The Alan Smithy Band

The band is on a mission.

Sは見た

2005年12月03日 | ヒデ氏イラストブログ
大学の頃の話です。

僕は、少し体を鍛えていました。なぜ鍛えていたかというと、
当時同じクラブでバンド仲間だった友人Sの存在が大きかったのだと思います。

Sはとても音楽をやる人間とは思えないほど体格が良く、筋トレを欠かさないヤツでした。
音楽系クラブでどれにしようか迷った人は数多くいても、Sのように
「ボディービル部とどっちにしようか迷った」という二択でこのクラブに入った人はいません。

Sと仲良くなり、行動を共にするようになると、そのうちに昼食後の
ボディービル部の部室を借りての筋トレにつきあう日々が始まりました。
さすが筋トレ歴が長いものらしく、ド素人の僕にも親切丁寧に指導してくれました。

8回で限界が来るようにセットされたダンベルを上げるSは、
7回目でもうほぼ限界に達しプルプル震えながら、最後に
「シュワルツェネッガッ!」(←Sが敬愛していた)と漏らし最後の8回目を上げます。

「世界レベルのビルダーは空の車椅子を押してトレーニング場に来て、
太もものトレーニングを立てなくなるまでして、その車椅子に乗って帰るんだぜ」と
自慢気に話していたこともありました。

ボディビルディングというのは人に見られてなんぼ、の世界です。
そんなSの「人に見られている意識」が炸裂した出来事がありました。

ある日のこと、いつもと同じようにその日4回目の食事を大学の食堂で取っていたとき
(Sは一日6度の食事をとっていました)、僕はSと向かい合わせで座っていました。
僕は何かをSに話していたのですが、急にSの視線が僕の後方に集中しました。
返事も「あ、ああ」というだけで気もそぞろ、という感じです。

そう思った瞬間、僕の横をTシャツ姿の一人の男性が通り過ぎていきました。
ああ、Sは彼を見ていたのか。でもなぜ?
Sに目を向けると、Sは小刻みにカラダを震わせ笑みを浮かべながら僕のほうを見て言いました。

「見た?」

。。。何が?。。。知り合いだったのか?いや、男は素通りしていったし、そんなはずはない。
変な格好でもしていたのだろうか。。。?僕はSに聞き返しました。

「何を?」

Sはやれやれ見てないのかよ、といった表情で
「見たやろ、今通って行ったアイツ、上腕二頭筋むき出しにして見せてきてたやろ。
だからオレもこの体勢のまま思い切りウイング開いとったんよ。もうすぐ飛べるかと思ったわ。」
(※ウイング=広背筋の俗称)

どう思い起こしても、通り過ぎた彼が何かをアピールしているようには見えませんでした。
しかしSは、少し体格のいい人間を見るたびに、そいつに見える筋肉を肥大させて
「対決」している、というのです。

こ、これがボディビルダーか。。。ゴクリ。 


卒業後、Sは海外に移住しました。
今もどこかの国で筋肉対決を続けていることでしょう。

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1 コメント

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俺もそいつをしっている。 (もうひとりのバンド仲間)
2006-03-30 23:59:42
友人Sが合宿にあわせて心行くまで仕上げてきたのは、ハープソロではなく、バイセップス(上腕二頭筋肉の俗称)だったことは、忘れえぬ名エピソードのうちのひとつであります。
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