あまぐりころころ

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『食戟のソーマ』 五周年記念考察 ~作品と主人公の終着地点~

2018-05-27 10:30:00 | その他感想・考察

 さて、此の度ようやく終わりを迎えた遠月革命編。
 創真達反乱軍の勝利は予想通りでしたが、創真とえりなの着任には良くも悪くも驚かされました。
 ということで。
 「過去」「現在」と続けてきた五周年記念考察のラストは、そんな驚きの立場に就くことになった創真達をこの先待ち受けているのはどんな展開か、そして主人公創真とこの作品『食戟のソーマ』は果たして何処へ辿り着くのかという「未来」についての考察を述べさせて頂きます。



【創真やえりならの新たな立ち位置】

 長きに渡る連帯食戟の末に、勝利を手にした創真達。
 その暁に得たのは、仲間達の復学と共に
 えりなは遠月学園総帥の座
 そしてなんと
 創真は遠月十傑第一席の座
 だったという。

 いや~この展開には驚かされましたね。
 てっきり第一席はえりなになり、創真は実力的に見て第5~6席ぐらいになるかとばかり思っていたので。
 まだ学生という若さで総帥の座に就いたえりなもですが、史上最年少かつ最速の十傑第一席を獲得してしまった創真も大概なものがあります。

 でも。

 創真と同様に、私も創真のこの着任を素直に喜ぶことは出来ませんでした。
 何故なら、作中で創真本人が言っていた通り、まだ遠月学園には創真より上の実力者が数多くいるからです。
 酷い言い方になってしまいますが、創真は純に実力で十傑第一席の座を勝ち取ったわけではなく、えりなのおこぼれに預かっただけなんですよね。


 では、そんな現状の中で何故附田&佐伯先生は創真を敢えて第一席に就かせたのでしょうか。
 ・・・それは多分

これからの展開において、創真が「遠月学園の生徒代表」である必要があるという事なのでしょうね。


 これまでの考察で幾度も述べてきたように、この作品のこれからの舞台は「世界」へと移っていくであろうと私は考えています。

 遠月学園が「世界」を相手にしていくのならば。
 同じく「世界」を相手に挑んでいくであろう創真もまた、十傑第一席という形で遠月学園の代表にさせなければならなかったのでは。


 一方でえりなも前回の記念考察で述べたように、遠月学園の象徴です。
 その役割を公の形にさせるため、この機に総帥という「遠月学園そのものの代表」に就かせたのでしょう。


 そしてまた、恵やタクミ、一色先輩らも新生十傑に加わることになります。
 彼らも創真やえりなと共に遠月学園を代表する者達として「世界」を相手にしていくことになるのでしょうね。




【十傑第一席という立場の利得と弊害】

 こうして、目指していた目標ではあったものの、望まない形で十傑第一席の座を手にすることになった創真。
 十傑第一席の利点はというと、第119話で述べられていたように絶大な権限や財力の行使権がまず挙げられるでしょう。
 それだけではなく、料理界における知名度も大きく広がり、ひいては将来の約束もされたも同然に。

 で・す・が。

 当時も述べているように、創真にとってはそんな権力も知名度も不要のものなんですよね
 創真が求めているのは、第一席という「てっぺん」に立つことによって新たに見える景色なのですから。
 では、この度の就任において、創真は果たして新たな景色を見ることが出来るのでしょうか?

 ・・・まあ、これについては半々といったところでしょうかね。
 十傑第一席に就いたことによって「世界」に赴く機会が増えるならば、まさに創真が期待していたようなこれまで知らなかった世界、知らなかった技量や考えを持つ料理人に出会えるに違いありません。

 ですがその反面、これまでの城一郎や司といった十傑達の描写から窺えるように、その「特権」故の「義務」も受け持つことになります。
 これは創真にとってはストレス以外の何物でもないでしょう。
 っていうかですね。

 創真が真面目にデスクワークに勤しむ姿なんて
 ぜんっっぜん
 まっったく
 ちっっとも
 似合わないし。(注:栗うさぎは創真ファンです)


 ちなみに城一郎や司が「荒野に迷ってしまった原因」については、私は特に心配していません。
 彼らは自分の料理を理解されないことに疲弊、もしくは苛立ちを募らせていましたが、創真は「客」に対してはある意味で物凄く謙虚な子です。
 自分の料理の事を理解してくれているかどうかは二の次。
 ただ「美味しい」と笑顔で食べてくれればそれでいい。
 といった考えの持ち主だと思うんですよね。(^^)

 ただ、やはり創真は自由気質な子なので、堅苦しい上流層の料理界は肌に合わないでしょう。
 ならばどうするか。
 そこはやっぱり創真ですから・・・
 変えるのかな、と。

 
そもそも創真は十傑の「特権」なんてものには興味がありませんから・・・
 十傑の「特別さ」を解消させようとか考えたりして☆




【“新生”遠月学園はどうなるか】

 創真は「ああいう性格」の子ですから、これまでのイメージから逸脱した第一席になるのは想像に難くありません(苦笑)。
 ですが今、遠月学園は大きな変化を迎えました。
 総帥も。
 十傑陣も。

 これは前回の記念考察内で述べた事とも繋がりますが、薊が仙左衛門を失脚させ新たな教育メソッドを掲げたことは、旧体制の問題点を浮き彫りにさせたということでもありました。
 ですが薊が退き、仙左衛門も退任のままとなり、新たな総帥となったのはえりな。
 えりなは「総帥」であり「現生徒」でもあるという、遠月学園内の上下両方を兼任する立場になったわけです。
 少し前までのえりなであったならば、もし総帥になったとしても目指すのは遠月学園のより高い繁栄と栄光のみで、教育システム自体はそのままにしていたことでしょう。(いやもっと厳しくしていたかも・・・)
 でもえりなは創真や極星寮の仲間達といった一般生徒と同じ世界に身を置いたことにより、居場所を失う者達の悲しみを、力づくで無情に切り捨てられていくことの酷さを目の当たりしました。
 今のえりななら、これまでの遠月学園の在り方について改めて考え直してくれると思うんです。

 そしてきっと、他の新生十傑達もその改正に賛同してくれるのではないのでしょうか。
 タクミや恵、一色先輩や女木島先輩らは十傑の権限には特に固執していませんし、何より仲間思いな人達ですから。
 まあ、久我あたりは多少不満を零すでしょうが、それでも説得すれば了承してくれる人物でしょうしね。


 薊の支配は傍迷惑なものでしたが、それはある意味では必要な事だったわけです。




【これからの展開への布石】

 さて、ではこれからどんな展開が待ち受けているかを具体的に考えてみましょうか。
 その点についてはこれまでのストーリーの中で、布石と思われしものが既に幾つか置かれています。

 まず挙げられるのは、二学期中に進級試験が行われたという時期の早さ。
 第167話で創真が言っていた通り、一般的に進級試験は三学期に行われるものであり、このタイミングは随分と早いと言えます。
 これは十中八九、三学期に何か別の大きな学校行事があると考えるべきでしょう。
 これが「世界」に繋がるイベントになるかどうかはまだ分かりませんがね。

 あとは、第196話で語られていた世界若手料理人選手権『BLUE』。
 これはまさに「世界」に照準を当てた戦いの舞台としてはうってつけ。
 城一郎がかつて棄権した大会という意味でも縁がありますしね。
 それに・・・
 『BLUE』の参加可能年齢は35歳以下だそうだけど・・・。
 ・・・四宮って確か29歳だよね(ボソ)。


 他にも、「世界」を照準に考えれば
 城一郎の軌跡
 薊のパイプ
 四宮の軌跡
 等々、これまでの人脈を辿れば伏線は幾らでも繋げられると思います。

 ま。

 これまでいかにも意味ありげに張られていた伏線があっさりスルー★なんてこともザラにありますけど。(←)




<創真が選ぶ「未来」>


 とまあ、ここまで創真の新しい遠月学園の立場を中心に語ってきましたが、「未来」を考える上で外せない項目の一つに
 創真は果たして遠月学園を卒業するのか?
 というのが挙げられると思います。

 私の記憶が正しければ、附田先生はツイッターだか何処かでこのような旨のコメントをなされていたんですよね。

 「『食戟のソーマ』という作品は、幸平創真という人間の高校1年生の時を切り取った物語として終わる、かもしれない」と。

 正直なところ、附田先生のこの発言を聞いた時は

 え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?
 と、そりゃもう残念に思いましたよ、心底。

 遠月学園という料理学校を舞台にしたこの作品が、卒業という有終の美で終わるとは限らない、という附田先生のお言葉は正直なところショックでした。
 ですが、その一方で

 いたく納得する自分もいました。

 これまでも創真の“器”については何度も語ってきましたが・・・



 創真は「十傑」という組織内に収まるような器ではないと


 「遠月学園」でさえも収まりきれない器だと思っていますから。

 

 えりなとの約束もありますし、創真は2年生にはなることでしょう。(第172話
 ですが卒業までずっと遠月学園にいるかと問われれば、確かに私も断言はできません。

 ここらが『幸平創真』という主人公の「王道性」と「邪道性」の物凄く絶妙なバランスなんですよね。
 読者が期待するような「王道の未来」を選んだとしても、読者が唖然とするような「邪道の未来」を選んだとしても、冷静に考えれば「創真らしい」という言葉で纏めることが出来るという絶妙さが。
 ホント附田&佐伯先生は厄介で難しくて味わい深い主人公を生み出してくださったものです(苦笑)。



 そんな、果て無き荒野をどこまでも歩んでいくであろう創真。
 でも。
 そんな果てしない旅に進んで赴く子だからこそ、大切にしてもらいたいのが
 「帰る場所」。

 それは実家である『ゆきひら』であり・・・
 いずれは「ただ一人の大切な人」になっていく筈。

 この作品で掲げられている二つの指標。
 これからの展開でより一層、「自分一人の世界から多くの人との繋がりへ」という“拡大”が扱われていくならば。
 それと等しく「自分の全てを一人の人へ」という“収束”についても是非掘り下げてもらいたいところ



 あ、ちなみに遠月革命編ではこれでもかと言わんばかりにえりなが出張っていた目立っていましたが


恵を推す私の考えは1ミクロンも揺らいでません。



 何故かって?

 だって、この作品の最大の鍵は「出会い」

 

恵は、創真が誰かとの「出会い」を果たす際には必ず傍にいますから。

 

 

 

 さてさて。
 約半年に渡って述べてきた五周年記念考察は、これにて完結です。
 通して読んでくださった方にはひたすら感謝しかありません。本当にありがとうございました!!


 料理面や人物面、主観視点や俯瞰視点等、様々な角度から創真を、そしてこの作品を見続けてきましたが、初期の目標「十傑第一席の座の獲得」が一応果たされた今、創真とこの作品は一体これからどんな道を歩んでいくことになるのでしょうか?


 この機に改めて言わせてもらいましょう。

 どんな紆余曲折があろうとも
 私が創真に。
 この作品に。
 心から望んでいるのは

 

「ごちそうさま」と笑顔で見納められる終着だと。(⌒-⌒)

 

 


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