな作品があったのかとびっくりのいい絵でした。ですが、これも絵葉書は作られていないので、ぜひ並んで展示されている「曽爾冬静」とともに直接会場でご覧ください。万葉文化館さん、ぜひ絵葉書作成をお願いします。m(__)m
後でわかったのですが、この作者の回顧展が2006年にここで開催されていますね。このころから明日香に通い始めたはずなので、私たちも観ていると思うのですが記憶がありません。本当に物忘れがひどいです。
最初に書きましたが、今回の展覧会、上記以外も館蔵品選りすぐりのいい絵ばかりで、観終わって結構時間がたっていたのに気づくほど堪能できました。
でも何しろ観客が少ない!車椅子を押しての鑑賞には見やすくてありがたいのですが、少なすぎるのもいささかさびしいですね。
現在(2月3日)前期展示分から20点入れ替えられていますので、わたしたちもまた観に行くつもりです。
3月2日まで開催されていますので、みなさんも飛鳥に来られた際はぜひお立ち寄りください。
周辺にも名所旧跡が点在しているし、ゆったりいい絵が鑑賞できるのでお勧めです。
近畿地方に大雨の警報や注意報が出されていた8月25日ですが、我が家の周辺はそれほどでもなく、なんとかヨメさんも車に乗れそうだったので出かけることにしました。
行先は奈良県立万葉文化館。ヨメさんがホームページを見て、「展示が変わっているよ」と言うので確認したら、なるほど<ふるさと知事ネットワーク美術館交流展>現代日本画の革新者たち-福井県立美術館コレクションによる-という長ったらしい展覧会名が出ていました。
「ふるさと知事ネットワーク」は正式には「自立と分散で日本を変えるふるさと知事ネットワーク」というそうで、青森・山形・石川・福井・山梨・長野・三重・奈良・鳥取・島根・高知・熊本・宮崎の13県の知事で構成する組織とのこと。
その活動の一環として、県立美術館同士の相互交流事業が始まり、今回の展覧会もそれによって実現したそうです。それぞれの県が所蔵する美術品を広く県外にも公開していくのはいいことだと思いますね。
今回展示されていたのは、福井県立美術館の所蔵する池田遥邨・横山操・加山又造・広田多津・三上誠・小松均・西山英雄・川端龍子・竹内浩一・中島千波・入江酉一郎・米谷清和・牧進などの作品50点。それに万葉文化館が所蔵する同展展示作家の作品7点も協賛展示。
出発したのは9時過ぎ。雨が心配でしたがそれほどでもなく、途中給油したりしながら明日香へ。
万葉文化館に近づくころに雨脚が激しくなってきましたが、駐車場でしばらく待機したら小雨になったので、急いで入館しました。
駐車場はガラガラ、私たちが本日最初の入館者になりました。
ホームページを見ただけでもヨサゲな感じでしたが、実際期待以上の作品ばかり。
入り口の池田遥邨の「濠」や西山英雄の「あける桜島」を見ただけでワクワク感が高まりました。
続く広田多津の「裸婦」など、いずれも伝統的な日本画とはかけはなれた、西洋絵画との近似性のある題材とか描写方法の作品が続きます。
広田多津の「裸婦」↓
加山又造の「人と駱駝」です。↓
展示作品ではまず三上誠の一連の作品が目を引きました。
初期の「作品」(←題名です)と「雪の日の丘」の2作品は、中東あたりを思わせる人物を描いた具象的な作品(でも「作品」が1944年、「雪の日の丘」も1947年と、戦中・戦後すぐに描かれているのにびっくり)ですが、1950年には「F市曼荼羅」で大転換。このF市は画家が幼少期を過ごした福井市でしょうか。敗戦を契機に画風が変わったのか、ダリを思わせるシュールな作品です。
「F市曼荼羅」↓
その後の作品は、抽象化された幾何学的な絵になっていきます。「胸の花」から「触手の大気」、「輪廻の記号A」から「灸点万華鏡」シリーズまで11点の作品は西洋絵画の手法で抽象的な新しい世界を描こうとしていて作品ごとの変化が面白いですね。
横山操の「川」と「網」は会場を圧する大作。黒々と骨太な描き方ですごい迫力でした。でも「金門橋」は一転して明るく明快な構図。この違いにも興味がわきました。
連作では高畑郁子の作品が印象に残りました。「精(夢む)」は装飾画的な美しい作品ですが、そこから「クシャトリアの女」で古代インドのバラモン教社会となり、さらに「ラダック」から仏教を主題とした絵になっていきます。
そして「聖祉青願」で仏画の曼荼羅図を思わせる主題になって、展示の最後の「合掌界」では日本の仏教絵画のような絵になっていました。
この画家は緻密で正確な描写がすごいです。この画家の夫・星野真吾の作品「MIKAMI」では、同じグループのメンバーであった三上誠のポートレートが使われていたのも面白かったです。
今回の展覧会では、会場の一番奥に展示されていた米谷清和の12点の作品が一番気に入りました。その中でも70年代に入ってからの「エレベーター」以降がよかったですね。「雨」を観て、昨年植田正治写真美術館で観た写真を思い出しました。
最初の「エレベーター」では群衆の顔が描かれていますが、「刻々」以降は背後とか遠景になって顔が描かれなくなります。いずれも極度に単純化された画面構成でインパクトがあり、洒落たタッチが現代的で気に入りました。「秋、日のない日」は現代を描きながらもレトロ感があり面白いです。
観終えて感じたことは、日本画と西洋画の境界を云々することの無意味さでした。
今回出展された画家でも、当初は洋画家としてスタートしながら、その後日本画に転向した経歴のある人が何人もいますね。
私の知人で趣味で絵を描いている人は、よく「日本画家は洋画にあこがれ、洋画家は日本画にあこがれる」といっています。実際に浮世絵が19世紀の西洋画に与えた影響はいうまでもありませんね。
万葉文化館でも、これまで何度も気鋭の画家による日本画の枠を出た斬新な作品が多く展示されてきました。つまるところ、両者の違いを突きつめれば、絵の具の違いだけになるかもしれませんね。
そんなことをあれこれ考えながら、これまで観たことがなかった作品の数々を楽しみました。
ところで、観終えてミュージアムショップに行き、気に入った作品の絵葉書を買おうとしたら、なんと1枚もなし。万葉文化館の所蔵作品の分はありましたが、福井からの作品はゼロ。ガッカリでしたね。
昨今ほとんど揮発性メモリ化した私の脳のため(笑)、買う気満々で行ったのですが空振り。残念でした。福井の名前の入った絵葉書でもいいのでなんとかならないものかと思うのですが。
がっかりしながら昼食のために前回同様、館内のカフェへ。
今回も同じ1,000円のメニューでしたが、おいしくて食材もよく、見た目よりボリュームもあって大満足でした。食事中、一時雨が激しくなりましたが、館を出るころには上がってきてラッキーでした。
デザートもGood!
この展覧会、上記の作品以外にも見ごたえのある傑作が多く、おすすめです。ぜひ明日香に来られたらお立ち寄りください。きっと満足されると思います。
期間は8/17(土)~10/6(日)までです。
ヨメさんが行きたがっていた兵庫県立美術館のルノワール展ですが、基本的に人ごみが嫌いな私なので、なかなか行く気になりませんでした。
でも最近美術館のサイトを見たら、なかなか良さげな展覧会のようで、混雑していても出かける価値がありそうだったし、なにより会期の中盤の今ならそれほど混んでいないだろうと考えて、7月27日(土)に出かけました。
いつもならスイスイ車を走らせてというところですが、やはり関西有数のお出かけスポット神戸なので、今回は事前チェックでも阪神高速・神戸線が渋滞中とのこと。
でも根が楽観主義の私ゆえなんとかなるだろうと、9時前に出発しました。環状線までは、駒川で軽く渋滞したものの大したことはなかったのですが、神戸線に入ると次第に車が増えてきました。それでも10時15分には美術館に到着。駐車場に停めて、車椅子を押してチケット売り場に行きました。
いつも感じることですが、この美術館、「苛酷な建築家・安藤忠雄」の作品らしく障害者や高齢者には全くやさしくないですね。
彼の設計で定番の大きな階段は、美術館に来る年配の観客には辛いので、デザイン優先で極小に切り詰めらたエレベーターはいつも満員。大体、いつ行っても階段を上って3階まで歩いている人をあまり見かけませんね。
さて覚悟していた会場内の混雑ですが、すでにチケット売り場には30人前後が列を作っていました。でも私の予測よりははるかに少なくホッとしました。あのエルグレコやフェルメールに比べたらかわいいものです。
入り口で今回も解説用のヘッドホンセットを借りましたが、正直言うとこれがなかなか微妙。
なにしろナレーションの一人が黒柳徹子女史!です。彼女、もともと若い時から滑舌が?ですが、昨今はそれに加齢の影響が加わっていて、それがヘッドホンからディテールまでクリアに聞こえてくると、説明の内容など飛んでしまいそうになります。(殴)
いろいろ興味深い解説内容もあったのですが、人に勧めるかというと結構躊躇しますね。絵の横の説明文とほぼ同一ですし。
余談はさておき、今回の展示品は選りすぐりの名品ばかり。なんといっても目玉はルノワールですが、他の展覧会ではあまり目にすることがない静物画や自画像まであって、人物画も傑作揃いでした。
<シャクヤク>
<たまねぎ>
どうですか?芍薬はまだしも、ルノアールと玉ねぎとは! でもルノアールにかかれば玉ねぎさえ輝いています。(笑)
人物画では一番気に入ったのがコレ↓ 「テレーズ・ベラール」で13歳の少女の肖像画。
「ルノアールテンプレ顔」(殴)していないのが気に入りました。もっともモデルになった女性は服が気に入らなくて「好きな絵ではない」と言っていたとか。父親は外交官で銀行家だったそうです。この絵は以前も来日しています。
そしてルノアール・テンプレな人物画も良品揃い。(笑) クラーク夫妻の好みの良さが表れています。
まず「劇場の桟敷席」 本当は3人が描かれていたとか、説明がありました。
そしてこれ↓は「縫い物をするマリー=テレーズ・デュラン=リュエル」。長い名前で覚えられない‥。
ポスターに使われたのがコレ↓ 「鳥と少女(アルジェリアの民族衣装をつけたフルーリー嬢)」ほんとはフルーリー嬢じゃないとかの説明でした。
その他にも有名な「うちわを持つ少女」などがあって、ルノワールは合計22点。満足でした。
他の画家の絵も見ごたえのあるものばかり。
モネといえば睡蓮ですが、こんな絵もあったとは。「エトルタの断崖」↓
観ながら、大昔コーンウォール半島の先端・ミナックシアターを訪れた帰路に立ち寄った風景を思い出しました。オールドハリーというところです。
セブンシスターズよりは小規模ですが、ここもナショナルトラストが保護していて、真っ白な崖がきれいでした。
ああ、また行きたいよ、イギリス貧乏旅行!(笑)
これはバルビゾン派・コローの「水辺の道」↓
マネのこんな絵もありました↓「花瓶のモス・ローズ」
アカデミズムの作品・ブグローの「座る裸婦」。そのまんまな題です。
アングルを想起させる硬質で端正なタッチです。
その他にもジェロームの「蛇使い」やドガの「稽古場の踊り子たち」、ジェームス・ティソの「菊」もいつまでも見ていたい作品でした。特に「菊」は花の扱い方が斬新でした。
今回の展覧会の感想は、「疲れない」の一言。(笑)
ほとんどの絵が、狭い我が家でも飾れそうなサイズで、しかも穏やかな雰囲気のものが多かったのがリラックスできた要因でしょうね。とくに目玉のルノアールの作品の多くが彼らしく楽天的でハッピーな画風なのがよかったですね。
それと、展覧会の配置が素晴らしい。
ルノアールを最後にもってきているのが効果的でした。
というのは、皆さん展示の初めのほうは元気があるので熱心に丹念に観るので混雑しますが、最後のルノアールの展示あたりまで来ると、お疲れなのか人波も適度に散らばってきてゆったり観られたのです。オーバーに言うと、「万葉文化館」状態。(殴)
そのため、会場出口まで作品を観てから、再びはじめからルノアールの作品を見直すことが出来たりして満足しました。ナイスな配置でした。
観終ってから今度は「マリー・アントワネット物語展」へ。
こちらは地味というかマニアックというか、興味のある方には堪えられないでしょうが、私のように「絶対王制」と聞くと即座に拒否反応が出てくる者にとっては余り感銘を受けない展示でした。
でも豪華な衣装やド派手なウイッグ、手の込んだ装飾品を見ていると、派手好きで浪費家といわれた彼女や貴族・王族の暮らしぶりがうかがわれて、フランス革命の背景がリアルに見えてきますね。
以下の写真は撮影自由な展示コーナーで撮影したものです。フラッシュは禁止なのでブレブレです。^^;
衣装はもちろんレプリカ
巨大な帆船が付いたウィッグ↓
出口近くには池田理代子氏が本展用に描き下ろしたのマリー・アントワネット原画が↓
今回よくわかったのが、マリー・アントワネットの鼻の形。けっこう鷲鼻でした。
なので、ヨメさんと「あの鼻の形だとオハナがやったらピッタリやね」などと下らぬことを言ってみたり。(笑)
観終ったら結構な時間になっていたので、劇場前の立体看板前で写真を撮ってからカフェへ。
相変わらず狭い店内を、恐縮しながら車椅子を押して奥へ。
食べたのはコレ↓(まあまあ価格相応ですが、コーヒーが煮詰まっていて苦すぎ(笑))
でも今回の展覧会、それほど混まずに観られてよかったです。やはり期間の中ごろあたりが混まないようです。
絵そのものが余り普段目にすることが出来ない希少な作品が多いので、ぜひ機会があればご覧ください。
おすすめです。
梅雨はどこに行ったかというような暑い日でしたが、展覧会場は涼しいので、気にせず万葉文化館に向け出発。
開館時間きっかりに到着しました。でも駐車場は、車の数がいつもより更に少なく、ちょっとがっかり。
館周辺も人影がありません。
いつものとおり、建物入口前で庭園を背景に写真を撮ってから館内へ。今の時期、庭園は花が少なく、ホタルブクロとネジバナ程度しか見当たりませんでした。
野々内良樹回顧展-花鳥へのまなざし-は日本画展示室での展示で、作品数は館のホームページでは「約40点」となっていましたが、「約」とはどういう意味でしょうか?
でも、残念ながら今回も、展示室には展示パネルの各コーナーごとに配置されたスタッフ以外は誰もいません。思うままに作品が鑑賞できるのはいいのですが、広い室内に他に誰も観客がいないというのもいささかさびしいですね。
作品は製作時期順に展示されていました。初期の作品はやはり色彩も鮮やかで題材の描き方も力強い感じですが、年齢とともにそれらが穏やかに繊細になっていっていました。
インドクジャクやツルなどをよく描いていて、どれもきれいな絵です。花鳥画といえば上村松篁・淳之親子の絵などを連想しますが、それらよりは鳥類の形態の描き方がリアルで、画面構成の様式化の度合いも低く、より自然な描写でした。
これはけっこう装飾画的です↓
↑いずれも公式ホームページより
しかし、どうもこういう題材は苦手ですね。どの作品も穏やかな画風なので、見飽きてしまいました。
題材は違っても似たような印象の絵が続くので、だんだん観る集中力が続かなくなります。そのせいか、たまに観客が入ってきてもすぐ出て行ってしまい、ゆっくり見ているのは私たちだけでした。
鳥類に詳しい方だとまた別の興味もわいてくるのでしょうが、名前だけは聞いたことがあっても、個々の生態などに疎い私たちにとっては猫に小判でした。
それでも1時間ぐらいかけて観て回って、11時過ぎに会場を出ました。
展示室横の廊下では写真展が開かれていました。一通りそれも見てからミュージアムショップへ。
障害者割引で入場料を無料にしてもらっているので、せめてものお返しと、毎回館内のショップで絵葉書や万葉集に関連した書籍を買っていますが、今回も展覧会にちなんだ絵葉書と、以前展覧会が開催された安野光雅の「絵の教室」(中公新書)を購入しました。この本、絵画鑑賞の基本について原色図版を多用して丁寧に解説してくれていてお勧めです。
この時点で時計を見たら11時半になっていました。昼食をどうするか少し迷いましたが、今回も館内のカフェSizinを利用することに。前回サンドイッチが分厚くて食べにくかったのですが、味や食材そのものはよかったので、リピートすることにしました。
展覧会の観客が少なかったし、時間も昼少し前なので店内は私たちだけかと思ったら、もう先客がいました。
その後も次々とお客さんが入ってきて店内は盛況でした。意外でしたね。
オーダーしたのは前回同様サンドイッチBセット。@1,000円と手頃です。
デザートはバニラアイス+コーヒーゼリー。ドリンクはカフェオレ(香りが高くおいしいです)にしました
ヨメさんのチョイスは今月の紅茶・ナツコイ。フルーティーな紅茶でした
ナツコイの説明です
サンドイッチのパンは相変わらず厚切りでしたが、こちらも学習して(笑)オープンサンド風に具をパンに載せて一枚ずつ食べました。具にモッツァレラチーズやレタス、生ハム二枚に味の濃いトマトなどいいものを使用したサンドイッチで、その横には同じモッツァレラチーズ+トマトにデラウェアの小さい房、カボチャのレモン煮が添えられていて、さらにサラダとドリンク、デザート(プリンorバニラアイス)が付いて1,000円はCP高いです。
満足して食事を終えて、庭園に行きました。最初に書いたようにこの時期は花が少なかったのですが、それでもホタルブクロがもう咲きはじめ、シモツケはきれいなピンクの花を満開、その横にトキワバアジサイが名残の花を重そうにつけていました。遊歩道を下った庭園奥のアジサイ園ではヤブカンゾウが咲き始めていました。
シモツケです↓
ホタルブクロ↓
ヤブカンゾウも咲き始めていました↓
梅雨明け寸前の暑い日差しを遊歩道の木陰で避けながら駐車場に戻りました。この2日後に「梅雨明け宣言」となりましたが、実際はもうこの日に明けていたと思いますね。
絵画展としてはイマイチな感想となりましたが(笑)、カフェで以前と同じおいしい昼食が味わえたので満足でした。
飛鳥を旅される方はぜひ万葉文化館まで足をお運びください。
企画展以外にも、富本銭を造っていた飛鳥工房の遺跡や、万葉文化を多面的に紹介した展示など見ごたえがあります。
おすすめです。