読書の森

山田風太郎 『眼中の悪魔』最終章



作者の学んだ医学知識が珠江の秘密を明かしてくれる。

ただ、山田風太郎はフィジカルな医学知識よりもメンタルな医学知識に優れているようだ。

妊娠がきっかけになって罹った病が男たちの妄想を招く訳だ。
無辜の女性の自己主張が弱い為に、男の思惑に翻弄されていく。

この病は悲劇が起きてから橘が告白する。
全てを隠し、心理的に片倉を追い詰め惨劇を招く。
プロバビリティの犯罪なんてものじゃない。
もの凄い悪意の犯罪ですな。



それにしても歯がゆい珠江の対応、自己主張のない女は時代の産物だろうか。
と言っても、彼女は素直に結婚し、従順な妻だったに過ぎない。橘に愛着したというよりも、好意と懐かしさを見せたと思える。
それを、妖婦と言えるのだろうか?

時代を遡り、漱石、鷗外、谷崎潤一郎の女は違うようだ。
はっきりとした意志を示す女性や意識して淫らになる女が作品中に登場する。

山田風太郎先生は女性に弱かったのだろうか?過剰反応に思える。
とはいえ、このような形の完全犯罪、いわば心理的トリックの妙味を満喫できる作品である。

読んでいただき心から感謝いたします。

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