見出し画像

読書の森

川上弘美『そのスイッチ』

以前紹介した『作家の口福』は、個性が異なる作家さんの食べ物に関する興味深いエッセイ集であります。

本日は川上弘美の口福を紹介しましょう。
この『そのスイッチ』って一体何のスイッチか?

「そのスイッチは気温が28度以上になると」オンになるのです。
つまり、季節の変化に合わせて食事の支度時間が変わるスイッチの事。

冬場は(私好きなんですが)じっくりと煮込む料理を作っても、夏が近くなると「いっぺんに炒める」「いっぺんに炊き上げる」だけの料理になる。
川上さんのレパートリーによれば簡単ポテトサラダ、鶏肉とトマトを一緒に焼いたもの、etc.となります。

ところが、、ジリジリと陽が照りつける夏は、ただ切る並べるに変化しちゃう。
例えばきゅうりの叩き(叩いて豆板醤と醤油かける)、ひや奴(置いた)etc.という事になります。

作家だけあって、この方描写が非常にうまい。

紹介されたお料理がとっても美味しそうに感じてしまうのです。

極め付けが家族のいない時の一人料理。
バター醤油ご飯、茹でたブロッコリー、じゃっと焼いた豚肉。
を食卓に肘をつき隣の空いた椅子に両足を載せて、食べながら小説を読む。
だって。

「やってみたい❣️」
私は年中一人だからやれる!と思ったのですが、諸事情を考えて(本や衣服を汚す。ババア故椅子から落ちる危険性もある)のでやめます。


基本的に料理嫌いと言う作者の手にかかると、とっても美味しいお料理に思えます。
自作の料理を載せるのはこの際やめます。多分同じ料理を作っても写真では美味しく見えないと思う。

事ほどさように、作家は言葉の魔術師だと感じました。
恋の喜びとか別離の苦しみ、理不尽な怒り、とか深刻な世の中の様相だけでなく、決して画像で伝えられない「美味しさ」や「幸せ感」も作家は伝えられるのですね^_^



読んでいただき心から感謝いたします。

コメント一覧

airport_2014
@tokinosekimori-kitaiwahara ありがとうございます😊 そう思ってくださる事がとても励みになります。
tokinosekimori-kitaiwahara
読書の森さんの文章も、いつも上手だなぁって感心してますよ。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「書評」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事