先日の告りブログ、我ながら相当見っともないなと後悔してます。
そのように立ち入った話をする先生がいらして、年賀状のやりとりをしていた事は事実ですが、話すべきではありませんでした。
閑話休題、今日のブログはご存知宮部みゆきさんの著書『人質カノン(文庫)』についてです。
コンビニ仲間の学生もいるし、暖かい食料品も明るい光も流行りのBGMも流れる夜のコンビニは、この世代の憩いの場所だったのかも知れません。
この馴染みの場所で突然起きた強盗騒ぎ、犯人はオートバイに乗って現れ、フルフェイスのヘルメットをつけて人相は全く分かりません。
巧妙な手口を使って大金を奪い取った犯人は逃げ去りますが、何故か後に赤ちゃんの使うガラガラを落としていくのです。
事件から何日か過ぎ、ここ1か月程このガラガラをズボンのポケットに突っ込んでいた変わり者の青年が容疑者としてマークされました。
しばらく、無愛想で無口な青年の悪い噂が広がります。
青年は失踪したのか、行方不明になってます。
ところが、真犯人は別人でこの青年の惨殺された遺体が山中で見つかります。
つまり、現場にガラガラを残したのはこの青年に罪を被せる工作だった訳です。
実は、このガラガラの本当の持ち主は徘徊するお爺ちゃんです。幼子に戻ってしまったこの人はガラガラをお守り代りに持ち歩いていたのです。
コンビニで拾った青年はそこに行く度に落とし主を探していたのです。多分警察に届けるより、ずっと優しく手渡せると思っていたのでしょう。
しかし、いい若者がガラガラをポケットに入れている格好は誰が見ても奇異に感じます。
その為にこの善意の若者は陰口をきかれ、果ては強盗犯人の罪を着せる為命を奪われてしまうのです。
あり得ないようなシチュエーションを宮部みゆきは、説得力ある形でリアルに描きました。
初期の著者の作品は、市井の片隅に起きる小さな事件を優しい目で描いたものが目立ちます。
この文庫本の中でイジメに関する作品が3作ありますが、そこから立ち上がる希望を持たせて終わっています。
著者の人となりを感じる作品集でした。