この文庫本の題名を新聞で読み興味を持った。
川端康成は『伊豆の踊子』で知られ、無垢な少女の純粋な愛を描く作家と見られがちだが、そうでない。
『眠れる美女』の無抵抗に眠る少女たちをただ視覚で愛で、耽美な思いをする老人という一歩間違えば冒涜的世界をも描く人だ。
さて、初めて見る本に隠れた名作かと期待して読んだ。
しかし、この作品の価値は全く別のところにあった。
この作品集は川端康成が実際に体験した初恋の物語を集めたものである。
そういう意味で私小説集と言っていいが、恋の描写に生々しさが欠けてフィクションにも思える。
大正7年20歳の一高生の川端はカフェで可憐な13歳の少女初代と会う。
その出会いから彼の初恋が始まるのである。
川端は幼い時に肉親全てを失っている。
遺産があって経済面の苦労はないが恐ろしい孤独感を内部に秘めていた事だろう。
その彼の目に、初代は転々と苦労した垢など一点も見せない健気な娘と映った。
華奢で寂しげな姿が余計に心を惹かれる。
汚れない内に自分が引き取ってやりたい。
それが彼の愛情の形である。
作品の中で、彼は初代の表情や仕草の清らかさを克明に描いている。
それは愛する相手を描くというより、無垢な美を求める心を感じた。
川端作品の全体に、若い娘の美しさを鮮やかに捉えた表現が多い。
思うに、彼の中にどこか未成熟な女を希求する本能みたいなものがあるのではないか。
読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️
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