別れのブルースは、昭和12年大ヒットした歌謡曲です。
当時の歌としてはバタ臭く、忍び寄る戦争に左右されない、いつの時代にも共通の男女の恋の別れの歌です。
最初、横浜の本牧港を舞台にして本牧ブルースと名付けられましたが、何処の港でも歌われるように『別れのブルース』と変えられたのですね。
戦前も、人と人を引き裂く惨たらしい戦いの間も、そして戦後もこの歌が流れていました。
幼い私はラジオから流れるこの歌の響きに魅せられてしまったのです。
もとより男女の想いなど分かりもしませんが、淡谷のり子の哀愁を帯びた声がとても素敵でした。
「窓を開ければ 港が見える
メリケン波止場の 灯が見える」
たいそう美しい景色に思えました。
メリケン波止場という所に瞬く灯火が見たいなあと憧れたのです。
神戸港にはメリケン波止場があります。先の大震災で大打撃を受けましたが、今も美しい姿を保ってます。
過日幼い日の憧れを満たす事が出来ました。
明治元年アメリカ領事館がこの地に建てられたその面影を今も宿す場所であります。
「二度と逢えない 心と心
踊るブルースの 切なさよ」
昔「かっこいいな、素敵だな」と憧れた男女の触れ合いと別れでした。
しかし、現実には激しい傷みを伴うもので、別れる位なら死にたい程と今頃気づいております。
正直言って、非常に生き難い困難な時代に、男女の別れなどありふれた陳腐なものと見る人がいても、それぞれの人にはやはり「死ぬより辛い」のでしょうね。
「お国のため、武運長久をお祈りいたします」
それは建前。
(どうか死なないで!生きて帰って下さい!あなただけでいいの)」
戦争が引き裂いた恋人同士の本音だったと今痛切に思いますね。婆さんになった今になって気づいても、遅いですよね^_^