卒業まで残す所二ヶ月となる十二月、そろそろ卒業文集を書く時期です。夢の
学年の子は、二小と四小から集まって六小の子になっています。
『みんな、何を書くのかなあ。やっぱり、六年間の思い出かな。だとすると、六小での
ことがほとんどだよね。でも、わたしはなあ。どうしよう。』
夢は考えこんでしまいました。夢の心には、一年の時の四小との思い出が強く
残っていて、その後の六小でのことが書けそうもないのでした。何日かして、夢は
友だちに聞かれました。
「文集、書いた?」
「ううん、まだ。」
「何だ、早くしないとまにあわないよ。」
「うん。」
それからまだしばらく、夢は考えこんでいましたが、やがて決心しました。
『六小でのことが書けないんじゃしかたがないかな。四小でのことも、六年間の
思い出の一つなんだから、四小でのことを書いてもいいか。』
するといきなり、校舎全体を揺るがすほどの六小の大きな声が響きました。
「ええーっ!何で。何で四小さんとのことを書くの?わたしのこと、好きって言って
くれたのに。わたしとの思い出もあるって、前に言ってくれたのに。何で、何で?」
六小は必死になっていました。それもそのはずです。だって、夢が、五年間も
いっしょにいた自分とのことより、たった一年いっしょだった四小とのことを文集に
書くっていうんですから。夢は、六小にきちんと話さなくて悪かった、と思い
言いました。