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読書の森

井沢元彦『暗鬼』

このところ、時代小説中心に読んでます。
もはや私は創作のエネルギー切れなのですが、まだ新人賞応募の夢の欠片を持っているようです。
井沢元彦はちょっと癖のある時代小説を書く人です。
才気溢れてるけど、歴史を斜めから見る癖があると私は感じるのです。
 
『暗鬼』は彼の得意な時代ミステリーの短編集です。戦国の権力者同士の心理のかけひきを描いてます。
この中で一番後味が軽いのは、『賢者の復讐』です。
 
妖力抜群の正体不明の仙人、果心居士は不老不死の術を極めたといい、世間では百歳とも二百歳とも言われている。
深山に弟子と住み、容易に姿を見せない。
果心が不老不死の秘法を極めているのを知る秀吉は何とかしてその秘法が欲しかった。
時に秀吉62歳、最愛の実子が生まれ未だ幼子であるところから、この子が天下を治め安泰となるまで生きていたかったのである。
使いをやって頼み込んだ挙句、ようよう果心が不老不死の仙薬を持参し秀吉の待つ伏見城に現れた。
 
さて、その仙薬とはいかがなものか?
 
題名の賢者は仙人のことで、復讐とは惨死させられた親族の仇を討つことですが、別に血なまぐさい場面が出る訳でもなく、要は秀吉がまんまと騙されてしまう事です。
不老不死の薬などある訳もないのに、相手を侮ったためにそれを得るチャンスを自ら失ったと、敵に思い込ませる心理的マジックを巧みに描いてます。
 
仙人の歳は意外と若く壮年と言ったところでしょうか、奇術と催眠術、心理的錯覚を狙って、妖術らしく見せているというお話です。
 
歴史を面白く描きたいという作者の狙いはとてもよく分かります。
ただ、描かれた心理戦はかなりどす黒く疲れるものであります。
権力を保つのはさぞしんどい事だろうな、食べるのさえ困らなければ庶民の生き方の方が遙かに楽だと、しみじみ思った短編集でありました。
 


春らしい物が食べたくて、アサリとキャベツの酒蒸しを作りました。
砂抜きしたアサリとキャベツとワカメ、にんにくみじん切りをオリーブオイルで軽く炒め、酒、こしょう、醤油を加えて蒸し煮します。
 
キャベツは花粉症の症状緩和に役立つとか、例年よりずっと酷い花粉症に悩む私にとって朗報でありました。

読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️

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