沖縄の乱: 燃える癒しの島 単行本 – 2016/8/19
野里 洋 (著)
5つ星のうち 4.0 1 件のカスタマーレビュー
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「マグマが噴き出している」が書き出しで、過去のマグマとは明らかに違うという。戦後70年余沖縄はの現在。復帰から44年が経ち、米兵による少女暴行事件から20年、あと30年もすれば戦後100年になる。
知っているつもりでも、依然、左右のバカの壁のなかでの争いを眺めているだけの自分に気づかされる。
よく言われる「本土と沖縄の温度差」(この場合奄美も本土になるだろうが)という表現では捉えきれない何か。本土生まれで沖縄在住40年の著者は、現在の状況に「沖縄差別はある」と感じているが、もはやそれだけでは説明できないほど月日が流れた。「銃剣とブルドーザー」による基地建設から現在にいたるまでの経緯が詳しく語られ、専門家や評論家のいう沖縄の米軍基地の「抑止力」や、「地政学的重要性」などは、時代の流れで、もう素人でも疑問をいだくまでになっている。
タイトルから著者が想定しているのは、380年前、日本の歴史上最大規模の一揆で、幕末以前では最後の本格的な内戦と言われる島原の乱だ。
普天間問題、基地問題、沖縄問題、これらは実は、日本問題、日本人問題でもあると気づかされる。
それは、第6章の『鳩山首相は最後まで「国外か、県外」を貫くべきだった』に、著者の主張と共に端的に示されている気がする。2009年の民主党政権樹立からの鳩山首相の「混迷」ぶりには、首相に従わない外務大臣や防衛大臣そしてなにより官僚の姿が詳しく述べられていて圧巻だ。鳩山退陣を見越してだんまりを決め込み、総理を補佐しなかった官副総理の態度には、日本の政治の仕組みの問題も含めて、絶望的な思いをいだく。またその前後の世論にも同じ思いをいだく。
マグマの熱さを感じながら読んでいると最後ちかくの、沖縄の民謡の名手(故人)が著者のインタビューに答えるジョーク混じりの基地の話がおもしろい。
p197「アメリカともう一度戦争して勝ったら・・・」兵隊を追い出せるかも知れんが、しかし・・・という話には、
現在、勇ましいことを言う人も、きれいごとを言う人も、何も言わない人も、また余計なことをする人たちも・・・考えさせられねばならないだろうと思った。
この話は意味深長だがつづきが長く、一筋縄では理解が難しいところもあるが、難しい話よりも核心をつくところもあった。
p187「しなやかで柔軟な行動、生活タイプの県民性」(これは奄美にも当てはまる部分がある)をもつウチナーンチュの普通の考えはなかなか活字になりにくい。
普通に考えれば、わかりそうなのだが、それを難しくしているのは何なのだろう。
amazon 登録情報
単行本: 229ページ
出版社: 河出書房新社 (2016/8/19)
言語: 日本語
内容紹介
政府対沖縄の全面対決の現状は、まさに県民決起による “乱”だ。本土出身、地元記者歴40年の著者が現地取材で迫る沖縄の真実。
内容(「BOOK」データベースより)
“沖縄戦”は、今も続いている。沖縄はアメリカの“戦利品”ではない。70年余、「NO」と言い続けてきたウチナーの現在と真実。米軍統治下時代に自ら現地に移り住んだ本土出身・地元記者歴40年の著者による渾身の書。
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この著者の本は、
『沖縄力の時代 (ソフトバンク新書) 新書 – 2009/3/17
野里 洋 (著)
も読んだはずだがこのブログに記事がみあたらない。