Akatsuki庵

後活(アトカツ)中!

茶入と茶碗 『大正名器鑑』の世界

2021年06月08日 06時09分54秒 | 美術館・博物館etc.

★根津美術館 サイト 
「茶入と茶碗 『大正名器鑑』の世界」 ※7月11日(日)まで 日時指定予約制

ちょうど1年前に開催される予定だった展覧会。
コロナ禍に振り回されたままお蔵入りにならなくてよかった。

大正名器鑑、初版本は初めて見たかも。
稿本の展示もあって、レイアウトのこだわりように感心した。

高橋義雄(箒庵)が50歳で実業界から身を引いて、それから茶道具の名器を選定して実物を検分し、由来伝来を調べて
写真図版や詳記を編集したもの。

実業界引退が明治44年、初冊が大正10年というから実に10年という長い時間をかけてまとめ上げたという。
第1編から第9編、さらに索引とか含めて完結したのが昭和元年。←わずか1週間しかなかった昭和元年というのがすごい。
まさに、大正時代の15年をかけて築き上げられたのが大正名器鑑!

ということに、感動。(解説文を読むだけで感動するのも珍しい)
初版はわずか400冊しか刷られなかったということで、初版完結の翌年だかその翌年には再刷が決定したという。

そして、根津美術館が今回のような企画で展覧会を開くことができるのも
大正名器鑑に掲載された茶道具を多く所蔵しているからに他ならない。

コレクションを収集した根津嘉一郎とは盟友だったとのこと。
この辺りは幻の展覧会となった昨年分のチラシに詳しい。→こちら

そして、名器鑑から飛び出したような、根津コレクションの名器の数々。

信楽茶碗「水の子」、堅手茶碗「長崎」(高麗茶碗。銘の由来は地名ではなく、人物の苗字による)。

唐物文琳茶入「白玉」、井戸茶碗「宗及」、鼠志野茶碗「山の端」、仁清の色絵結熨斗文茶碗(箱が黒柿の金蒔絵!)

肩衝茶入「雪柳」、正木手茶入「正木」、雨漏茶碗「蓑虫」、利休瀬戸茶入「不聞猿」(のっぽさん、上部の耳がまさに「聞か猿」)

たぶん、松平不昧公の古今名物類聚に触発されて大正名器鑑の編集することになったのだろう。
雲州松平家伝来の品が多い。(根津嘉一郎が不昧公の子孫、松平直亮と親しくなって、売り立ての際、効果を発揮?)

しかし、他の大名家に伝来したものも。

加賀前田家に伝わった丸壺茶入「石河」、曜変天目(←国宝のじゃない。ただの?建窯の天目)

田安家に伝わった丸壺茶入「青山」、丸壺茶入「相坂」(藤田伝三郎が所蔵していたこともある)に青井戸茶碗「柴田」。

戸田家に伝わった仁清の色絵鉄線茶碗(仁清にしてはちょっとユニーク)

箒庵が所蔵した大海茶入「金森」に海鼠手茶入「深美」。

姫路の酒井忠似(不昧公の茶の湯弟子、酒井包一の兄)が所蔵した二見手茶入「即色」に新兵衛瓢箪瀬戸茶入「空也」、薩摩茶入「亀尾」

あと、伯庵茶碗に三島茶碗「上田暦手」、雨漏茶碗。

どれも一度は根津美術館で鑑賞した茶道具ではあるので、懐かしいという気持ちと
大正名器鑑に詳細が書いてあるんだ~という新しい感動が混在しつつ、
こうして茶道具の展覧会が鑑賞できる幸せ(←コロナ禍で美術館さえ行けない時間が長かったからこそ感じる思い)

いろんな気持ちでごちゃ混ぜになりながら楽しんだ。
(予約制ということもあり、訪れた日が悪天候ということもあり、館内は人が少なくゆったり鑑賞できた)

第2展示室の大正名器鑑刊行後の昭和4年に開かれた高橋箒庵をねぎらう慰労会に関する展示も今回ならではの企画で興味深かった。

ちなみに、現代では国立国会図書館アーカイブで大正名器鑑を読むことができる!→こちら

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