歯科技工管理学研究

歯科技工管理学研究ブログ
歯科技工士・岩澤 毅

第1回歯科技工士の養成・確保に関する検討会 議事録

2018年05月15日 | 判例・通知・他
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212944.html


医政局歯科保健課


○日時

平成30年5月15日(火)15:00~17:00


○場所

厚生労働省共用第8会議室
(中央合同庁舎第5号館20階)
東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議題


○歯科技工士の養成・確保に関する事項について

○議事


○赤川座長 どうもありがとうございました。歯科技工士を取り巻く現状、問題点、あるいは論点を多彩な視点から整理をいただきました。資料 3 では、制度改正というか、いい形で変わったところを説明いただきました。そういう中で、この検討会のテーマであります歯科技工士の養成と確保というこれら 2 つの大きく違うところ、あるいは場合によっては重なってもいますが、いろいろな視点や観点から検討を行う必要があると考えます。今日は第 1 回ですので、養成と確保、これら両方のテーマに関して、幅広く構成員の皆様の御意見をいただき、それらを整理して次回以降どのような形で進めるかを考えて行きたいと思います。従いまして、先ほどの資料 2 、 3 に対する御質問でも結構ですし、資料を踏まえて、あるいは現状で構成員の皆様がお持ちのいろいろな経験や直面している課題等について、自由な御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。



 どうぞ遠慮なさらずに、第 1 回ですから、自由に御発言をお願いいたします。まず、養成ということになると、当然養成校のお話が出てきますが、尾崎先生、学校が抱える問題、あるいは修業年限の延長などの論点もありましたが、協議会としていかがでしょうか。



○尾崎構成員 資料 2 のスライドの 15 ページにありましたように、歯科技工士養成施設に入学してくださる方々の入学者数が激減しております。一番多かった平成 7 、 8 、年度と比較しますと、平成 29 年度は 3 分の 1 以下になっているのが現状です。当然のことながら卒業者数も減るということになります。その結果、多くの歯科技工所、歯科診療所から各養成施設には求人を頂いているわけですが、それにお応えすることはできないという状況です。すなわち、歯科技工士の需要は多いのだけれども、供給がそれに追い付かないのが現状ではないかと考えております。



 では、入学者を増やせば良いという話になりますが、各養成施設ともに入学者を増やすため最大限の努力をしているにもかかわらず、残念なことに歯科技工士を希望していただける若い方々が、ここにきて非常に激減しているのが現状ではないかと考えております。以上です。



○赤川座長 なるほど。各学校や養成所でいろいろと努力されているのだけれども、なかなか入学者が増えないと。すなわち、定員をかなり割っているということですか。学校の数も 3 分の 1 に減ってきて、各学校における入学者も減っていて、定員が十分確保されていないと。



○尾崎構成員 はい。いわゆる定員に対する充足率も 6 割を切っていて、 5 割少ししかないのが現状です。



○赤川座長 わかりました。個々の学校では、そのような状況に対するいろいろな対応をされ、きっとホームページの充実、オープンキャンパスの開催、高校訪問など、いろいろと努力をなさっていることでしょう。



○尾崎構成員 はい。



○赤川座長 協議会として、何か全体的な取組などはされていらっしゃるのでしょうか。



○尾崎構成員 協議会全体としては、各養成施設と情報交換をきちんとして、どのような方法を取ることによって、入学者、入学を希望してくださる方が増えるのかといったようなディスカッションをするとともにホームページ等に動画を掲載する等を行っています。また、歯科医師会様では 8020 テレビに「歯科技工士のお仕事」という動画を載せていただいております。そういうものも活用しながら、全技協全体としても入学者確保の努力を行い、また、各養成施設では高校訪問をするといった努力をしているのが現状です。



○赤川座長 わかりました。ほかの構成員の方、いかがでしょうか。



○高橋構成員 今尾崎先生がおっしゃったように、やはりどうしても少ないと。そして、その大きな理由が知られていないことだと思うのです。私ども業界としては、それに対してどういうサポートができるかですが、 1 つは毎年、あるいは 2 年に 1 回、全国各地でオフィシャルな歯科商工協会なりが主催する展示会があるわけです。そこに、高校生を呼ぶという手段を取ってみたのです。とにかく何でもいいから人が集まるから来てくれという、学校単位でお願いをしました。前回横浜でやったときは、確かに何人か来ることは来るのですが、来たところで、高校 3 年生の何も分からない人が、歯科とはこういうものなのだよと。ユニットから何からいろいろ機械を見て、細々した材料を見ていくのですが、やはり基本がないので、何か行ってきたら疲れたんだよというぐらいで終わってしまうという。残念ながら、こちらへどうやって引き寄せたらいいかということをやってみたのですが、余りいい結果ではなかったように思います。



○赤川座長  なかなか難しいですね。



○桑名構成員 それこそ平成の最初の頃、 3,000 人ぐらい歯科技工士が卒業、入学されている当時は、 1.5 倍から 2 倍ぐらいの希望者があったわけです。そのときも認知度はどれだけあったのかというと、恐らく今と変わらないぐらいの認知度ぐらいしかなかったのではないかと想像はできるのです。そうすると、知っている人はある程度はいるのだけれども、しかしそこからなかなか希望されないというのもあるのかなという気がします。特に平成 15 年度以降から軒並み希望者が減ってきているというのは、何か違うところに原因があるのかなと。もちろん子供の数が減ってきているというのはあるとは思うのですが、それ以上に何かしら歯科技工に対する魅力が減ってきているのかなという思いがあるとともに、学校の数も減ってきています。平成 10 年当時は、歯科技工士の数が多いという話が多分あったと思いますが、その頃から入学者数も少しずつ減ってきているから閉校しないといけないという経営的な問題で減ってきているのか、また平成 21 、 22 年には歯科衛生士を 3 年制に変えたときに、結構教室が足りなくなってしまって、歯科衛生士を 3 年制にするための教室を確保するために、歯科技工士を閉校したといった所もあると思うのです。そのようなことで、全国の 5 、 6 校はなくなっているとは思います。三重県も、今は歯科技工士学校はないのです。当時、衛生士学校を 3 年制にするために、技工士学校を閉校したという経緯があります。ですので、技工士の認知度が平成の頭と今とでそれほど変わっているのかなというのは疑問に思います。



 それから、学校はアピールなどのできる限りのことはやっていると思います。それでももっと足りなくて、では何をすればいいのかと言ったり、もう少し制度自身を何か変えていかないと難しいのかなという思いはあります。



○ 赤川座長 認知度という点で言えば、ちょうど今週の週刊ダイヤモンドに



「20年後も医学部・医者で食えるのか?医歯薬看の新序列」という特集が組まれていて、その中に医療職が全部書いてあるのですが、なぜか歯科技工士が書かれていないのです。看護師や臨床検査技師、もちろん歯科衛生士も書かれてあるのに、歯科技工士は書かれていない。こういうことからしても、認知度がまだ十分ではないのかなと、読んでいて思いました。ほかに御意見はいかがでしょうか。どのようなことでも結構です。今は養成のテーマの問題点がだんだんとはっきりしてきたように思います。



○杉岡構成員 今、桑名先生がおっしゃったとおりだと思います。私は、今は日本歯科技工士会の代表を務めておりますが、私が歯科技工士を志した理由は非常に不純で、受験に失敗して、たまたま母親が、こういう仕事があり、当時はすごく良い仕事だということで、「どう、そういう仕事を望んでみたら」と言われ、北海道から一番近い岩手医大付属の技工士学校に行きました。その当時は全く歯科技工士などという職業も知りませんでしたし、歯が何本あるかということも知らないような人間だったのですが、たまたまその学校に行ったところ、自分の人生が 180 度変わるぐらい良い仕事に巡り合えて、今は本当に歯科技工士になってよかったと思っています。



 縁があって、たまたまそこで教員として 7 年残って、約 200 名の歯科技工士の卵を育てましたが、今でもその多くの人たちといろいろな連絡を取り合っています。やはり、どの世界もそうだと思いますが、今を生きている者は、その世界で次の世代が少しでも良い環境で生きていただきたいと思うのが、皆さん、人としての想いだと思います。私も次の世代の歯科技工士が少しでも良い環境で、歯科技工士になって本当によかったなと、思ってもらいたいと、今日も検討会に臨んでおります。



 今の歯科技工士が少なくなっているという話ですが、実は平成 28 年の歯科医師と歯科技工士の国家試験の合格者の比率を見てみますと、歯科医師 1 人に対して歯科技工士は 0.49 人なのです。これは余り変わっている数字ではなくて、いろいろな検討会の数字でも歯科医師 3 人に対して歯科技工士 1 名ぐらいがいいのだろう、あるいは歯科医師 2.5 名ぐらいがいいのだろうなという時代がありました。それからすると、決して今の卒業数は少ないわけではないのです。



 一番大事なことは、 2 枚目のスライドの 13 ページにありますように、免許取得者が 12 万人近くいるのに、その 3 割しか歯科技工士として働いていない。つまり、先ほど私が歯科技工士を勧められたとき、母は歯科技工士という職業はすごく良い仕事だと皆が言っていると。だから歯科技工士に挑戦してみたらと言われたのですが、今はそれがなかなか社会に評価されていないということが大きな理由だと思っております。その結果が、正にこの 13 ページの資料だと思います。そういうことを総合的に考えてお話したほうがいいのかなと思っております。



○赤川座長 歯科技工士の免許を持っている方が 11 万 8,000 人もいるにもかかわらず、実際には 3 万 4,000 人、3割しか歯科技工士として仕事をしていないと。



○杉岡構成員 ただ、これは課長補佐に補足していただければ良いのですが、免許を取っても亡くなったからといって全員が返納しているわけではないので、免許を持っている人はこれだけいるのですが、実際に働ける人は果たしてこれだけいるかというと、そうとは限らないと思います。



○赤川座長 そうですか。わかりました。



○三井構成員 我々は歯科医院側で雇用する側なのですが、私も開業して 30 年ぐらいですし、うちにも常勤の歯科技工士の先生がおります。この 30 年の時代の経過を見ていますと、やはり昔はむし歯というものが国民病であったと。削って詰めて、削って被せてという確率の治療頻度がものすごく高かったのです。ですから、今、杉岡先生からも話がありましたが、歯科医師何名に技工士という、 30 年前は最も数がいった時代。ですから、そのような意味で、技工士の先生方皆さんの勤務環境が非常に悪かったのです。うちの医院でも、診療所は 8 時に終わりますが、技工室は 9 時まで開いているということだったわけです。昨今のうちの診療所の、こういう会議に出てきて仕事をさぼっているというのも非常にあるのかもしれませんが、私は 7 時まで仕事をしていますが、うちの技工士は定刻の 6 時に退室するというような形で、大分そこの部分は技工士さんの総数は減ってきているかもしれません。なぜ技工士さんの離職率が高かったかといいますと、やはりそのような職場環境や長時間労働などがものすごくありました。しかし、今は全体的にはその部分は改善されてきているのではないかと思いますが、一層の改善は必要であると。



 それから先ほどから出ていますように、技工士といわれる職業の認知度の問題です。うちの技工士さんに聞いても、なぜ技工士学校へ行ったのですかというところでは、やはり、おじ様が歯科医師であって、「いいよ」というような、内々の推薦があって、昔は入ってきたというところがあるかなということです。現在歯科医師会では、地域医療の介護総合確保基金を使われて、各都道府県で衛生士や技工士がどのような職種であるかというスポットのコマーシャルを、テレビで流されている所もあるようです。それから、 8020 は今年が 30 周年になります。歯科医師会としては、衛生士、技工士にスポットを当てた映画の作成をしまして、今の若い方は、テレビよりも映画や DVD のようなもののほうが媒体として非常に影響力が大きいということで、歯科医師会としては、職を広めるということで、今年はそのような活動を計画しているところです。以上です。



○赤川座長 ありがとうございました。歯科医師会でも、いろいろなサポート事業をしているということですね。ほかにいかがですか。



○傳寶構成員 私は、この 7 割に入っている一人歯科技工士のオーナーです。今、県の技工士会の役員もさせていただいていて、現場の学生とお会いすることもありますし、教員の先生方とお話することもありますし、現場の若い技工士さんとお話する機会も多いのです。今、学校の先生からよく言われるのは、高校に技工士学校の案内に行こうとしても、高校のほうでことわられることが多いと、もう技工士学校は結構ですと言われることがあると。それがどうしてかというと、今は少子化になって、親御さんがお子さんの就職先や進路に対してかなり意見を述べることが多いと思うのです。親御さんが歯科技工士を検索すると、明らかにもう悪い評判しか歯科技工士のことでは上がってこないのです。長時間労働だとか、給料が低いということしか上がってこないので、まず親御さんが歯科技工士になることをお子さんに勧めないのです。



 その 1 つとして表れているのは、歯科技工所の 2 代目、お子さんがもうラボを継がないのです。別の職種に行かれるラボの 2 代目さんが多いのです。昔は家内工業だったこともあり、お父さんの技工所をそのまま継がれるお子様が多かったのですが、今は少し大きなラボになってもなかなかお子さんが継ぐというところは。もちろん継がれる方もいらっしゃるのですが、労働環境などを見ると、なかなか継ごうという気にならないということ自体が、歯科技工に対しての、やりがいはもちろんあって、私もやりがいがあって仕事をしているのですが、客観的に見たときに、やりがいだけで暮らしていけるのかというと、またそれは別の話なのです。そういうことで、今は SNS で何でも調べられるので、そういう評判があって歯科技工士になろうとは思わないという意見も聞きますし、実際にそうなのかなと思っています。



○赤川座長 そうですか。深刻な問題を提起していただきました。



○陸構請員 コアデンタルの陸です。今、傳寶さんが言われましたように、その前の三井先生のお話では非常に環境がよくなっているということでしたが、現場を見ると、まだまだ残業の問題も含めて、有休の取り方にしても、非常に厳しい環境にあるのではないか。多くは、そういう環境にあるのではないかと感じます。それから、先ほどの学校からの学生が少なくなったのは、もちろん頭数もそうなのですが、今日も学校の先生が来られているのに非常に言いにくいのですが、実際に出てくる学生の質もかなり低下しているような気がします。



 それはどういうところかというと、学力やそういう部分ではなくて、むしろ家庭の躾、あるいは自分たちが教えるまでもなく、徒弟制度というか、 1 つ先輩が教えたりという職人的なものがたくさん残っていますので、そういう技術的なものを教えていかなければいけないという部分がたくさんあるのです。やはり叱るという行為が出てくると、今の若い人は叱るということに対して非常に抵抗があって、こんなことを言ってはあれですが、すぐに心が折れてしまったり鬱の状況になったりする人が、私どもの社員の中でも非常に増加しております。そういうところをもう少し改善していかないと、逆に教育に時間が掛かってしまう。今までのように、ちょっと見て覚えろというようなことを口走っていると、もう辞めていくという環境になっていますので、その辺りも改善していかなければいけないところではないかと感じています。



○赤川座長 その改善は歯科技工士学校の教育の中で、もう少ししっかりやってほしいということですか。



○陸構成員 そういうところがどういう形で教育できるかは分からないのですが、私どもももちろん新人教育の中に、そういうものもできるだけ組み入れるようにはしています。



○赤川座長 わかりました。ほかにはいかがですか。



○秋野構成員 札幌市の秋野です。私は、今日は地方行政の立場で参加させていただいております。北海道でも、近年、歯科技工士の養成校が 2 つ閉校になりました。 1 つは、北海道内の地方都市にあった養成校ですが、学生が集めることが難しくなって閉校になりました。もう 1 つは、北海道立だったのですが、耳の聞こえない方が手に職をつけるための学校でしたが、こちらも人が集まらなくなって閉校となりました。なかなか入学志願者が集められなくなっているという状況で、先ほどお話があったように歯科技工士の職というか、ひょっとしたら歯科医療全体かもしれませんが、この入学者数の推移のグラフを見ていると歯科医師が過剰になって歯科医療のイメージが世論的に報道等で否定的に言われるようになったのと少し一致をしているのかなと。本来、歯科技工士さんは、私のイメージで言えば、先ほど杉岡会長がおっしゃったように、手に職をつけるという意味合いが非常に強くあって、公務員と同じように不況時には非常に強い職であったはずなのですが、現在はそうなっていないところが難しい恒常的な問題なのかなと思います。とはいえ、今のこの日本の超高齢社会の現状を考えると、日本は人口は減っていきますが、高齢者の数はそれほど減らないので、高齢者の歯の数も多く残るとなれば、歯科の補てつ物、歯科技工というものの重要性は変わることがないのです。私の地元の歯科医療関係者も、将来の歯科技工士不足を非常に心配している方も多いですし、行政的な側面からも歯科医療の適切な市民、県民、道民の歯科医療の確保というのは非常に重要ですから、しっかりと関わっていかなければいけないと思っております。特効薬的な、抜本的な解決方法はなかなか難しいとは思うのですが、それでも、しっかり小さなことでも、できるところからやっていかなければならないのではないかと思います。



○赤川座長 わかりました。北海道立でも閉鎖されたのですね。



○三井構成員 今、卒業されてくる若い技工士さんの質の問題のお話がありましたが、私たちも小学校などに学校医として赴きますが、教育の現場にはいろいろなモンスターがおりますから、本当に難しいのです。それと、ゆとり世代の問題です。我々の医院でも、従業員を雇用します。ちょっと怒ると、次の日に辞めます。もう、本当に辛抱ができないのです。ですから、それは学校教育なのかと。うちの小学校などでもよく協議になるのですが、学校教育ではなしに、もっとベースの問題で、昔は大家族制であったり、おじいちゃん、おばあちゃんがいたりとか、いろいろな所でそういうものがありました。だから、昔がよかったということだけではないのですが、今はなかなか学校でそこまで求めると非常に厳しいのです。私は京都府歯科医師会ですから、京都府歯科医師会も技工士学校を頑張って続けているわけですが、やはりずっと定員に満たない状態です。その分を、歯科医師会の会費から補助を持ってきて、何とか学校存続ということで、今の京都の会長も絶対に学校をやめることはないと。何があっても続けるのだということでやっていただいています。そうすると、定員割れしているのに、そこまで子供たちを選んで入学させることもできないという問題もあります。とことんの子は、やはり入学をお断りする子もいますし、途中で退学させるお子さんもいます。しかし、最低限のレベルがどんどん下がっているという現状もあります。ですから、学校は学校で努力もされている部分はあるかなとは思うのです。



 これは、技工士問題やいろいろな問題で話しているのですが、話をしている間に養成校がどんどん潰れるのが最大の。もしも技工士という職種が認知されるようになっても、今度は行く学校がないということになっては駄目なのです。ですから、ここを協議する中で、いかに養成校を守っていくかというところも非常に大事なポイントではないかと思いますので、その辺りの部分も協議していただければ有り難いです。



○赤川座長 わかりました。大変重要な点を指摘していただきました。ほかの構成員の方、あるいは何か言い足りないことがある構成員の方はいらっしゃいますか。



○桑名構成員 資料の 11 ページを見ていただけますか。歯科技工士の就業者数が、ずっと 3 万 5,000 人前後で微減しているとは思います。恐らく、日本で今必要な歯科技工士の数がそれぐらいなので、例えば何かがあって辞めたところで、誰かしらがその仕事を増やしたりしながらでも、 3 万 5,000 人いればいいというような、技工物自体の数はどうなのでしょうか。減ってきているのでしょうか。そんなに差はないのでしょうか。



○赤川座長 補てつ物の数、あるいは技工物の数でしょうか。



○和田歯科保健課課長補佐 義歯の需要自体は、特に総義歯が顕著に減少していることが、社会医療診療行為別統計で明らかになっております。ただ、補てつ物全体の需要については、先ほど御発言があったように高齢者の方が増えてきていて、歯の残っている方も増えてきているので、総量自体は余り変化がないと考えております、



○桑名構成員 そういうものが効率化されてきて、技工士さんの仕事量を簡便にすることはこれからできるのかもしれないのですが、それでもやはりこれぐらいの数をキープしていこうと思うと、今のような毎年 1,000 人は最低限ほしいというのであれば、三井先生が言われるように学校の確保が必要になってきて、なくなってしまえば困りますし、それこそ今は定員が 5 割以下になってきている学校はもうそろそろ閉めないとという所には、ある意味これは地域の人たちのインフラですので、そのときは公的な資金などを使ってでも、やはり残していかないといけないのかなと。三重県は本当になくなってしまいますから、明らかに 30 年後に技工士がいなくなってしまう県に今、私はいますので、どうなっていくのかなと。流通もよくなって他県にというようなことも可能なのですが、でもやはり見えるところでできるに越したことはないなと思って、心配ではあります。



○赤川座長 そうですね。一方で今盛んに言われている AI 、この AI が進んで、あと 20 年後には社会が、あるいは産業が大きく変わると言われている時代に、歯科技工物の作り方だとか、いろいろなことも大幅に変わることになるでしょう。そうすると、また若い人たちが参入してくるのではないかという気もいたします。



○高橋構成員 歯科技工士というのは、学校を出て最大限 3 年辛抱したら非常に良い職業だと感じると思うのです。その人の性格がもともと向いていなければそれはどうしようもないですけれども。例えば、それは経済的な形を見ても、 3 年たった後に同世代の通常の仕事に就いた人と比べたらはるかにそれから上には上がると思うのです。今の技工士の給与というか、所得という形でいけばです。ある程度になった人は、言葉は変なのですけれども、ラボの社長と飲んだときに、「いやー BM もベンツも飽きたから、次は何を買おうか」という話が出ました。半分冗談で半分本気なのです。



 そのように、あるところまで行ってしまえば経済的には非常に良いのです。その辺がもう少し理解できればと言っても、それは確かに 20 代の学生では難しいとは思うのです。その辺を学校なりで、大変だけれども「こういう良い面もあるよ」ということを少しアピールしたらどうかと。



○赤川座長 それは、何かデータみたいなものはあるのですか。例えば、大規模な歯科技工所に勤める歯科技工士の。     給与所得とかの。



○高橋構成員 例えば、水準的なものは出せます。給与でこのぐらいの所得があると。



○赤川座長 そういうデータがあったら、高橋構成員の言われていることが見えますよね。一方で、お話の中からは、 3 年の間に辞める人がいる、あるいは多い、ということですか。



○高橋構成員 そうだと思います。



○赤川座長 もし辞めたら、もう歯科技工士はやらないのですか。



○高橋構成員 そうです。先ほどどなたかがおっしゃっていましたけれども、親が技工士でも、息子は絶対に継がないと。悪いところだけを見てしまうのです。親がやっていて、更に継いだ人というのは伸びていくと思うのです。



○赤川座長 なるほど。



○和田歯科保健課課長補佐 高橋構成員からお話があった、いわゆる離職率の問題ですが、先ほどのスライドの 23 枚目で御説明いたしましたが、歯科技工士の免許取得者の就業状況に関する研究を実施しており、今年度末に取りまとめる予定になっております。実際に歯科技工士として働いていない方が、他の仕事に就いているのか、就いていないのか実態がよく分からないものですから、研究班の結果なども少し活用させていただいて、必要に応じてこの検討会で情報提供させていただければと思います。



○赤川座長 わかりました。それはありがたいことです。



○三井構成員 そういうデータを捉えるときに、歯科医師ももちろんなのですけれども、今は歯科大学でも男女比が、ある大学では 5 割以上を女子学生が占めているという状況です。京都の技工士学校でも、入学者に女子が多いのです。そうすると、うちでも経験があるのですけれども、結婚すると離職される方があるので、男女比というようなところ。だから、ライフステージでどのように変わっていくかというデータも出していただけたらと思います。



○和田歯科保健課課長補佐 三井構成員からお話があった、ライフイベントに遭遇して離職される方ももちろんいると思います。それ以外の事情で離職されている方もいるかもしれません。両方の要素について分析したほうがよろしいのかと思います。



○赤川座長 わかりました。 23 ページの上段に書かれているもう 1 つの厚生労働科学研究が進んでいて、自分が代表者をさせていただいています。今データをまとめつつあって、まだ分析が十分でないので、ここで先走って言うのも躊躇しますが、少しだけお話します。1ヶ月の残業時間をとりだして分析してみると、歯科医院で働いている歯科技工士の時間は、歯科技工所で働く歯科技工士の時間より有意に短い。こういう結果がわかっています。



 それから、職務内容について持っている意識を聞いています。「自分は今の仕事に興味を持っている」とか、「誇らしく思う」という項目では、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」が多く、結構良いのです。ところが、「社会の人々は私の仕事を尊敬するに値する仕事だと思っている」という項目では、歯科医院勤務の歯科技工士では「そう思わない」「どちらかといえばそう思わない」が 4 割ですが、歯科技工所に勤める歯科技工士では 5 割以上です。すなわち、ここが 1 つのポイントだと思うのです。恐らく職業的な問題があるのかなと。もう 1 つ、「私は仕事をしていて着実な人生設計がたてられる」という項目では、「そう思わない」「どちらかといえばそう思わない」が歯科医院勤務では3割ですが、歯科技工所勤務では6割です。



 まだまだ分析途中ですが、このように、少しずつ問題が見えているようです。先ほど経済的には 3 年たったら、と言われたのですが、どうやらそんなことでもないようにも思えます。これらのデータがすべて分析・整理できたら、みなさまに情報提供をいたします。こういうデータが出つつある、ということを少し知っておいていただければ、と思います。



○小畑構成員 教育というか学生の確保の部分については、先ほどもお話がありましたように、学生の質が下がっているなどという人は結構多くいます。これは技工士学校だけではなくて、衛生士学校も歯学部も全てそうだと思うのです。ちょっと何か言ったら辞めてしまうとか、すぐに文句を言うとか、すぐに訴えるとか、どこかへ駆け込むというのは、技工士さんだけではなくて、今はドクターもすごく多くなってきているのが現状です。そういう現状だということを把握した上でどうするかということを考えていかなければいけないのかというところが 1 つあります。



 技工所さんも技工士会さんもいろいろ頑張られていて、どうやって学生を確保するのかというのは、本当に様々やっていただいていると思うのです。先ほどもお話がありましたように、親御さんが勧めないとか、高校の進路指導の先生が「絶対に行くな」と言う。まず、そこの段階というのがものすごく出てきているのかと思います。選択肢が、昔はそういうところまではなかったのですけれども、「技工士学校だけは行くな」という進路指導の先生もいると聞いています。



 それでは、なぜそのように言うのかというところに立ち返っていくと、もちろん経済的に安定してやり甲斐を感じてやっている技工士さんも多いと思うのです。赤川先生が言われたように、別の研究のデータにもありましたし、今も少しコメントにもありました。歯科医院に勤めている方や大手の技工所に勤めている方もおりますが、実際には大半が一人技工所なわけです。技工士学校を卒業した後のビジョンを考えたときに、なかなか難しいと感じる人がすごくいるのではないか。歯科医師とか衛生士であれば、勤務する箱があって、そこに勤務して何かする、そこから考えられる、修行を積んでいくというのはできるかもしれません。技工士さんの場合、一人技工所、二人技工所というのが大半で 7 、 8 割ということを考えると、本人のビジョンもなかなか進まない。



 実際に技工士として登録というか、事業所としてあっても、事実上何も動いていない方もたくさんいる。今回の厚労科研のアンケート調査のときにも、宛先不明で戻ってきたのがかなりの数になりました。私の知合いの技工士さんも勤務しているときには良かったのですけれども、独立してみたらなかなか難しい。これは技工士さんだけの問題ではなくて、先生との関わりで、先生側の問題とかいろいろあるのですけれども、それでなかなか経営が難しくなって破産したりという例も実際にあります。 1 つ何かやれば特効薬という話ではないですけれども、やはりそういう多角的なところで考えていかなければいけないのかというところはすごく感じています。



○ 赤川座長 なるほど、多角的なところで考える、ということですね。



○傳寶構成員 先ほどの先生のデータにあったように、辞めていく若い技工士さんたちに、「技工が嫌になったのか」と理由を聞くと、皆、「技工士は嫌にはなっていない」と答えるのです。技工自体は辞めたくはないのだけれども、将来的ビジョンが特に女性にはあります。大手のラボでしたら産休制度が大分整ってきた所もありますが、ほとんどがないのです。辞めた後に戻ってこられるのか、技術を維持していく、更に進歩していかなければいけないということで、戻ることに対してかなり不安を抱いている。



 そのことからすると、今は CAD/CAM があるので戻りやすい。 CAD オペとして戻ることもできますし、家で実際にラボから提供されたパソコンを家に置いて、産休中も休みを取らないで、家で CAD のデザインをして、ラボの仕事を続けるという就業方法をされている所も出てきています。ラボのほうでもいろいろ考えてやってきてはいると思うのです。救いなのは、技工が嫌いで辞めたわけではないというのが多くて、「それではどうして」と聞くと、ラボの場合は少人数なので 1 番は「人間関係」というのが多いのです。大人数だといろいろな人がいるからまだいいのですけれども、どうしても小規模になると人間関係が一度崩れてしまうと駄目というのがあります。



 そこで一番改善できるとすれば、認知度が低いというのがありました。前に美容師さんとお話をしたことがあるのですが、大体同じなのです。仕事が終わった後に練習して、給料体制も、美容師と歯科技工士は割と似ていると思うのです。最初の頃は低くて、丁稚ではないですけれども。何が一番違うのかというと、技工士は、私のように自費の仕事をしていれば患者さんに会いますけれども、保険の仕事をしているとまず患者さんに会うことはない。それで、自分がやったことに対するお褒めの言葉というものがないので、やり甲斐を今一つ感じづらい。ただ、美容師さんはお客さんを相手にするので、うまくできたらうまくできただけ褒めてもらえる。歯科技工士はそれがほぼないに等しいのです。



 一人ラボが多いというのは、 1 つその理由もあると思うのです。やった分だけの見返りが自分にとって、お金もですけれども気持的なものでも、先生とのコミュニケーション、信頼関係を築くこともできるというのもあって、そこで一人ラボがどうしても多くなっていくというのは、そこが 1 つ原因ではあるのかと思うのです。それなので、若い技工士さんが 3 年以内に辞めてしまうというのは、特にその 3 年ぐらいの間は絶対に歯科医院に行くことがない。今の技工所は行かせることもあって、「セットの立会いを見させてもらいなさい」と。そういうことをもう少し業務の中でしていったりする。大体歯科技工士学校は、歯科衛生士学校と一緒だったりするのが多いので、歯科技工士学校と歯科衛生士学校でコミュニケーションをもうちょっと取ったりして、ロールプレイングなどができたりすると、またちょっと変わってくるのかとは思います。



○赤川座長 そうですね。本当は患者さんの前にいるのが一番いいのですが、例えばいろいろな形で ICT を使えば、診療室と技工所を結んでと、いうような形もできるかもしれないのです。少し頭を柔らかくすれば、何かいろいろとできそうな気はしますが。



○傳寶構成員 それなので、資料の 21 ページのようなカードがあると、少しは顔が見えるようにはなる。そうすると、技術的にもしっかりしなければという気持ちにもなりますし、いいのかなと思います。


https://blog.goo.ne.jp/akisigi/e/3772f101939305e96da825dcad91c1b6
平成29年度 学術座談会 CAD/CAM技術を応用した有床義歯製作の方向

https://blog.goo.ne.jp/akisigi/e/d423a2fb75ad7add0b147611572b60ff
投稿/寄稿 歯学部留年と国試浪人の解消法 匿名 歯科技工士

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