読書の森

いとせめて恋しきときは



今朝方、昔好きだった人の夢を見た。
夢の中で、どことも知れぬ街の人込みの中を二人で黙って歩いている。
一緒にいるのが当然の様な何気ない気分でふわふわ歩くだけの夢だった。
夢の中でも、恋しい人に久しぶりに逢えたのに心は全く騒がない。
多分歳を重ね過ぎたのだろう。

それでも、彼と会えなくなってから覚えた小野小町の和歌を思い浮かべた。

その和歌とは、
「いとせめて 恋しき時は むばたまの
夜のころもを 返してでぬる」
というかなり切ないものである。

会いたくて恋しくて堪らぬ夜、夜着を裏返しに着て床に就き、この歌を三度唱えると、夢の中で恋しい人に逢えるという。

確か、推理小説の中で、原因不明の死を遂げた薄倖の女性が寝間着を裏返しに着ている謎解きの場面でこの歌が出てきたと記憶している。

この歌もこの小説も美しく描かれているのに、訳あって会えない年月はあまりにも長くてみっともない。
気が付いたら、お互いに、現実には爺さん婆さんになっていたとはかなり残酷な事実である。




この現実を掘り下げるのは止めといて(都合が悪いので)、ネットで夢占いを検索した。

驚いたのは「好きな人と会った夢」のパターンの数の多さである。
その多すぎるパターンを大雑把に括るとハッピーな夢とアンハッピーな夢になる。
そして夢の解釈の殆どが現実と逆、逆さ夢になる。
例えば、結婚する夢を見たらその相手との別れを意味するというのが解釈の常道である。

それにしても、このような検索をする人の99,9%位が老人以外の人であるらしい。
非常に場違いのところでうろついてる気分になった。
それで、(暇なので)記憶の中の夢をうろついてみた。

夢とは人によって微妙にシチュエーションが異なる。
昔、好きだった人を夢の街で見かけた時、きっと相手も懐かしいのだなとかってに解釈する事にした。
今度、夢の続きが見られるのは何時なのだろうか?

読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️

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