福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

一夜明けて

2014-03-10 10:58:02 | コンサート
福島章恭HP http://www.akiyasuf.com

インバルのマーラー8番から一夜明けた。

いま、蘇るのは、神秘のコーラス。

「神秘」のピアニシシモからフォルティシシモの頂点に昇りつめたとき、3階席に陣取ったバンダが高らかにファンファーレを奏するのだが、
その3階席へ向けて半身を向けたインバルから発せられるエネルギーがただ事ではなかった。
あの厚い胸板から、赤い気の塊のような球が生まれ出でては、それが会場中に発散された。
第1部の終結こそ、バンダとステージ上のタイミングが合わず、インバルの指揮にも無念が滲んでいたように見えたが、第2部は凄まじい気迫で会場中を圧倒したのである。

この瞬間に立ち会えたことは、大きな財産である。
やはり、指揮は人なのだ。
このような会場の空気を支配する熱いエネルギーを持たずして、どんな小手先のテクニックを磨いたところで何にもならない。

もちろん、綿密なアナリーゼがあり、理にかなったリハーサルがあり、作品への愛があった上での話ではあるが、最後には人なのである。

私も、演奏家の端くれとして、まだまだ力不足ながら、バッハやブルックナーを指揮する相応しい人間に一歩でも近づかなければならぬ、と心に誓った次第である。