民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「曽根崎心中」 道行文

2012年11月03日 00時32分27秒 | 名文(規範)
 この世のなごり 夜もなごり、死にに行く身を たとうれば、
あだしが原の 道の霜(しも)、一足ずつに 消えて行く、夢の夢こそ あわれなれ。

 あれ 数(かぞ)うれば 暁の、七つの時が 六つ鳴りて、残る一つが 今生(こんじょう)の、
鐘の響きの 聞き納め、寂滅為楽(じゃくめつ いらく)と 響くなり。

 鐘ばかりかは 草も木も、空もなごりと 見上ぐれば、雲心なき 水の音、
北斗はさえて 影うつる、星の妹背(いもせ)の 天の川。

 梅田の橋を かささぎの、橋とちぎりて いつまでも、我とそなたは 婦夫星(めおとぼし)、
かならず添うと すがり寄り、二人がなかに 降るなみだ、川の水(み)かさも 増(ま)さるべし。

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