(”雪あらし”の続き)
”雪あらし”の次は”鬼火”です。
鬼火とは何でしょうか?辞書を引くと、「夜、しめった土地で燃える、青色の火。燐火。きつねび」(『三省堂国語辞典』第7版)とあります。
鬼も火も、単独だと力強く激しい漢字なのに、熟語にすると軽やかな響きに変わる気がするから不思議です。
マイナスとマイナスの数字を掛けるとプラスになりますが、その逆はありません。
アリス=紗良・オットのピアノは、軽やかな響きから始まります。さながら、モーツァルトの”玉を転がすような”音で奏されています。
(0:29)メインのテーマに入りますが、ここはメチャクチャ難しいはずです。
(0:49)左手は、小さなかがり火がよちよち歩きをしているように聴こえます。
(1:03)のリズムの「ため」も落ち着いています。
もっとも、完全に理想的な”鬼火”ではありません。
もし自分なら、(2:02)から(2:06)にかけては思い切りリタルダント(テンポを遅くする)をかけ、(2:26)では、さらに半分くらいの遅さに落としたいところです。そして(2:39)で一気にもとのテンポに戻して、クライマックスを作ったらどういう演奏になるだろうか?と思います。
しかし、鬼火を弾くことは、自分にとっては難しすぎてまったく無理なことです。
(3:12)柔らかい響きです。曲想は正反対でも、”雪あらし”と同じ魅力があります。テクニックの凄味から完全に解き放たれた演奏に驚きを覚えます。これこそ”超絶技巧”だと思わずにはいられない名演です。
”雪あらし”、”鬼火”以外では、第1番”前奏曲”が素晴らしいです。抑え気味の響きが上品な前奏曲を創り出しているからです。緩やかに進む、第3番”風景”や第9番”回想”の美しさも印象に残りました。
(”夕べの調べ”・10番・”狩り”へ続く)
コメントありがとうございます。
写真は、曲想に合いそうな山のものを選んで載せています。
鬼火はとても好きで、自分でも弾いてみたいですが、とてもかないません。
音楽の記事も山登りの記事のように
空気が澄んで
いますね。