風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第二部) 其の参拾弐

2010-03-24 22:36:51 | 大人の童話

卒業まで残す所二ヶ月となる十二月、そろそろ卒業文集を書く時期です。夢の

学年の子は、二小と四小から集まって六小の子になっています。

『みんな、何を書くのかなあ。やっぱり、六年間の思い出かな。だとすると、六小での

ことがほとんどだよね。でも、わたしはなあ。どうしよう。』

夢は考えこんでしまいました。夢の心には、一年の時の四小との思い出が強く

残っていて、その後の六小でのことが書けそうもないのでした。何日かして、夢は

友だちに聞かれました。

「文集、書いた?」

「ううん、まだ。」

「何だ、早くしないとまにあわないよ。」

「うん。」

それからまだしばらく、夢は考えこんでいましたが、やがて決心しました。

『六小でのことが書けないんじゃしかたがないかな。四小でのことも、六年間の

思い出の一つなんだから、四小でのことを書いてもいいか。』

するといきなり、校舎全体を揺るがすほどの六小の大きな声が響きました。

「ええーっ!何で。何で四小さんとのことを書くの?わたしのこと、好きって言って

くれたのに。わたしとの思い出もあるって、前に言ってくれたのに。何で、何で?」

六小は必死になっていました。それもそのはずです。だって、夢が、五年間も

いっしょにいた自分とのことより、たった一年いっしょだった四小とのことを文集に

書くっていうんですから。夢は、六小にきちんと話さなくて悪かった、と思い

言いました。