今宵はNHKホールのハイティンク&ロンドン響を尻目に王子ホールのイブラギモヴァ・リサイタルへ。巨匠よりも美女というわけだ。モーツァルト・ソナタ・ツィクルスの初日である。
先方の演目がブルックナーであれば、鞍替えする可能性も大いにあったが、ブラームス「1番」は5日に東京文化会館で聴くことができる。と、迷いを振り切った。
昨年、トッパンホールで聴いたイザイの無伴奏ソナタ、断崖絶壁で奏するかのように悲壮で凄絶なイブラギモヴァであったが、今宵は些か勝手が違った。まだ、ツィクルス初日、残るコンサートを楽しみにされている方もいらっしゃるだろう。それゆえ詳述しない。
ひとつだけ述べるなら、風のように過ぎ去るべきところに表情を付けすぎであり、身体の中心線の揺らぐ剣の遣い手のような不安定さは否定出来なかった。やはり、モーツァルトは難しい。
ところで、休憩後の後半、客席の中央付近で轟々と鳴り響いた鼾はなんとかならないものか? 振り向くと当該の男性は椅子の背もたれに後頭部を乗せて天井を仰いでいる。隣席はかなりご高齢の老人で注意する気配もない。わたしが演奏中に歩いてゆくことも考えたが、却って演奏者の集中を乱すことは確実なので断念。ひたすら、祈り、耐えるしかなかった。王子ホールのアコースティックが素晴らしいだけに、客席の雑音も鳴り響いてしまうのには参った。
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ
10/1 Vol.1
第25番 ト長調 K.301(293a)
第5番 変ロ長調 K.10
第41番 変ホ長調 K.481
********** 休憩 **********
第35番 ト長調 K.379(373a)
第15番 ヘ長調 K.30
第9番 ハ長調 K.14
第28番 ホ短調 K.304(300c)
アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)
セドリック・ティベルギアン(ピアノ)
於・王子ホール