グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

食料自給率にも多様性があっていい。

2011-08-19 15:56:14 | Weblog
食料自給率にも多様性があっていい。

この一週間においてもっともアクセスの多かった回の再掲載となります。
よろしかったら。
 


『食料自給率にも多様性があっていい。』

農作物には、土地利用型作物と労働集約型作物があり、その作物を使った
土地利用型作物農業と労働集約型農業があることを、前回ご説明しました。

そこで最近、なにかと話題となることが多い 日本の食料自給率 です。

カロリーで表したり、生産額で表したり、さらに重量で表した自給率もあ
りますが・・・結論から言えば、いろいろな自給率があってもいいんです。

その理由は以下のようになります。

たとえば、労働集約型作物をつかった労働集約型農業を奨励するとしたら
少ない面積でも生産額はあがる
わけですから、当然生産額で計算する食料
自給率は跳ね上がります。21年は70パーセントということですので、
今後の奨励政策いかんによっては、8割近くになることもあっていいこと
になります。 

 国内で労働集約型農業を奨励 + 土地利用型作物は輸入増やむなし

という農業のやり方になりますね。〔反対に土地利用型作物を使った土地利
用型作物を奨励していったとすれば、土地利用型作物作物の価格は、労働
集約型作物よりも格段に安いのが現実なのですから、生産額で計算する食
料自給率は減少していくことでしょう。


さて、そこでです。
人の食べる物の種類の問題というものが、でてきます。

労働集約型作物の代表とされることの多いネギやイチゴなどを食べること
だけで、土地利用型作物の代表であるコメやムギ、大豆をたべなくてもや
っていけるのだろうか
という基本的なヒトの食に関する問題です。

世界的に食料が潤沢であった時代がこれからもつづいていくのであれば、
労働集約型作物をつかった労働集約型農業を奨励することで、生産額で計
算する食料自給率を上げていくのも良いでしょう。

しかし、考えておかねばならないのは、世界的に食料、とくにコメやムギ、
そして大豆の供給不安が おこったときにどうなるのか
という問題なの
です。実際のところ、身近なパンや豆腐の値段がじわじわと値上がりして
いる
ことからもわかるように、数年前よりも格段にコメやムギ、そして大
豆の価格は上昇しているという現実があります。
そのような可能性が高い時代に、〔一般の方には目新しいために注目さ
れがちな
生産額でみた自給率ばかりを最重要視するというのも いかが
なものか
と思うのです。


そして、ここまで説明し終えたところで、最初にお伝えした

 いろいろな面から算出したものがあっても良い

とした食料自給率の表し方についてです。

話題になっている生産額で表すという自給率もあるべきだし、従来からの
カロリーベースの自給率も大事なものだと思うのです。さらにいえば、重
量で表した自給率なども、けして不必要なものではない。
大事な国民の食料に関する安全保障の基になる数字なのですから、いろい
ろろな角度から慎重に検討するという意味で、『食料自給率の表し方には
多様性があってしかるべき』だと考えたい
のです。

ちなみに農水省の食料自給率に関するページですが・・・カロリーベース
の自給率の話しばかりではなく、生産額でみた自給率に関してももちろん
きちんと明示してある
ことをお知せして、今回の話しはおしまいです。
ページは こちら 。


▼  むしろ問題は・・・〔自給率の表し方よりも〕農業には土地利用型
  作物型農業と労働集約型農業があるという現実を理解していないフリ
  をしている論者や政府のお偉いさんがいる
ことなのだと思いますよ。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染





出来の悪くなった土地に、新しい土を搬入するという農業技術。

2011-08-19 14:46:39 | Weblog
出来の悪くなった土地に、新しい土を搬入するという農業技術。み

新しい土地の圃場では作物がよくできる」・・・これは良い営農成績
をあげておられる農家さんに共通の認識です。

土地の土壌の分析をしてみても、それははっきりと確認することが可能
あり、そのような土地でよく見受けられる特徴は

  全体的に土の養分が不足傾向にある 
  土の構成成分であるミネラルのバランスがとれている

ということになります。

そうなんです・・・あるミネラルが極端に不足したとした場合、対策と
してその不足したミネラルを補足していけばよいわけですから、 まあ
わかりやすい話ですよね〔ヒトで考えれば、痩せている方では とりあ
えず食べてもらえばよいわけですから
〕。

問題は、

  全体的な土の養分が過剰傾向にある 
  養分のいくつかが過剰にあり、ミネラルのバランスがとれない

ときです。

たとえば、植物の生育に良いからといって、あるミネラルばかりを過剰
に、何回も・何年にもわたって施用すると、ミネラル間のバランスが崩
れ、それぞれのミネラルの間で反発がはじまる
ことがあるんです〔拮抗
作用
とよばれますよ
〕。
そうなんです、肥満と、それに伴う減量となると、これはとにかく大変
なんです〔これは人の場合でも同じですよね〕。

そして、対処法です。まずは

  過剰になりすぎた特定のミネラルをやらない

という方法があります。ただし、この方法では、作物を作りながらとな
りますので、これに伴う技術もむずかしいし、時間もかかることになる。

そこで、もっともてっとりばやい方法として、昔から行われているのが、

山土などの、痩せてはいますが ミネラルに富んだを土を、問題の出た
土地に搬入する
という方法があります〔土を土壌改良剤として利用する
わけですね〕。さらには 問題のでた土地の土を、そっくり新しい山土と
入れ替える
という、荒療治もあります。

実際の農業の現場では、ハウス10アール当たりに数十トンの山土を搬
入したなんて話は、よくあるんですよ〔入れ替えると数百トンの場合も〕。

 ◎ 続編「土って、けっこう かさばります」 は、 こちら 。


▼ こういった、「田畑に新しい土を導入する」行為。これは古来からある
  技術で、“客土/きゃくど”
とよばれてきました。土を お客さま扱いして、
  大事にしてきた というわけですね。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」 「里地里山複合大汚染