風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第二部) 其の拾五

2010-03-04 21:04:21 | 大人の童話

やがて、夢は泣くのをやめて言いました。

「六小さん、いつもありがとう。わたし大丈夫。だって、あなたがいるんだもん。

六小さんがいるから、仲間はずれにあってもやっていける。ね、六小さん、これからも

いっしょにいてね。」

「うん、もちろんだよ。これからもずっといっしょにいるよ。だって夢ちゃんは、わたしの

ことをわかってくれる、たった一人の大切な子だもん。いっしょにいるよ。」

六小が答えると、夢は少し笑い顔になって言いました。

「ウフ、六小さんたら、四小さんと同じこと言ってる。」

「何で?」

夢が笑顔を見せたことにほっとして、六小は聞き返しました。

「だって、わたしが四小さんと始めてお話した時、四小さん、同じこと言ってたもん。

自分に気づいてくれたのは夢ちゃんだけだって。」

「ふ~ん、そうなんだ。」

六小は、夢が少し元気になったように見えたので、思いきって聞いてみました。

「もう平気?つらいのとれた?」

「うん、平気。ごめんね、心配かけて。」

笑顔で答える夢に、六小は明るく笑って言いました。

「ううん、いいよ、そんなこと。よかった、元気になって。じゃあもう、わたし行っても

大丈夫ね。」

「うん、ありがとう。またね。」

「うん、じゃあまたね。」

そう答えると、六小は夢のために、光を少しずつ小さくしながら消えていきました。

それを見ながら、夢はもう一度、心の中で”ありがとう”と言ったのでした。

 

 

 

 


風の向こうに(第二部) 其の拾四

2010-03-04 00:05:21 | 大人の童話

ただ、そんな夢にも一人だけ大切な友だちがいました。六小です。六小は、夢が一人で

寂しそうにしている時、必ず大きな光で自らを包み、夢をも優しく包み込むようにして

語りかけてきました。

「夢ちゃん、寂しいの?大丈夫よ。わたしがいるわ。クラスの子たちがどんなに

いじめたって、わたしは夢ちゃんの味方よ。だって、夢ちゃんのことは、わたしが一番

よく知ってるもの。大丈夫、元気だして。だれがなんと言ったって、夢ちゃんは

優しい子だもの。でなきゃ、わたしと話すことなんてできないもの。いつか、きっと

よくなるから。だから、いじめなんかに負けないで。それに、夢ちゃんのことをよく

知っているのはわたしだけじゃないよ。四小さんだってよく知ってるでしょ。きっと

今頃、”夢ちゃんしっかり”って励ましてくれているよ。ね、夢ちゃん。だからお願い、

泣かないで。」

六小は必死でした。いつも一人、寂しそうにしている夢、時々、校舎の片隅で泣いて

いる夢、そんな夢を励まそうと一所懸命です。その姿は、いつものあのキャーキャー

言っている六小ではありませんでした。それだけ、夢のことを心配していたのです。

「う・・・ん。」

夢も六小に励まされて、つらいのを一所懸命こらえていました。今の夢にとって

六小は、なにものにもかえがたいたった一人の友だちでした。誰よりもありがたい

存在だったのです。