福島章恭HP http://www.akiyasuf.com
帰宅して、食事をしたら、ぐったり疲れが出て、このまま床に就きたい気持ちなのだが、
チケット獲得までにあれだけ大騒ぎして、肝心のコンサートの感想もないではお叱りを受けそうなので、覚え書き程度には残しておこう。
我が座席は、1階席センター14列目24番、即ちセンター・ブロックの一番右の通路寄りであった。
視界はまことに良好。
インバル、コンマスのみならず、ステージ上のほぼ全てが視界に収まり、視覚的なストレスはない。
ただ、事前に危惧したとおり、音はいまひとつ。
特に、弦楽器の音が頭の遙か上をを通過していって、熱演の割に聴こえてこないのが難点。
音のバランスだけを言えば、会場のモニターから聞こえてきたGPの方が良かったくらい。
従って、もし、2階の良席で聴けていたなら、以下の感想も違うものとなっていたかも知れないことを、予め、お断りしておく。
まず、演奏全体を眺めたとき、素晴らしいパフォーマンスであったことは疑いない。
インバルの優れた構成力によって、長大なマーラー「8番」の造型が気持ちよく見通すことができた。
ただの熱演ではない、知に裏付けられていたことを賞賛したい。
個人的には、もっとカンタービレの欲しいところ、もっと官能的であって欲しい場面もあったが、縦の線をしっかりと明示し、グイグイと音楽を推進させる力は非凡であったと思う。
第2部に入ると、弦も鳴りがよくなってきて、第1部よりもオーケストラの訴える力の強まったのを感じた。
冒頭の山峡の自然、その密度の濃いサウンドは今も耳に残る。
そして、なんと言っても、ラストの「神秘のコーラス」の美しさから大団円に至る迫力は申し分なし。
第1部ラストで遅れまくってしまった客席後方に陣取るバンダも、第2部では見事に修正してきた。
賞賛すべきは晋友会合唱団。
なんと全曲を暗譜で臨んだ!
その心意気に拍手。
歌いこなすだけでも大変なこの作品を、憶えた上に、余裕を持って、破綻のない音程とアンサンブルで歌いきった力量には感服する。
関屋先生亡き後のこのコーラスを聴くのは初めてであったが、若い団員も少なくなく、高いレベルを保ちつづけているのは素晴らしい。
さらに深い発声、さらにドイツ語的な発音も求められるかも知れないが、それはかなり高い次元でのお話。
また、東京少年少女合唱隊も素晴らしく訓練されており、その清澄な歌声が作品に相応しかった。
独唱陣で光っていたのは、テノールの福井敬。
その声は輝きに満ち、マリアを崇める博士では音楽を高みに引き上げる力を備えていた。
一方、バリトンの歌う恍惚の神父は、数小節のフライングをした上、その動揺を引き摺ってしまったのか、歌い始めても走りっぱなしでアンサンブルを乱していた。
つづく、バスの深淵の神父も力不足か・・・。
女声陣については、取り敢えず、今日は、書くのを控えることにしよう。
繰り返すが、もっと音に打ちのめされるような良い座席で聴いていれば、印象は違っていただろう。
みなとみらい大ホールにも、サントリーホールのような天井から吊り下げる反響板が欲しい。
もしかしたら、オルガンの見栄えを考慮して、敢えて付けていないのかも知れないが・・・。
遠い音響ゆえに、ついつい、冷静、かつ客観的に聴いてしまったわけだが、それでも、大きな感銘を受けたには違いないし、
今後の自分の音楽活動へのヒントも与えられたわけで、十年に一度の早起きも無駄ではなかった。
とにかく、今は満ち足りた気分でいる。
追記
ところで、16日のマーラー9番は、3階センター席。
自分としては初めての3階席。
今日より、音響の良いことを祈るばかり。