民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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相槌(あいづち)について 藤田 浩子

2013年01月04日 00時13分12秒 | 民話(語り)について
 相槌(あいづち)  「かたれ やまんば」第一集 藤田 浩子の語り 1996年

 相槌というのは、もともとは鍛冶屋さんの言葉です。
鍛冶屋の親方が真っ赤に焼けた鉄を台にのせ、
槌で「トン」と打てば、向こう側にいる弟子が「チン」と相槌を打つ。
「カン」と打てばまた「チン」と打つ。
「トン」「チン」「カン」「チン」と調子よく叩く。
その、弟子の持つ槌が相槌、または向こう槌です。

 語るときも同じで、語り手が「じさまは山さ芝刈りに」と言えば、
聞き手が「ふーん」とか「それで」とかあいづちを打ちます。
「ばさまは川さ洗濯に」と言えば、またあいづちを打ちます。
調子よくあいづちを打ってくれれば、語り手も調子よく語れたでしょう。

 私に昔話を聞かせてくださった方によれば、
糸を撚りながら巻き取りながらばさまの語りを聞くときは、

「むかぁしなぁ まずあったぁと」で一回転、
「ほおで?」と聞き手はそこであいづちを打ち、
「じさまとばさまが あったぁと」で一回転、
「ほおで?」と聞き手はまたそこであいづち。

 ゆっくりゆっくり糸巻き車を回しながら、ゆっくりゆっくり語ってくれたそうで、
聞き手もまた一回転ごとにあいづちを打ちながら、ゆっくりゆっくり聞いたのでしょう。