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『風の中の牝雞』1948年 小津安二郎監督 田中絹代 佐野周二

2021年12月26日 | 映画

wiki『風の中の牝雞』(かぜのなかのめんどり)は、小津安二郎監督による1948年製作の日本映画。製作は松竹大船撮影所。
太平洋戦争後の東京を舞台に、夫(佐野周二)の復員を待つ妻(田中絹代)が生活に困窮し、子どもが病気をしたことで金のために一度だけ売春をしたことから、戻ってきた夫のみならず妻自身も苦しむという物語である。

小津監督の「長屋紳士録」に次ぐ戦後2作目。その後の”家族”をあつかった小津作品のイメージからすれば本作は異色作。公開当時から興行的にも芳しくなく内容的にも失敗作と言われる。しかし、そういわれると、非常に貴重でしかもおもしろい作品に思えるから不思議だ。
 
この映画には、像の檻のような円形の建造物と、そのそばの母と子が暮らすアパートの二階に上る内階段が何度も出てくる。
階段を写すカメラは一階にあっていつも定位置で、二階を見上げている。柱に、はたきと箒がかけてあって、いろいろな登場人物が上っていっては、ふくらはぎが消えていくのだった。

その階段で1:14:44秒(残りあと8:26)で衝撃的なことが起こります。
妻の一度の不貞?(ただの不貞ではない)がいまだに許せない夫は、「お願い今日は出ていかないで」とすがる妻を階段下へ突き落としてしまいます。
妻は後頭部から真っ逆さまに転落していきます。スタントマンでなければ危険なほどの迫力です。驚きました。
転落から少しというか大分時間がたって夫は心配になって駆け下りますが、うずくまって苦しい息をする妻に向かって立ったままで見降ろし「時子、大丈夫か、・・おい」というだけで駆け寄ることも抱えあげることもせず、すぐに二階に戻ってしまいます。
非情です。これにも驚きましたが、これは夫の(小津監督自身の)戦争体験と関係があると思えば、重要なシーンだと思えます。

壁につかまりながら妻は自力で上りだします。この時、階段横の箒とはたきは定位置です。画面の両端が少し黒ずんで、痛々しい足どりの妻の姿が印象的です。映像と音声のノイズとともにかすかに重苦しい静かな音楽も聞こえています。その間が・・・。

それでも2階にいる夫に妻は、あなたにこんな思いまでさせてしまって、私が悪いのです、私はどんなことでもがまんします、存分にあなたの好きなようにして下さい、と痛い足で正座して謝ります。どこまでもけなげですが、どこかきっぱりとした強い意思の感じられる口調です。「あなたは泣いちゃいや、あなたが泣いちゃいやです」と訴えます。何も言えない夫が情けなくも見えてしまうのですが夫も苦しんでいるのです。やはり背後にリアルな「戦争」あるようにみえますが・・・。このあとも夫婦の会話は続きます。
(ところでタイトル『風の中の牝雞』はどういう意味でしょうか。調べてもよくわかりません)

夫の佐野周二がその後の映画の印象とは一味違い、今風の風貌で生き生きした表情をしています。
前かけをみだした田中絹代も前半の地味な母親とは別人のような。熱演です。

=======このような事例は現実に多々あったと想像できますが判例もあるようです。
以下は野暮ですが、
民法(裁判上の離婚)
第770条

第一項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

第二項 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。


wiki 不貞行為(ふていこうい)とは、配偶者としての貞操義務違反行為(自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと)を意味する、民法第770条に離婚事由として規定されている法律用語である。

民法(協議上の離婚)
第763条
夫婦は、その協議で、離婚をすることができる

風の中の牝雞
A Hen in the Wind
監督 小津安二郎
脚本 斎藤良輔
小津安二郎
製作 久保光三

出演者 田中絹代
佐野周二
村田知英子
笠智衆
坂本武 ほか

音楽 伊藤宣二
撮影 厚田雄春
編集 浜村義康
配給 松竹
公開  1948年9月17日
上映時間 83分

配役
佐野周二:雨宮修一
田中絹代:時子
村田知英子:井田秋子
笠智衆:佐竹和一郎
坂本武:酒井彦三


映画『お茶漬の味』1952年 小津安二郎監督 

2021年12月26日 | 映画

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
お茶漬の味

『麦秋』に続いて小津安二郎と野田高梧が共同で脚本を執筆し映画化した作品。地方出身の素朴な夫と夫にうんざりする上流階級出身の妻、二人のすれ違いと和解が描かれる。

田舎育ちの夫と東京の上流階級出身の夫。
価値観の違いによる軋轢、すれ違い。
生まれや育ち、見合い、恋愛、価値観の違いを乗り越え、"お茶漬の味”こそ夫婦味だ、と教訓話的に見てしまうと味も素っ気もなくなってしまう。
正直その先にあるこの映画の良さにはまだ気づいていない。
鶏飯の味のようなものがあるのかもしれない。

それら、互いの性格や価値観の違いは取るに足らないものだよ、と言っているのだろうか。

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監督 小津安二郎
脚本 野田高梧 小津安二郎
製作 山本武

出演者 佐分利信
木暮実千代
鶴田浩二
淡島千景
津島恵子
音楽 斎藤一郎
撮影 厚田雄春
製作会社 松竹大船撮影所
配給 松竹
公開 1952年10月1日
上映時間 115分

配給収入 1億992万円