読書の森

ホワイトデーの殺意 最終章



乳癌の再検査が終わってニ週間後、カナの癌の疑いはあっけなく晴れた。
カナの胸の脂肪がかなり豊かな為に、良性の脂肪の塊が癌とまぎらわしかったのである。

カナは夢見る様な気持ちでいた。
桜の花の美しい季節である。
金沢の桜はどんなだろうか、ふと紘の事を思い出す。

希美の話で、紘は元気で金沢で活躍してるという。
「きっとあなたの事は忘れていないと思う」
と希美は温かい目をした。

ただ、紘の電話番号もメルアドも変わった今、カナに何が出来るのだろうか?

ブルっと、ポケットのスマホが鳴った。



「幸田さん、久しぶりです。保田です。
彩さんから君の活躍の様子を聞いた。
読書好きの君を懐かしく思い出した。
金沢も住んでみれば美しい街だ。
第一線をと、突っ張てた自分を反省してる。
僕はこの頃時々本社に研修に行く。
もし、良ければその機会にもう一度会えないか?
又連絡します」

新しい電話番号とメルアドがカナの目に眩しい。

不幸と幸せは殆ど同時にそして突然来る。
短い時間に、ジェットコースターの様な危うい体験をしたカナにとって、生きる事は今まで以上の意味を持つ様になった。

人は様々な人と関わって生きていくのだ。
幸福も不幸も殆ど同時にやってくる。
今訪れた幸せは貴重なものだ、大事にしたいと痛切に感じた。

青い空の下、ピンクの綿菓子のような可愛い桜の花をしばらく眺めたカナはゆっくりと元来た道を歩いている。



読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️

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