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■ ザ・カセットテープ・ミュージック(前編)

2021/01/10 UP

本日放送の #80「よくわかるペンタトニック講習会」、面白かった。

ペンタトニック(スケール)とは、C音トニックの場合「ドレミファソラシ(CDEFGAB)」の内から4度「ファ(F)」と7度「シ(B)」を抜いた「ドレミソラ(CDEGA)」のみでつくられるスケール。
5音のみで構成されるので「5音音階」とも。4度(ヨ)と7度(ナ)を抜くので「ヨナ抜き音階」とも。
親しみやすく平易なスケールで、日本に限らず世界各地の民謡や童謡に使われているもの。
(「ド」がトニックだとメジャーペンタ、「ラ」がトニックだとマイナーペンタ。)

これに対して西洋音楽は「7音音階」で、ポピュラー系ではセブンスコードが代表格。
響きが複雑になり、とくにメジャー・セブンスをベースにし、Sus4コード、エー・マイナー・メジャー・セブンス(クリシェ)などを加えるとシティポップ的なお洒落感が出るといわれている。
(だからペンタのイメージ的な対極はメジャー・セブンスだと思う。)

「ヨナ抜き音階とは?」

■ ベルベット・イースター - 荒井由実 【COVER】 ← 典型的な初期ユーミン曲(セブンス)
コード


■ 春よ、来い - 松任谷由実  ← ヨナ抜き音階(=ペンタ)?
コード

「春よ、来い」をはじめて聴いたとき強い違和感を感じた。
その一方で、ユーミンはこの曲で新たなファン層を掴んだといわれる。
その理由がわかる気がする。


〔 演歌じゃない演歌? 〕
■ 千曲川 - 五木ひろし

3拍子のペンタ。
ものすごいスケール感だけど、歌のうまさがシビアに問われそう。
やっぱりこれ演歌じゃないわ(笑)

〔 メロはペンタだけどあとは違う例 〕
■ YELLOW MAGIC CARNIVAL - MANNA(作・細野晴臣)

チャイナ風なペンタのメロだけど、リズムはアップビートだし、マイケル・マクドナルド風のキーボードリフも・・・。
う~ん、なにこれ(笑)
さすがに才人、細野晴臣。

それと、若手ペンタトニッカー(笑)
たしかに2015年以降、ペンタトニッカーが増殖している感じがする。

思い返してみると、
~1970年代前半  ペンタの時代
1970年代前半~中盤  ペンタとセブンスの拮抗時代
1970年代中盤~1980年代中盤  セブンス優位の時代
1980年代中盤~2014年  J-POP 進行(小室進行含む)の時代
2015年~  ペンタ回帰の時代
↑ こんなイメージがある。

世界的にみても1980年代中盤からは、王道進行(=J-POP 進行)やユーロビート進行の曲がやたらに増えた気がする。
ブレイクビーツや4つ打ちリズムはこれらのスケール(コード)と相性がいいから・・・。
だから、ペンタや王道進行、ユーロビート進行の氾濫に食傷した人たちが、国籍を問わず(メジャー)セブンスの宝庫「シティポップ」になだれ込んだのでは?

それと ↓ に書いた、このところの「コード進行ブーム」?も、ペンタからのエスケープ志向のあらわれでは?

1980年代中盤~2014年  J-POP 進行(小室進行含む)の時代
2015年~  ペンタ回帰の時代
2020年~  ペンタからの脱却の時代??(シティポップ人気、コード進行ブームやヒゲダン・ワンオクの人気)

にしても、マキタスポーツ氏のコメント、あいかわらず鋭い。

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2020/12/27 UP

本日も「ザ・カセットテープ・ミュージック」視てみました。

番組後半でマキタスポーツ氏が「Just the Two of Us進行」(丸サ進行、ジゴロ進行)を「勾玉進行」と称してスージー鈴木氏とJamってた。
いろいろ出てきたけど、やっぱり原曲(↓)がベストかな(笑)
Grover Washington Jr. - Just the Two of Us (feat. Bill Withers) (Official Audio)

※ はじめて聴いたとき、サックスとスティールパンの取り合わせにのけぞった記憶あり。


コード進行、たしかに大きなポイントだと思う。とくに循環コード。
いろいろあります。

Chord 1  スリーコード  C F G
Chord 2  J-POP 進行(王道進行)  F G7 Em Am
Chord 3  小室哲哉進行  Am F G C
Chord 4  小室哲哉進行(マイナー編)  Am Dm G Am
Chord 5  My Revolution 進行  C Am F G7
Chord 6  ユーロビート進行  F G Am Am
Chord 7  イチロクニーゴー  C Am Dm G7
Chord 8  期待感・増幅進行  Am Em F G7
Chord 9  カノン進行  C G Am Em F C F G
(出所:「コード進行に注目した J-POP 音楽の可視化」芸術科学会論文誌 Vol. 15, No. 4, pp. 177-184 (2016) 上原美咲 伊藤貴之 高塚正浩)→ こちら(PDF)
※ 孫引きでした。原典はおそらく→ こちら(コード進行マスター)。← 凄いサイトです。

たとえば・・・

■ 小室進行100曲メドレー作ってみた。 【同じコード進行の曲】

Am F G Cの循環コード。
カノン進行とSAW(未練)進行(F G(7) Em Am)の中間的なイメージかな。
日本人の情感に心地よく訴える進行だと思う。
たしかにオフコースは小室進行あった。

■ カノン進行が使われているJ-POP30曲メドレー

3:47~ クリスマス・イブ
5:06~ 糸
↑ この2曲がカノンコードとり入れてるのはけっこう有名な話だけど、ほかにもいろいろあるわな。

クリスマス・イブのコード → (こちら)
Original KeyはAだけど、Cに移調すると途中のコーラスパートで見事なカノンコード
C G Am(7) Em(7) F C F(Dm7) G
がでてくる。

■ 山下達郎 - クリスマスイブ

1:56~のコーラス。 

他の曲もOriginal KeyがCでないものがほとんどだけど、Cに移調(べつにCじゃなくてもいいが)してテンションや分数コード外し、BPM揃えて放り込むと無限ループが成立!
コード進行に著作権はない(と思う)から、この戦略はたしかに使えるかも・・・。
これからまだまだ増えていくのでは?

〔 追記 〕
たしかに「カノン進行は禁断の果実」かも・・・。(→ 元ネタ 「『カノン進行は禁断の果実』の嘘」

■ 愛は勝つ


・カノン進行を使うと一発屋になりやすい。
・カノン進行を使った曲が、そのミュージシャンの代表曲になりやすい。

↑ どちらが正解かわからないけど、それだけの大きなパワーをもつコード進行なんだと思います。

■ 守ってあげたい - 松任谷由実

コード
So you don't have to worry worry 守っ てあ げた い
C G Am C F C Dm Gsus4 G
あなた を 苦し める 全て のこ とから
C G Am C F C Dm
↑ サビにしっかりカノンがいる。

■ However - GLAY

↑ これもサビの一部カノン進行? 

カノン進行は、コード8個も使った強力な(縛りの強い)進行。
人はどんなに才能があっても一定のメロディパターンに頼りがちなりで、2曲目のカノン曲はどうしても「二匹目のドジョウ」になりやすく、だから「禁断の果実」とか「悪魔の作曲法」などと呼ばれるのだと思う。

〔 さらに追記 〕
「シティポップ進行」もぜったいある筈と思ったら、やっばりあった。
(すんません、トーシロなんでぜんぜん知らなかった(笑))

トゥ・ファイブ・ワン・シックス(Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ-Ⅵ)進行。

Dm7 G7sus4 Cmaj7 Am7の(循環)コード進行。
やっぱり、メジャーセブンス系のドミナントモーション絡みか・・・。
このリリース、お洒落だもんね(笑)

「イチロクニーゴー」と「トゥ・ファイブ・ワン・シックス」の関係について、即席でおべんきょしました。→ (コード進行 ケーデンスと循環コード、トゥーファイブ
代理コードをつかったドミナントモーションがポイントなのか・・・。(→ 代理コード
でも、結局はどれだけテンションかけて、どうやってトニックにリリース(解決)するかがキモでは?

それと、バックドアドミナント進行。これはぜったいあると思う。↓ むずかしすぎて理論はよくわからんけど、裏口入学(笑)



■ I LOVE... - Official髭男dism [Official Live Video]

・トゥ・ファイブ・ワン・(シックス)進行
・Just the Two of Us進行
サブドミナントマイナー
ドミナントセブンス・スケール
・sus4コード
(ベース)ラインクリシェ
パッシング・ディミニッシュ

音の質感はシティポップとは違うけど、テンションとリリースのバランス(ドミナントモーション)が絶妙。
シティポップ世代(50歳代)の評価が高い理由がわかる気がする。(→ コード進行の解説

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2020/12/21 UP

さっきまで視てた(途中からだけど)BS12 トゥエルビ「ザ・カセットテープ・ミュージック」(第64回「ディスコ/ダンスミュージック特集」)、すごく面白かった。

スージー鈴木氏(音楽評論家)の知識もそうだけど、マキタスポーツ氏の蘊蓄がさりげに凄い。
どうしてディスコ・ミュージックが1990年に向けてあれだけ変わっていったのか、思いあたることがいくつもあって目からウロコ状態。
マキタスポーツ氏が「またやりたい。」っていってたので、期待して待ってます。
「おうちで踊ろう!」(笑)

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具体的にいきます。(★は番組で紹介してた曲)

〔変化前/1970年代後半~1980年代前半〕

■ The Hustle - Van McCoy and the Soul City Symphony(1975)


■ Got To Be Real - Cheryl Lynn(1978)


■ The Soul Train Dancers 1980 (ConFunkShun - Got To Be Enough)


■ What Cha' Gonna Do For Me - Chaka Khan(1980)

しょっぱなのフィルインがかったドラムスの入り方、ムチャクチャ格好いいんですけど・・・。

■ On The Beat - B.B. & Q. Band(1981)


■ Never Too Much - Luther Vandross(1981)

ドラムスとベースの振る舞い、ムチャクチャ格好いいんですけど・・・。

■ "43" - Level 42, Live Bochum 1983

英国ファンカ・ラティーナ[funka latina]のグルーヴ!
ばりばりのチョッパー・ベース。

■ Rocket To Your Heart (Hot Tracks Remix) - Lisa(1983)

San FranciscoのHi-NRG(ハイエナジー)レーベル、Moby Dickからのリリース。
↓ 変化後の「ユーロビート」系と聴きくらべると、「ハイエナジー」との質感の違いがよくわかる。

★ Private Eyes - Daryl Hall & John Oates (1981)

↑マキタスポーツ氏が「でも、これ(Private Eyes)、4つ打ちなんですよ、ほら」と言っていた。
このあたりまでの曲はアップビート(裏拍)か、4つ打ちでも1拍、3拍クローズの「裏打ち」だったと思う。
それにシンコペやリフがふつうに入って、グルーヴが乗っていた。

■ Holiday Rap - Madonna vs MC Miker G and DJ Sven

Madonna + Rapだけど変化前だと思う。

だから、邦楽でもこんなことができた。
★ ソウルこれっきりですか - マイナー・チューニング・バンド(1976)

う~ん、オサレですねぇ(笑) これオリコン2位までいった。

それに、ドリフだって・・・。
★ ドリフの早口ことば - ザ・ドリフターズ(1981)

ドリフ視ながら、お子様たちがR&Bのリズムを叩き込まれてる(笑)

〔変化中/1980年代中盤〕

■ Break Me Into Little Pieces - HOT GOSSIP (Extended Mix)(1984)

個人的にはハイエナジー(Hi-NRG)からユーロビート(Eurobeat)への過渡期を画した曲だと思う。

■ Color My Love - Fun Fun(1984)

これって、ハイエナジー(Hi-NRG)じゃないよね・・・。

■ A Girl in Trouble (Is a Temporary Thing) - Romeo Void(1984)

これまでとは明らかに違うビート。個人的にはリバーブ聴いたリズムやメロ嫌いじゃなかったけど。
この頃はまだ、エレクトロポップやニューロマンティックスの流れか? と思っていた。 

★ Tarzan Boy - Baltimora(1985)

なんなんだろう、このリズム・・・。跳ねてそうで跳ねてないし。

★ Breakout - Swing Out Sister(1986)

ぜったい変わってきてるよね。

■ Give Me Up - Michael Fortunati(1987)

メロはまだわかるとしても、リズムが・・・。

〔変化後/1986年~〕

■ Venus - Bananarama(1986)


★ Together Forever - Rick Astley(1987)


★ Toy Boy - Sinitta(1988)


★ Turn It Into Love - Kylie Minogue(1988)

はい、きました。
ストック・エイトキン・ウォーターマン (Stock Aitken Waterman/SAW)、大活躍!

パッパカ、パッパカという馬乗りビート(4つ打ち表拍だと思う)とベタメロディ。
ジュリアナサウンドの完成です(笑)
それに、どんどん歌謡曲に近くなってきている。

ほらね、この F → G(7) → Em → Amのお約束ベタメロディって、↑ でJ-POP 進行(王道進行) / Chord 2って呼ばれてるじゃん。
(「J-POP 進行」というより、むしろ「歌謡曲進行」だと思うが。)

■ 愛が止まらない - WINK(1988)


■ Gimme! Gimme! Gimme! - ABBA(1979)

でね、洋楽でいうと何に近いかっていうと、じつは1970年代のミュンヘンサウンドなのよね~。
ABBAとか、Arabesqueとか、Boney Mとか・・・。
だから日本で人気が出て当然か・・・。

実際、日本ではハイエナジー(Hi-NRG)よりもユーロビート(Eurobeat)の方がブレークしたと思う。


マキタスポーツ氏が「未練進行」と指摘してたけど、F → G(7) → Em → Amのお約束ベタメロディって、どれ聴いても同じ感。
で、この頃からメジャー系の洋楽はほとんど聴かなくなった。

欧米ではその後”SAWサウンド”は下火になったけど、日本ではパラパラや小室サウンドが継承していまなお残っている。
4つ打ち表拍とベタメロディは、もともと日本人の大好物だから当然か・・・。
ある種の先祖返りともいえるかも・・・。

そうなると、シティポップ(四和音(セブンス・コード)系/裏拍)が一世を風靡した1970年代後半~1980年代前半は、日本人にとっては異質な時代で、4つ打ち表拍とベタメロディが闊歩するいまの状況が本来の姿なのかもしれぬ・・・。

■ Last Summer Whisper - 杏里 / 角松敏生作曲(1982) ※典型的なシティポップ

↑ の「Turn It Into Love」と聴き比べて、どっちが洋楽って・・・(笑)

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関ジャムでも指摘していたけど、このところコード進行解説ブーム?
たとえば、「Just the Two of Us進行」(丸サ進行、ジゴロ進行)

■ Just the Two of Us (feat. Bill Withers) - Grover Washington Jr.(1981)


■ 愛を伝えたいだとか - あいみょん


リズム進行は似ていても、音の質感がぜんぜん違う。
たしかにこういう聴き比べも面白いかも。

■ ザ・カセットテープ・ミュージック(後編)へつづく。
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