センチュリーなど1000万円超高級車、12県が所有 山口は2000万円現行モデル
毎日新聞2020年10月5日 20時55分(最終更新 10月5日 21時06分)
地方財政が年々厳しくなり多くの自治体が歳出抑制に取り組む中、全国の12県が公用車としてトヨタの最高級車「センチュリー」や取得費1000万円超の高級乗用車を所有していることが毎日新聞の調査で明らかになった。特に山口県は今年度、2000万円を超えるセンチュリーの現行モデルを「貴賓車」兼県議会議長車として購入。経費節減で公用車の見直しが進む全国の流れに逆行しているとして、識者は「合理性を欠く支出といわざるを得ない」と指摘している。
全国47都道府県を対象にした調査で、センチュリーを所有していたのは埼玉、石川、長野、静岡、愛知、山口、徳島、香川、長崎の9県。岩手、岐阜、大分の3県はトヨタ「レクサス」や同「ヴェルファイア」の取得費が1000万円を超えていた。新しい車は知事車や議長車に使われ、老朽化すると貴賓用や予備車に回される傾向がある。
ただ、センチュリー所有県の中でも取得年度が1997年度の愛知や99年度の長崎、2000年度の長野などは既に「20年落ち」。長野県は知事車として購入し現在は部局長共有車の1台にしているが、県の担当者は「汎用(はんよう)性が高い他の車両に比べ使用頻度は低く、20年間で走行距離は約6万キロ。公用車を更新する『取得から11年かつ走行11万キロ』の基準に届かず『残ってしまっている』のが実情だ」と話し、更新時に次もセンチュリーにすることは「ないのではないか」とみている。
その中、山口県は今年7月、皇族などが来県した際の「貴賓車」兼議長車として、一般会計予算から2090万円を支出してセンチュリーを取得。しかし5日時点で皇族や海外からの賓客といった貴賓を乗せる当面の予定はなく、専ら議長車として使っている。
山口県によると、同県は00年度以降、02年度に1061万円、07年度に1139万円、13年度に1260万円でセンチュリーを購入。3台を議長車、副議長車、貴賓車として使ってきた。今年度に入って02年度と07年度購入の2台が老朽化したため下取りに出し、現在は7月取得の1台を貴賓車兼議長車、もう1台を副議長車にしている。
しかし、今年買い替えるまで貴賓車として使っていた02年度購入の1台も貴賓を乗せたのは、運転日誌が残る17年度以降、計13日(17年度3日、18年度6日、19年度4日)のみ。とりわけ皇族を乗せたのは18年10月の全国都市緑化祭(山口市)で来県された秋篠宮ご夫妻の2日だけだった。
貴賓が来県した際の車両について、調査では「公用車のクラウン(取得費630万円)などを使う」(福岡)、「ハイヤーを用意する」(広島)といった対応が全国の大勢だった。専用車両を所有しているのは全国で5県だが、山口県は「貴賓対応の車は必要。本県は安全性を考えてセンチュリーにしており、県内には借りられるハイヤー業者がないため購入している」と理由を説明する。
上脇博之・神戸学院大教授(憲法学)は「県内で借りられないなら隣県の業者からでも借りればいいわけで、わざわざ購入する必要はない。議会で2000万円超の貴賓車を買うことについて説明していないのであれば、議会の審議を経たとはいえず手続き的にも問題だ」と話す。
平井一臣・鹿児島大教授(政治学)は「自治体財政が厳しい中、支出には合理的説明が求められるが(山口県の場合)そこからはみ出している。皇室や海外要人の来県スケジュールは事前に把握できるはずで、貴賓車を所有しなくても事前に準備する手段を考えればいいのでは」と指摘する。【降旗英峰、下原知広】
センチュリーなどの高級車を所有している13県
【センチュリー】埼玉、石川、長野、静岡、愛知、山口、徳島、香川、長崎
【レクサス】岩手、埼玉、大分
【ヴェルファイア】岐阜
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