グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

食料自給率にも多様性があっていい。

2011-08-13 16:26:21 | Weblog
食料自給率にも多様性があっていい。


農作物には、土地利用型作物と労働集約型作物があり、その作物を使った
土地利用型作物農業と労働集約型農業があることを、前回ご説明しました。

そこで最近、なにかと話題となることが多い 日本の食料自給率 です。

カロリーで表したり、生産額で表したり、さらに重量で表した自給率もあ
りますが・・・結論から言えば、いろいろな自給率があってもいいんです。

その理由は以下のようになります。

たとえば、労働集約型作物をつかった労働集約型農業を奨励するとしたら
少ない面積でも生産額はあがる
わけですから、当然生産額で計算する食料
自給率は跳ね上がります。21年は70パーセントということですので、
今後の奨励政策いかんによっては、8割近くになることもあっていいこと
になります。 

 国内で労働集約型農業を奨励 + 土地利用型作物は輸入増やむなし

という農業のやり方になりますね。〔反対に土地利用型作物を使った土地利
用型作物を奨励していったとすれば、土地利用型作物作物の価格は、労働
集約型作物よりも格段に安いのが現実なのですから、生産額で計算する食
料自給率は減少していくことでしょう。


さて、そこでです。
人の食べる物の種類の問題というものが、でてきます。

労働集約型作物の代表とされることの多いネギやイチゴなどを食べること
だけで、土地利用型作物の代表であるコメやムギ、大豆をたべなくてもや
っていけるのだろうか
という基本的なヒトの食に関する問題です。

世界的に食料が潤沢であった時代がこれからもつづいていくのであれば、
労働集約型作物をつかった労働集約型農業を奨励することで、生産額で計
算する食料自給率を上げていくのも良いでしょう。

しかし、考えておかねばならないのは、世界的に食料、とくにコメやムギ、
そして大豆の供給不安が おこったときにどうなるか
 という問題なの
です。実際のところ、身近なパンや豆腐の値段がじわじわと値上がりして
いる
ことからもわかるように、数年前よりも格段にコメやムギ、そして大
豆の価格は上昇しているという現実があります。
そのような可能性が高い時代に、〔一般の方には目新しいために注目さ
れがちな
生産額でみた自給率ばかりを最重要視するというのも いかが
なものか
と思うのです。


そして、ここまで説明し終えたところで、最初にお伝えした

 いろいろな面から算出したものがあっても良い

とした食料自給率の表し方についてです。

話題になっている生産額で表すという自給率もあるべきだし、従来からの
カロリーベースの自給率も大事なものだと思うのです。さらにいえば、重
量で表した自給率なども、けして不必要なものではない。
大事な国民の食料に関する安全保障の基になる数字なのですから、いろい
ろろな角度から慎重に検討するという意味で、『食料自給率の表し方には
多様性があってしかるべき』だと考えたい
のです。

ちなみに農水省の食料自給率に関するページですが・・・カロリーベース
の自給率の話しばかりではなく、生産額でみた自給率に関してももちろん
きちんと明示してある
ことをお知せして、今回の話しはおしまいです。
ページは こちら 。


▼ むしろ問題は・・・〔自給率の表し方よりも〕農業には土地利用型
  作物型農業と労働集約型農業があるという現実を理解していないフリ
  をしている論者や政府のお偉いさんがいる
ことなのだと思いますよ。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染



農作物には、土地利用型作物と労働集約型作物があります。

2011-08-13 14:15:53 | Weblog
農作物には、土地利用型作物と労働集約型作物があります。
自給率とあわせる・み


作物には 土地利用型作物と、労働集約型作物があります。

たとえば小麦大豆といった作物が典型的な土地利用型作物です。
機械化の面からいえば、栽培に関する作業のほとんどが農業機械で行
える作物だといえるでしょう。だたし収益をだすためには、いろいろな
農業機械と採算に合うための広い土地が必要になります。

反対に、栽培に関する作業の大部分が機械化するのが困難な作物があ
ります。たとえば葉もの類であればホウレンソウネギといった 葉
もの類、果菜類であれば キュウリ・大玉トマト・イチゴにメロン、
そしてお花などです。これらを労働集約型作物といいます。
こちらは農業機械はさほど必要ありませんが、機械化出来ない部分に
投入する労働力が必要となります。

そしてこの2つのタイプの作物のうちの 平均な年の価格を例にとり、
数字で表すと、次のようになります。

作物  労働時間/10a  農業所得/10a  労働農業所得/1時間

 コメ  29.2時間     32067円    1100円
 大豆  10.1時間      1595円     176円
 ↑↓
 ネギ 1254.3時間   885000円     706円
 メロン 3100時間   3546000円    1278円


どうでしょう、農業で生産する作物というくくりでは同じ作物ですが、
その実態はまるっきり正反対なものだということが、おわかりになりま
せんか?

このような作物の栽培の実態と、その経営の実態を認識したうえでな
ければ農業改革論を論じられません。どの作物を扱うかで、方法論も
結論も、理想とする農業の姿が変わる
わけですから。

そして・・・なぜ、日本には土地利用型作物を使った農業や労働集約型
作物をつかった農業といった、いろいろな農業が存在するのかを説明して
お話はおしまいです。

 日本は南北にながーい山国。それゆえに気象も多種多様

これが日本にいろいろな農業〔と、いろいろな自給率〕が要る理由です。

 

▼ 土地利用型と労働集約型。この作物の違いが、カロリーベースでみる
  自給率と金額べースでみる自給率の違いの話
につながっています。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染