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この本は、当代の人気女流作家が書いた、女の恋の物語である。
非常に入りやすい文章で、かつ私も女性の為か共感度も高かった。
一様でない作家の特色が出ていて、豪華なご馳走を並べられた思いがあった。
特に阿川佐和子のメルヘンチックな物語は意外だった。
もっとシックな大人の恋物語を書く人かと思い込んでいた。
さて、最後の恋とは、文字通りの最後の恋ではないのだ。
「今、好きな人。今好きになった人。その人のことが今までで一番好き」
(柴田よしき『LAST LOVE』)
主観的に恋の出来る人生の半ばを過ぎて最高の恋を意味する。
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これが最後の恋と自分を縛り上げるのは恋では無いのかも知れない。
それでも「最後の恋」の相手を愛する幸せは他の恋と違う。
そのときめきを味わい尽くすのは甘美である。
その甘美さがどの小説にも潜んでいた。
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さて、多彩な魅力いっぱいなアンソロジーの一編を選ぶのは、とても難しかった。
つまり、バラと百合と蘭どれが一番美しいかと言われた様なものだ。
中で、推理小説のネタとしても凄いなと感じたものを挙げる。
松尾由美の『わたしは鏡』である。
「偶然見つかったラブレターは、誰から誰に書かれたものだろう」
謎を探る主人公が行き着いた答えは何だったのか?