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歯科技工士・岩澤 毅

岩澤毅 コロナ禍、経済のグローバル化の中で 日本歯科新聞 2020年8月4日号

2020年08月06日 | 歯科川柳・日本歯科新聞






日本歯科新聞 2020年8月4日号 投稿/寄稿
コロナ禍、経済のグローバル化の中で
国の政策の後押し必要
岩澤 毅 (歯科技工士)

 今回の新型コロナの感染防止対策で浮き彫りになったマスク等の不足を教訓に、国内での生産体制の整備が進められようとしている。

 令和2年「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」が開始された。 概要は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、国内サプライチェーンの脆弱性が顕在化したことから、生産拠点の集中度が高い製品・部素材、または国民が健康な生活を営む上で重要な製品・部素材に関し、その円滑な供給を確保するため、国内で生産拠点等の整備を行う企業に対して補助を行う事業だ。

 国内における生産拠点等の整備を進め、製品等の円滑な確保を図ることでサプライチェーンの分断リスクを低減し、国内の製造業等の滞りない稼働、強靱な経済構造の構築を目指すとされている。

 この補助を受け、アイリスオーヤマ株式会社(本社:仙台市)は 、 新型コロナウイルスの感染拡大による 政府からの要請に応え、 大連工場(中国・遼寧省)と蘇州工場(中国・江蘇省)に加え、宮城県角田工場の一部を改修してマスクの生産を開始しています。

 経済のグローバル化推進が当然のこととされ、賛美された時代が続いてきました。歯科医院経営の立場からは、外注費とされる歯科技工所から購入する歯科補綴装置等が、マスクと同様の国際競争にさらされたならば、国内での生産体制の維持を確保することは、困難を伴う側面があることはご理解頂けると思います。

 経済成長の目覚ましい中国や東南アジアの諸国に比して、最近の我が国の経済の動向からは、通貨「円」の競争力が今後何年続くかは、心許ないものがあります。

 国民生活の安心安全を確保する上で、食料、エネルギー、医療等の基盤構築には、経済の論理のみでは解決しえない部分があります。民間の個々の経済主体の経営判断に委ねては乗り越えられず、却って「合成の誤謬」による全体の悪化をもたらしかねない部分に関しては、国の政策の後押しが必要と思っている。

https://j-net21.smrj.go.jp/qa/org/Q1357.html
ビジネスQ&A

新型コロナウイルス感染症の第2波や自然災害に備えるための計画があると聞きましたが、どういったものなのでしょうか?
強い組織作り
2020年6月22日

製造業を営んでいます。以前から震災など不測の事態への対応もしなければと思っていましたが、目先の仕事に追われて後回しにしてきました。昨年は台風の被害も各地で発生し、現在はコロナウイルスで大きな影響が出ています。この機会に対応し始めたいと思っている中で「事業継続力強化計画」というものがあると聞きました。どういったものなのでしょうか?

回答

予想される新型コロナウイルス感染症の第2波、夏の水害・台風、そして地震…様々なリスクが想定される中で、事業を継続するために、まずは「もしも」のときのための計画を事前に作ることが備えの第一歩となります。そうした計画として国が定めたのが「事業継続力強化計画」です。

1.制度創設の経緯

令和元年7月16日に「中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律」(以下「中小企業強靱化法」)が施行され「事業継続力強化計画」の認定制度が創設されました。

中小企業が行う防災・減災の事前対策に関する計画を経済産業大臣が認定するもので、認定後は、税制優遇や補助金の加点などの支援策を活用することが可能になります。

事業継続力強化計画は、企業が単独で作成する場合と複数の事業者が連携して取り組む場合があります。連携の場合は以下4つの連携が考えられます。

1)組合型

2以上の組合(例:同業組合間等)が連携して、災害時の支援等を約する取組

2)サプライチェーン型

サプライチェーンによる取引関係等のある複数の企業が連携して、災害時の支援等を約する取組

3)地域型

同一地域内(例:工業団地など)の複数企業が連携して、災害時の支援等を約する取組

4) 相互補完・成長型

遠方の企業が連携し、災害時にあっては、「お互い様連携」を通じて災害対応力の強化を図り、平時にあっては、経済交流を通じて業績拡大に挑戦する取組

2.ポイント

事業継続力強化計画のポイントは以下2点です。
•災害対策の入口として事業継続計画BCPより格段に作成負担が少なく、小規模事業者のみなさまにも着手しやすいこと。
•台風災害等の復興現場でも、災害対策をしている企業は人命を守るとともに早期に復旧着手出来ている傾向にあること。

このような事業継続力強化計画について、次に内容や作成手順を見ていきましょう。

3.事業継続力強化計画認定制度の概要

本制度は、中小企業が行う防災・減災の事前対策に関する計画を経済産業大臣が認定するものです。
認定を受けた中小企業は、税制優遇や補助金の加点などの支援策を活用することが可能です。

計画認定のスキーム

○認定対象事業者
•防災・減災に取り組む中小企業・小規模事業者

○事業継続力強化計画の記載項目
•事業継続力強化に取り組む目的の明確化
•ハザードマップ等を活用した、自社拠点の自然災害リスク認識と被害想定策定。
•発災時の初動対応手順(安否確認、被害の確認・発信手順等)策定。
•ヒト、モノ、カネ、情報を災害から守るための具体的な対策。
※自社にとって必要で、取り組みを始めることができる項目について記載。
•計画の推進体制(経営層のコミットメント)。
•訓練実施、計画の見直し等、取組の実効性を確保する取組。
•(連携をして取り組む場合)連携の体制と取組、取組に向けた関係社の合意。

○認定を受けた企業に対する支援策
•低利融資、信用保証枠の拡大等の金融支援
•防災・減災設備に対する税制措置
•補助金(ものづくり補助金等)の優先採択
•連携をいただける企業や地方自治体等からの支援措置
•中小企業庁HPでの認定を受けた企業の公表
•認定企業にご活用いただけるロゴマーク(会社案内や名刺で認定のPRが可能)

事業継続力強化計画認定制度の概要(令和元年7月16日施行)

〇参考URL
中小企業庁/事業継続力強化計画
事業継続力強化計画作成の手引き<単独>(PDFファイル1.71MB)
事業継続力強化計画作成の手引き<連携>(PDFファイル2.05MB)

◎『事業継続計画(BCP)』と『事業継続力強化計画』の違い

〇事業継続計画(Business Continuity Plan)とは

企業等が緊急事態(自然災害、大火災、感染症など)に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするため、平時に行うべき行動や、当該緊急非常時における事業継続のための方法、手段などをあらかじめ取り決め、それを文書化したものです。

〇中小企業が初めて防災計画を策定するなら『事業継続力強化計画』がオススメ

『事業継続力強化計画』は防災の必要性を認識することから始まり、想定される人的・物的被害の把握、初動対応及び体制作りを主眼としています。一方『事業継続計画(BCP)』は『事業継続力強化計画』の考え方に加え、被災後の事業の継続・早期復旧も視野に入れている点で異なります。

すなわち『事業継続計画(BCP)』は『事業継続力強化計画』を包含したものと言えます。

実際に『事業継続計画(BCP)』を作成すると、詳細な計画が数十ページに及ぶこともあり、作成までにかなりの負担がかかったと言う声を聞きます。他方『事業継続力強化計画』は記入前の様式が5ページしかありません。内容も簡便でわかりやすく、手引きを参考にすれば比較的簡単に作成できます。

中小企業が防災に関する計画を初めて作成する場合には『事業継続力強化計画』から取り組むと良いでしょう。

出典:平成30年度 中小企業等強靭化対策事業(事前対策の普及啓発に係る策定支援事業)

4.『事業継続力強化計画』の策定の前に資金繰りを確認しましょう!

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、売上が減少した際に直面することの一つが資金繰りです。企業によっては資金が足りないのはわかっているが、いつ、いくら不足するのか?が正確にはわからないことがあったようです。

そこで事業継続力強化計画を策定する前に資金繰りを確認してください。まだ資金繰り表がない場合は、以下を参考に資金繰り表を作成してみてください。

資金繰り表で把握した必要金額は、次項の事業継続力強化計画策定Step5「事業継続力強化を実施するために必要な資金の額及びその調達方法」に記載する際の参考になります。
参考:J-Net21 ビジネスQ&A『資金繰り表って何ですか?また、どのようにして作成するのですか?』

5.『事業継続力強化計画』の策定ステップ

事業継続力強化計画は様式に従って記入すれば比較的簡単に作成できます。

具体的な手順は以下の5つのステップです(参考資料もご参照下さい)。


【参考資料】事業継続力強化計画認定申請書の作成方法について(53KB)
参考資料_申請書記入のステップ(Wordデータ)はこちらからダウンロードいただけます。

Step1:目的の明確化

いざというときに慌てないよう、災害時に何を目標とするのかを予め想定します。

【事業継続力強化計画に係る認定申請書様式の記入項目】
•「2 事業継続力強化の目標」の「自社の事業活動の概要」及び「事業継続力強化計画に取り組む目的」

Step2:リスク認識、被害想定

市区町村のホームページにあるハザードマップから震災、水害等のリスクを確認します。
また、確認したリスクから事業への影響を想定します。

【事業継続力強化計画に係る認定申請書様式の記入項目】
•「2 事業継続力強化の目標」の「事業活動に影響を与える自然災害等の想定」「自然災害等の発生が事業活動に与える影響」を記入します。

Step3:初動対応手順

まず人命の安全確保(従業員の避難、安否確認など)を行います。
次に非常時に行動するための緊急体制を構築します。
そして被害状況を取引先や関係団体への共有方法について連絡先等を明確にします。

【事業継続力強化計画に係る認定申請書様式の記入項目】
•「3 事業継続力強化の内容」の:
「(1)自然災害等が発生した場合における対応手順」
「(4)事業継続力強化の実施に協力する者の名称及び住所並びにその代表者の氏名並びにその協力の対応」

Step4:経営資源(人、物、金、情報)への対応

自然災害等が発生した場合の事業継続力強化のため、人・物・金・情報といった経営資源ごとに対策および取組みを設定します。

【事業継続力強化計画に係る認定申請書様式の記入項目】
•「3 事業継続力強化の内容」の「(2)事業継続力強化に資する対策及び取組」

Step5:実効性の担保

作成した事業継続力強化計画が実効性を持ち続けるため、非常用電源など今後導入したい設備の内容、平時の推進体制の整備・教育訓練、従業員の給与や仕入れ代金など必要な資金額と調達方法を明らかにします。

【事業継続力強化計画に係る認定申請書様式の記入項目】
•「3 事業継続力強化の内容」の:
「(3)事業継続力強化設備等の種類」
「(5)平時の推進体制の整備、訓練及び教育の実施その他の事業継続力強化の実効性を担保するための取組」
•「5 事業継続力強化を実施するために必要な資金の額及びその調達方法」

作成後は、都道府県を管轄する経済産業局または内閣府の沖縄総合事務局に提出します。

◎新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえた今後の支援策

今回の新型コロナウイルスの感染症の拡大を受け、経済産業省は令和2年4月に公表した緊急経済対策に、感染症対策を加味したBCP及び事業継続力強化計画の策定支援事業を計上しています。
令和2年度補正予算案の事業概要 資料
※【p.30】感染症対策を含む中小企業強靭化対策事業(中小機構交付金) 予算額6億円


具体的な事業は、以下2つを予定しています。
•普及啓蒙活動
リスクファイナンスなどのコンテンツ作成、事業継続力強化計画策定の手引き改訂や説明動画作成、ガイドライン等の周知のための広告の実施。
•感染症対策等の計画策定支援事業
感染症や自然災害等の事前対策に知見のある支援人材を派遣しての計画策定支援、自社製品の生産を可能とする代替生産先の確保を含む計画策定

◎まとめ

事業継続力強化計画の認定を受けると補助金の優先採択をはじめ様々なメリットがあります。しかし最も重要なことは台風災害等の復興現場でも、あらかじめ災害対策をしている企業は人命を守るとともに、早期に復旧着手出来ている傾向にあることだと思います。

従来の地震、台風等の災害に加え、現在は新型コロナウイルス感染症の影響が世界的にも深刻化しています。

経営者をはじめ社員やそのご家族の命を守り事業を継続するために、ぜひ事業継続力強化計画を策定してみてください。

なお、中小機構では、先述の補正予算事業と合わせて、事業継続力強化に関するシンポジウムや計画策定のためのセミナー・ワークショップ等を実施予定です。詳しくは中小機構サイト等をご確認下さい。

回答者
中小企業診断士・キャリアコンサルタント/E-SODAN「専門家とのチャット」担当
濵松 一弘
中小企業診断士・キャリアコンサルタント/E-SODAN「専門家とのチャット」担当 濵松 一弘 (はままつ かずひろ)
民間企業で研究開発、マーケティング、営業、物流、子会社管理、経営企画など幅広い業務に従事。また公的支援機関にて研究開発型企業を中心に、開発、販路開拓やビジネスマッチングなど幅広く支援。経営上の課題はもとより、相談者が本当に実現したいことを引き出し、その実現に向け計画策定や施策活用などを通し伴走支援している。
中小機構オンライン相談室「E-SODAN」のチャット対応専門家として相談対応中!

https://j-net21.smrj.go.jp/qa/org/Q0861.html
風水害に備えて、自社に合った対策の立て方を教えてください。
強い組織作り

洪水、土砂崩れ、地割れの災害が後を絶ちません。当社では、これまで風水害に備えた準備をほとんどしていませんでしたが、今回、しっかりとした準備をしたいと考えています。そこで、準備・対策の方法を教えてください。


回答

風水害に備えての対策を「周辺環境」「施設・備品」「マニュアル」「行動」の観点から説明します。重要なことは、「自社にマッチした準備やルール化」を行い「従業員に周知徹底」することです。また、風水害は、竜巻を除けば地震と異なり、刻々と変化する様子が分かり避難や対策の時間があるので、あらかじめ決められた対策や行動が可能になります。


【周辺環境の確認と危険の認識】

1.ハザードマップ(※)により、会社や事業所の周りの環境を確認して、どのような災害が発生する可能性があるかを調べます。周辺の危険地域の認識や顧客、従業員の避難先も確認できます。
2.災害に備えて敷地内は設置物の転倒や飛散、塀の倒壊や倒木等を防止する対策を施し、窓ガラスなどに飛散防止フィルムなどを貼るなどの安全対策をします。
3.土地が低く水害が発生する可能性がある場合、重要な書類、設備は上の階とするレイアウトにします。
4.危険が発生する雨量を認識しておき、大雨の時など天気予報等で降水量を知るようにします。
※ハザードマップは、自然災害による被害を予測して被害範囲を地図化したものです。各市町村で作成しており、住民への配布や市町村のホームページからダウンロードもできます。
(例:洪水ハザードマップ、土砂崩れ危険度マップ、危険度マップなど)

【施設・備品】

水害や土砂崩れなどが発生すると、緊急車両が来られない状況になる可能性があります。したがって、可能な範囲で自己防衛策を講じることが一層必要になります。抜本的な対策としては、立地、建物に関することから考えられますが、まずは、自社にとって現実的なところから手を付けて行きます。
1.建物への浸水対策は「床上浸水の防止」と「地下への浸水防止」を考えます。
2.浸水に備え、事業所内の緊急持ち出し品を明確にします。
3.水害に対しては、土嚢、ボート、浸水防止板などを準備します。

【非常時の体制やマニュアル(社内ルール化)】

被災時のシミュレーションを行って、行動指針や各種マニュアルを策定します。実際には企業の業種、規模、環境、経営方針などにあわせて作成します。基本的には、事業継続計画(BCP)や防災体制に基づき、風水害について検討します。
1.災害対策本部の体制策定と実際の運用
2.行動マニュアルの整備
3.防災マニュアル策定
4.緊急時連絡網の作成
5.防災グッズの整備と保守、運用
6.避難訓練マニュアル整備
7.実際の訓練+教育の指針策定

【災害発生時の従業員の行動】
1.風水害が予想される場合の避難場所・避難経路・避難方法などについて確認しておきます。
2.リアルタイム水位情報が下流河川事務所などから提供されています。たとえば「はん濫注意水位」レベルに達した場合、従業員の避難実施や重要書類の持ち出しなど、具体的なアクショ
3.ンを決めておきます。
4.日頃より避難訓練などを行い、いざという時に行動ができるようにします。
5.応急処置や心肺蘇生法などを学んでおきます。

内閣府(防災担当)で、「地域の防災力」がどれくらいあるかを簡易評価する「土砂災害」と「水害」の診断手法を開発・公開していますので、参考にしてみてください。


回答者
中小企業診断士
渡辺 英男
回答者プロフィール
中小企業診断士 渡辺 英男 (わたなべ ひでお)
新事業・製品開発、組織開発、IT活用マーケティングなど
中小企業診断士、日本経営調査士協会 経営アナリスト、ISO27001審査員補。
大手電気通信メーカーの技術部、開発部で金融機関向けシステム機器、ATM、OCR等の設計・開発に従事。その後、事業部にて事業企画に従事。2000年に上司と社外ベンチャーを起業する。事業企画・総務・財務の経営の実務を経験。2006年度には従業者350人、売上50億円となる。2007年に渡辺経営コンサルティングを設立し独立。
著書:ベンチャー成功の資金づくり(日本評論社 共著、他)


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