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札幌・円山生活日記

「特別展 よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―」~北海道立近代美術館~

正倉院に納められた数々の宝物の魅力を多くの人に伝え卓越した技術を伝承するため当初の姿を再現する模造製作。明治時代に開始され、昭和47年(1972年)から宮内庁正倉院事務所によって本格的に実施されています。人間国宝らによる技と最新の科学的調査により再現された逸品を展覧する「特別展 よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―」が「北海道立近代美術館」で開催です。

今日は「特別展 よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―」を北海道立近代美術館で鑑賞です。9月に鑑賞した“「コレクション・ストーリーズ 日本近代の美術」&「道銀芸術文化奨励賞受賞作家展」~北海道立近代美術館~”の隣の展示室で開催されていたもので期間中に必ず来ようと考えていました。ところが秋の紅葉めぐり他で時間がとられ気が付くと開催期間終了が真近に迫ってきており「見逃してはならず!」と本日出かけてきました。アクセスはいつもの通り地下鉄東西線「西18丁目駅」から徒歩で来館、鑑賞後は天気も良いのでランチのあと徒歩で自宅に戻りました。 

「特別展 よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―」のチラシ。

“正倉院宝物とは、奈良・東大寺の倉であった正倉院正倉に伝えられた約9000件に及ぶ品々です。その多くが奈良時代の作で、聖武天皇ゆかりの品をはじめ、調度品、楽器、遊戯具、武器・武具、文房具、仏具、文書、染織品など多彩な分野にわたります。中には、西域や唐からもたらされた国際色豊かな品々も含まれるなど、天平文化華やかなりし当時の東西交流もうかがい知ることができます。

 しかし、約1300年を経て今日にいたる正倉院宝物は、きわめて脆弱であるため、毎年秋に奈良で開催される「正倉院展」で一部が展覧される以外はほとんど公開されてきませんでした。明治時代に宝物の修理と一体の事業として始められた模造製作は、昭和47年(1972)から宮内庁正倉院事務所によって、宝物の材料や技法、構造の忠実な再現に重点をおいて本格的におこなわれるようになります。以来、人間国宝ら伝統技術保持者の熟練の技と最新の調査・研究成果との融合により、優れた作品が数多く生み出されてきました。これらは単なる模造ではなく、究極の伝統工芸品であると言えます。

 本展は、天皇陛下の御即位をはじめとする皇室の御慶事を記念し、これまでに製作された数百点におよぶ再現模造作品のなかから、選りすぐりの逸品を一堂に集めて公開するものです。再現された天平の美と技に触れていただくとともに、日本の伝統技術を継承することの意義も感じていただけることと思います。 ”

「北海道立近代美術館」への東側の入口。
エントランス前の安田侃氏作《無何有ⅢMUKAYUⅢ》。今まで何げなく前を通っていたのですが「安田侃彫刻美術館“アルテピアッツァ美唄”」の体育館に展示されていた同じ作品と気づきました。安田侃氏=白大理石作品との思い込みでした。失礼しました。


「特別展 よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―」の入口。中は大勢の鑑賞客で一杯でした。最終日前日で天気の良い日なので当然でしょうか。

展覧会では正倉院宝物の再現模造品を「第1章 楽器・伎楽」、「第2章 仏具・箱と几・儀式具」、「第3章 染織」、「第4章 鏡・調度・装身具」、「第5章 刀・武具」、「第6章 筆墨」に分け展示されています。それでは“究極の伝統工芸品”鑑賞です。

【第1章 楽器・伎楽】
第1章では正倉院宝物の中でも人気の高い「螺細紫檀五絃琵琶」をはじめとする楽器類や、大仏開眼会の際に演じられた伎楽の面や衣装などの再現模造品が展示されていました。
*会場は写真撮影禁止のため以下の写真はポストカードやネットからの拝借ものです。
 

《模造 螺鈿紫檀五絃琵琶》正倉院事務所蔵

展示品の原宝物は夜光貝の螺鈿(らでん)や玳瑁(たいまい/べっ甲)の華やかな装飾で人気があり正倉院を代表する宝物として知られる「螺鈿紫檀五絃琵琶」。聖武天皇の遺愛品で世界で唯一現存する五弦の琵琶だそうです。本作品は「平成の再現模造プロジェクト」で事前調査、材料の調達、試作品制作期間などを含め完成までに17年以上かかったという“もう一つの宝物”。華麗な装飾はもちろんのこと実際に演奏が可能な楽器を目指して再現されたそうです。こちらの作品もそうですが多くの作品の前でたくさんの人が感嘆して鑑賞していました。

【第2章 仏具・箱と几・儀式具】
第2章では、正倉院に伝来した年中行事に関わる儀式具や東大寺ゆかりの仏具や箱・几(き)の数々が展示されています。律令制と仏教による護国体制を背景につくられたもので多様な素材・技法が駆使された品々だそうです。


《模造 黄銅合子》正倉院事務所蔵

仏前で用いる香炉の模造で塔の形をした蓋のつまみ部分は、50枚以上の小さな座金を重ねた複雑な構造となっているそうです。

《佐波理加盤》正倉院事務所蔵 

十個の鋺を「入れ子状」に積み重ねた蓋つきの食器。朝鮮半島で作られ東大寺大仏(752 年開眼)の供え物に使われたともいわれているそうです。「佐波理」とは銅と錫の合金でロクロで表面を削り厚さ 1 ミリ以下の薄い器に仕上げており“再現に困難を極めてた”作品だとか。ちなみに「佐波理」とは朝鮮語「sabal(紫降=沙鉢―蓋付きの食器)」の日本語音表記だそうでインド製だとされる《螺鈿紫檀五絃琵琶》と同様に奈良時代の大陸との交流を感じさせる作品でした。

【第3章 染織】
第3章では、今から約5~6000年前に中国で始まり日本においても奈良時代には全国的に行われていたという養蚕により生まれた染織品を、平織りのほか複雑な文様を表した錦など多彩な織り技法による再現模造品が展示されていました。

《模造 紫地花文錦》正倉院事務所蔵

東大寺大仏開眼会で演じられた伎楽において笛吹きの奏者が着用した襪(しとうず - 足袋の1種)に使わた錦を再現したものとか。他の展示品で目を惹いたのが川島織物製の各地の税として納められた「庸布」(歴史で学んだ「租庸調」の一つ)の再現品。各地方特有の織りむらまで再現されており見応えがありました。

【第4章 鏡・調度・装身具】
第4章では、鏡をはじめ薫炉・厨子・双六局などの調度品や帯・刀子などの装身具の再現模造品が展示されていました。

《模造 黄金瑠璃鈿背十二稜鏡 背》正倉院事務所蔵

七宝で飾った鏡背をもつ鏡の再現模造品。七宝は細かく砕いた色ガラスの粉末を焼きつけたもの。正倉院宝物の中では唯一の七宝細工の鏡で華やかな宝相華文様を表しているそうです。

《模造 螺鈿玉帯箱》東京国立博物館蔵 

原宝物は「紺玉帯」を収める箱で希少な漆地螺鈿のひとつ。箱の内側の色鮮やかな錦も原宝物と同じ織り方で再現されているそうです。

【第5章 刀・武具】
第5章では正倉院に伝わる古代の武器・武具の再現模造品が展示されています。宝物の55口の刀には装飾を凝らした儀仗用の大刀から実用本位の大刀もあるそうです、元々あった刀類の多くが奈良時代以降の争乱で武器として持ち出されて散逸したそうです。持ち出した人たちは「切れるものなら何でも良かった」のでしょう。

《模造 金銀鈿荘唐大刀》正倉院事務所蔵

原宝物は聖武天皇の礼装用の大刀と考えられているそうで、要所に配した透彫の金具には水晶や色ガラス玉を用いた華麗な装飾がほどこされています。

【第6章 筆墨】
正倉院文書は東大寺写経所が伝えた帳簿群が中心ですが他で不要になった紙の裏を使うケースが多かったことから多種多様な文書が残ったそうです。第6章の展示品はゼラチンを使用した写真製版としては最も古い「多色コロタイプ印刷」により精緻な模造品となっているそうです。


《模造 正倉院古文書正集 第38巻〔筑前国嶋郡川辺里戸籍〕(部分)》国立歴史民俗博物館製作

最古の戸籍簿の一つで文書の裏面や紙の継ぎかた、墨の微妙な濃淡までも忠実に伝えるているそうです。偽造防止用の押印がリアルでした。以上で鑑賞終了です。


人気のロビーの関連グッズの販売コーナー。気に入った作品のポストカードを購入しました。

前庭の樹木は落葉が目立つとは言え紅葉でした。
美術館建物の柱に絡まる紅葉も見事でした。次の企画展は11月17日(水)からのようでした。また来る頃は積雪の庭でしょうか。

本日も充実の美術鑑賞でした。閉幕直前ということもあるのでしょうが多くの人が正倉院宝物の再現模造品に見入っていました。そして案内にある通りの最新の科学技術と熟練の匠の技が融合した“究極の工芸品”に感嘆していました。製作者の中には故人も多く含まれていたので現在では再現が不可能なものもあるのかも知れません。そんな貴重な品も多い見応えのある展覧会でした。ありがとうございました。

「【特別展】御大典記念 特別展 よみがえる正倉院宝物 ―再現模造にみる天平の技―」
会期 2021.09.15(水) - 2021.11.07(日)
観覧料 一般 1,600(1,400)円、高大生 800(600)円、中学生 600(400)円、小学生以下無料(要保護者同伴) ※( )内は以下の割引料金です。
・前売料金 ・10名以上の団体料金
・リピーター割引料金(当館または他の道立美術館で開催した特別展の観覧半券をご提示の場合。1枚につきお一人様1回限り有効。有効期限は半券に記載。)

「北海道立近代美術館」
札幌市中央区北1条西17丁目
[電話番号] 011-644-6881
[開館時間] 9:30 - 17:00(入場は16:30まで)
[休館日] 月曜日(月曜日が祝日または振替休日のときは開館、翌火曜日は休館)/年末年始(12月29日~1月3日)/
https://artmuseum.pref.hokkaido.lg.jp/knb/
(2021.11.6訪問)

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