『西郷札』はかの松本清張の処女作であり、それにふさわしい初々しさに満ちている。
作者が40代の半ばに入った時、書いたこの作品が懸賞小説の三席に入賞した。
ここからから、作者の運命は激変するのだ。
無名の庶民から流行作家へ、そして推理小説界のドンに上り詰めたのだ。
不遇をかこち、両親と妻子を養うのに精一杯の一見冴えない男。
大新聞社のエリート記者の間で、鼻にもかけられない、それがかっての松本清張だった。
西郷札とは、西南戦争の折、薩摩藩で出した軍票である。
しかし、あえなく西郷隆盛が敗れた後、紙くず同然に扱われた。
百科事典で西郷札の項目に目を留めた清張は、ここから物語を思いつく。
瞬間的に小説のヒントが閃いて、それについて徹底的に調査する。
書き込みをして整合性を吟味し、作品に仕上げる。
これは、彼が生活の為に習い覚えた筆耕が教えた入念さなのだろう。
出来上がった作品は詩情あふれる佳品となった。
読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️
最新の画像もっと見る
最近の「書評」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事