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読書の森

岡本綺堂『半七捕物帳』から『お文の魂』

久しぶりに遠出をして満開の河津桜に出会う事が出来ました。
人間界の深刻な状況を知ってか知らずか、桜はただ美しいだけでした。
現実を忘れさせるものがあります。

現実を忘れさせるものの一つに、良質なミステリーがあります。

岡本綺堂は日本のミステリー小説家の草分けです。

彼は江戸の御家人の子供で明治生まれです。今でいう都立日比谷高校を出て新聞記者になりました。そこから文筆業に転身したのですね。

半七捕物帳は大正の初めから執筆されてます。
江戸時代に岡っ引をしていた魅力的な話術の持ち主、半七の活躍談を記者が書き止めるという形です。
全編江戸情緒に満ちていて、時代考証は完璧、しかもお話として非常に面白いです。


『お文の魂』は旗本の妻のお道が娘お春を連れて実家に駆け込むところから始まります。
そして「お暇をとりたい(離縁したい)」と突然言い出すのでした。
実家の兄は困惑して理由を問いただしました。

問いただすと、母娘共々屋敷で毎夜恐ろしい幽霊に襲われているそうです。
母娘が寝つこうとすると、全身びっしょり濡れて髪はおどろに乱れ、真っ青な顔をした女が寝所の枕元に座るのがお道の目に見えるのです。
同時に幼いお春が「ふみがきた!」悲鳴をあげ出します。
と、お文の姿は一瞬後に跡形もなく消え去ります。
母娘は不安と不眠で生きた心地も無くなってます。


お道が、この苦痛を訴えても夫は当然頭から問題にしません。
お道は、婚家に留まる限り、毎晩恐ろしい幽霊に見舞われた挙句、自分も娘も命を奪われてしまうのではないかとひどいノイローゼに陥いります。
恐怖にかられて実家に逃げ帰ったのでした。

その幽霊の名前が「ふみ」なのですが、なぜその名が浮かぶのか、母娘ともわからない。
今まで二人は「ふみ」という女を全然知らなかったというのです。夫に関係してる女という訳でもない。

妹思いの兄は事情を夫に告げて相談しました。
「女子供は馬鹿なもので些細な事に騒ぐ」
と夫は笑うのですが、そう一概に片付けられる問題ではないらしい。
夜見張り番をつけると、眠れないお道のそばですやすや寝入ったお春が突如けたたましく泣きだし「おふみがきた」と唸るのです。
これは只事ではない、何か訳があるのだと、一同は真相を究明しようとしました。

そこで、人伝てに頼った半七親分が謎解きを始めたのです。そこで、、。

この話、実に人の心理を知り尽くした悪意に基づく企みだったのですが、さてその手法とは?

古い小説なのですが、現代でも充分以上に面白い。
江戸末期にタイムスリップする楽しみもあって、全く現実を忘れさせます。

『お文の魂』はネットの青空文庫で無料で読める作品です。興味ある方はどうぞ^_^


最近、やたらとホットケーキの素でパウンドケーキを作って食べてます。これはレーズンケーキ。簡単だからハマっちゃうのでしょうが、体重計に載るのが怖いです。

読んでいただき心から感謝いたします。

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