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「夜這いの民俗学」 その2 赤松 啓介

2016年08月02日 00時09分49秒 | 民話の背景(民俗)
 「夜這いの民俗学」 その2 赤松 啓介 明石書店 1994年

 自分たちの倫理観や、政治思想に反するものの存在を否定するなら、そうした現実を抹殺するしかない。農政官僚だった柳田が夜這いをはじめとする性習俗を無視したのも、彼の倫理観、政治思想がその実在を欲しなかったからであろう。
 しかし、僕の基本的な立場はあるものをあるがままに見ようではないかということだった。そしてあるがままに見れば見るほど、現実は実にさまざま、多様なのであった。

 そもそも柳田の方法というのは、全国からいろいろな材料を集め、自分に都合のいいように組み合わせるといったものである。夜這い一つとってみても、隣村同士でも多様なのに、あちこちの県のムラから広範囲に類似のネタを集めて一つのことを語ろうとする。僕に言わせれば、アホでもできるということになる。

 僕が田舎に帰ったころ、柳田は山村調査を実施しているが、採集手帳を読むと、小作とか地主とかいった現実に存在する言葉が全くない。それでいて彼は「常民」というコンセプトを持ち出してくるのだから、柳田さんはもうあかんわ、ということになる。それは、戦前までの政府が、労働者を資本家も含めて勤労者、地主も小作も日雇いも含めて営農者と呼んだように不自然な造語にしかすぎない。

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