体に有害な細菌をやっつけてくれる抗生物質だが、むやみやたらに使っていると抗生物質が効かない耐性菌を発生させてしまう。こうしたことから、各国の当局や医療機関、医師らが抗生物質を適正に使うよう呼びかけているが、一般市民はそうした行為を「製薬会社の陰謀」と捉えるなど、誤解が多いことが英国での調査によって分かった。「抗生物質耐性」の意味も取り違えていることも多かったという。
抗生物質は細菌の活動を抑える薬で、細菌によるものなら喉の痛みから腹痛、発熱、肺炎、皮膚炎、中耳炎などまで幅広く有効。そのため、本来なら抗生物質が不要な症状が軽い場合でも処方を求め、医師もそれに応じる傾向にある。
一方で一部の細菌は、抗生物質にさらされることによってその効き目を無効にする「抗生物質耐性」を獲得する場合がある。抗生物質を使うほど耐性を示す細菌が増えることになるため、抗生物質の使用は極力控えるべきとされているのだ。
今回の調査は今年3~4月、英医学研究団体「ウエルカム・トラスト」が英国内の3都市(ロンドン、マンチェスター、バーミンガム)に住む18~70歳以上の66人を対象に行った。調査結果は、友人同士またはグループでの会話の内容から抽出している。
抗生物質に抱くイメージに関しては、自分がどういう症状のときに処方され、どうやって作用するかを理解している人はほとんどいなかった。さらに「何日も飲むと体に悪い影響があるので」「飲みに行く予定があるから」などの理由で、服用を勝手に中止するケースも紹介されている。
また、「抗生物質耐性(antibiotic resistance)」や「抗菌薬耐性(antimicrobial resistance=AMR)」がどういう意味かを知らない人が続出。参加者の全員が「抗生物質を使っていくうちに、自分の体が抗生物質の耐性を獲得する」と思い込んでいたことも紹介されている。
一方、保健当局や医師らによる抗生物質の適正使用の呼びかけは、「医療費を抑制しようとしている」「製薬企業の陰謀」「脅しのストーリー」などのイメージを抱いていることも判明。さらに、耐性菌の問題は専門家の努力で解決策が見つかり、そのために時間や資金が投入されると考えているという。
このほか、耐性菌の出現によって起きる可能性がある事柄について、以下のように認識していることが紹介された。
◆耐性菌の出現で莫大な死者(年間1,000万人)が発生する
「たかが細菌でそんなにたくさんの人が死ぬなんて信じられない」
「世界規模での話で、英国には関係ない」
◆耐性菌の出現は気候変動と同様の深刻な脅威
「(何世代もの長期間で起こっている)気候変動と医学上の変化を一緒にされても、何も関連付けられない」
◆耐性菌の出現によって世界で100兆ドル(約1京2,000兆円)の経済的損失がある
「そんな金額、見たことがないから分からない」
以上の結果を受けて報告書は、抗生物質耐性の意味やそれによる世界規模の影響が伝わっていないと指摘。解決策として、「抗生物質が効かない感染症(antibiotic resistant infections)」という造語を浸透させること、各細菌が引き起こす病気は異なることなどの情報発信を提言している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150815-00010000-mocosuku-hlth
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