体育館を出ると、夢は隣りにあるプールの脇に立ちました。此処で、午後の部を
見るつもりなのです。夢の在学中、此処にはブランコと砂場がありました。夢は、
あまりブランコでは遊びませんでしたが、ブランコは当時、子どもたちに人気が
あった遊具の一つでした。此処からは、校舎を真正面に見ることができます。夢は、
じっと六小を見つめていました。すると、あまりじっと見つめられて気になったのか、
六小が声をかけてきました。
「夢ちゃん、なに、わたしのことじっと見てるのよ。はずかしいじゃない。わたしより
子どもたちを見てよ。運動会を見に来てくれたんでしょ。」
「え、ああ、うん、ごめん。」
夢は、いろいろ見ているうちに、昔のことを思い出していつのまにか、六小をじっと
見てしまったことを話しました。それを聞いた六小は、
「フフッ、夢ちゃんたら昔から変わらないね。何かを、じぃーっと長い時間見つめる
のは。わたしを見つめてくれるのはうれしいけど、子どもたちのことも、ちゃんと見て
あげてね。みんな、一所懸命やってるから。昔、夢ちゃんたちが一所懸命やってた
ように。」
と、見つめられるのははずかしいと、少し照れながら言いました。
「うん、もちろん。みんな、一所懸命だね。フフッ、かわいい~。」
「そうでしょ。」
夢は、自分が小学生の時、運動会が楽しくてしかたなかったことを思い出し、
遠い日を見るように懐かしそうに子どもたちを見ていました。