五、「教会とわたしたち」(358)
5.近代から現代へ(宗教改革とその後)
信仰理解の誤りと政治の失態に対する神の報いであったという。キリスト教内部の無力感と異教徒の批判にキリスト教こそローマの国家の滅亡に責任があると、教養のある異教的な貴族たちが農民たちを扇動して非難した。このとき信頼の篤い友人の勧めを受けて立ち上がったのが、キリスト教の大思想家アウグスチヌス(354~430)であった。彼は先ず、キリスト教信徒に向かって語りかけた。キリスト教信仰のご利益に加担する誤った信仰姿勢を質すことからはじめた。彼は、もともとアフリカ人であり、新しい第二のローマ帝国の期待もギリシャ的神話も全面的に無視した。そしてキリスト教的なこの世の国をも全く考えもしない。
極め細かな答を彼のその(ここまで前回) 人生最後の作品「神の国」において語っている。その目的は、まずはローマ帝国の崩壊はキリスト教の責任ではないことを諄々と書き綴るところからはじめている。またキリスト教の後世に残して余りある基本的教理を語るのであった。落胆する多くのキリスト者を励ますために、彼をしてもっと大きな作品を出すように勧めたその友人は、カルタゴの護民官で公証人という公的地位を持つ人であったが、その名はマルセリヌスといった。その「神の国」の書出しは次のとおりである。「わたしの愛する子、マルセリヌスよ、この書においてわたしは神の国の輝かしい想念を陳述しようと企てた。そもそもこの国は二つの領域に属する。一つはこの世における人生の行路であって、そこではこの国は信仰に~(つづく)