新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

骨髄異形成症候群の説明(患者さん向け)

2012-03-17 12:07:26 | 医学系

こんにちは

 

先程、コメントで骨髄異形成症候群に関してのご質問をいただきました。僕は患者さんに対する説明はこんな感じでやっております。

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○○さんは今回血液の数値が少ないという理由でご紹介されました。先日の血液検査、骨髄検査である程度のことがわかってきましたのでご説明します。

 

○○さんの病気は「骨髄異形成症候群」という病気です。

 

血液の数値が少ない場合、いろいろな可能性があると思います。

 

悪い細胞が増えすぎて、他の良いものが作れない場合が「白血病」

血液のおおもとの細胞が少なくなってしまって血液を作る能力が落ちているのが「再生不良性貧血」。量が問題の病気です

で、今回の病気。骨髄異形成症候群というのは「質」が悪くなった病気です。血液の不良品ばかり作ってしまって、「こんなモノ出荷できるか」と骨髄の中で製品を壊してしまう(無効造血)病気です。

 

今回、○○さんは血液の数値が~~で、血液の病気、特に先ほど言った病気の中では再生不良性貧血と骨髄異形成症候群の可能性を疑い(実際はLDHなどの値から、推測はしてますけどね)、血液を実際に作っているところはどうかという検査をしました。骨髄の中で細胞が少ない場合は再生不良性貧血の可能性があり、骨髄の中で外には出てないけど壊される前の「異常な」細胞がある。要するに不良品の存在が明らかな場合は、骨髄異形成症候群という診断になります。

 

○○さんの検査の結果、このような「へんちくりん」な、普通の人の体の中にはいないような異常な細胞が多く認められました。要するに血液の異常は、不良品ばかり作るようになり出荷できなくなってしまったからです

 

病気の診断はつきました。

この骨髄異形成症候群には先ほど言った「不良品ばかり作ってしまって、血液がうまく作れない」ことによる血液の低下に加えて、実はもう一つ大事な性質があります。それは「前白血病状態」ということです。この病気で急性白血病に進展してしまう方がいらっしゃいます。

 

今の病気の状態に関して説明していきます。

骨髄異形成症候群という病気は先ほども述べましたが、骨髄という血液を作る工場で、血液の不良品ばかり作っているため貧血などがおきます。症候群と言われるのは、複数の種類があるからです。その種類分けはおおむね「骨髄の中の白血病細胞の割合」で分類します。

簡単に言うと「軽症(RA)」の段階から「白血病になりかけ、重症(RAEB)」、そしてさらに進行すると「急性白血病」というような分け方になります。

○○さんは今、骨髄異形成症候群の「××」という段階にあります。

 

もう一つ治療のために重要な分類方法があります。それはIPSSと呼ばれるものですが、この病気の「血液が作れない具合」「白血病になりかかっている具合」「遺伝子の異常具合(染色体異常ですけどね、本当は)」を調べて評価します。今の時点では、3つのうち2つしかわかっていないので(染色体検査の結果は3週間くらいかかる)、次の時にまた説明しますね。

 

今までのところでご質問はありますか?

 

では、次に大事な治療の部分に入っていきます。

 

この病気は「骨髄」という工場がダメージを受けて不良品を作るようになってしまいました。これを完治させる方法は、工場を完全に入れ替えるしかありません。すなわち、骨髄移植のみが唯一の完治させる方法です。

 

○○さんは年齢が(65歳以上か以下か…最近は高齢者のミニ移植(RIST)が流行らしいが・・・)なので、骨髄移植はできません。なぜなら、骨髄移植というのは魔法の治療ではなくてすごく危険性を伴う治療です。若い人でも骨髄移植をしたことによる死亡というのが出てしまいます。高齢になればなるほど危険は上がります。一般に70歳以上で移植をするということはありません

 

では、他にどういう治療があるかというと、病気とうまく共存していこうというスタンスの治療です。

一つは足りないものを補おうという「輸血」という治療です。これは対症療法というものに当たりますが、要するにつらいのであれば辛くない程度まで他の人の血をいただいて補いましょう…という考えです。あくまで一定の基準はあるのですが、輸血は少ないに越したことはないし、対症療法(つらいのを改善させる)なので○○さんの自覚症状と検査結果で考えていきます

 

保険上は認められているわけではないのですが、ビタミン剤(ビタミンK、ビタミンD3)による分化誘導という方法があります。これは要するに不良品を作っている状態に対し、「少しでもまともなものを作る」ように働きかける治療です。この治療はリスクもあまりありませんが、効果がすごくあるわけではありません。

 

他には免疫抑制剤という方法もあります。これは不良品を自分の免疫が「こんな不良品壊してやる」って壊してしまっているので、それを「壊さずに、残しておいてよ。不良品でも大事なんだから」という考え方です。壊させないようにして、不良品でもいいから使ってやろうという考えですね。免疫抑制剤を使用するので、今の白血球が少ない状況(感染しやすい)でさらに感染のリスクが上がります

他にも漢方薬(No48・・ツムラ。唯一国際雑誌 Bloodに効果が書かれている漢方薬ですね)を使用するなどの方法もあります。

 

ただ、病状が進行した場合、急性白血病に侵攻した場合は白血病に対する抗癌剤治療が必要です。また、悪性度の高い骨髄異形成症候群の場合は「アザシチジン」という薬が効果を発揮する場合があります

これらの治療は入院での治療が必要だったり、合併症で死亡する可能性もあるリスクの高い治療です。リスクの高い治療はよく考えて、本当にこれを行うことでリスクに見合うメリットがあるのかを考えなくてはなりません。

 

今の時点では○○さんの病状は~~ですから、リスクの高い治療ではなくて・・リスクの低い治療から開始して、様子を見て(経過を見る)、うまく共存していけるように一緒にがんばりましょう

 

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概ねこんな感じですかね。説明に30分から1時間かかるので、だいたい外来日以外の日(いつも水曜日の午後でしたね、僕は)に初診の患者さんの説明をしていました。

 

参考程度ですが、専門用語をできるだけ使わずにいつもこんな感じで説明しています。

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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それでは、また。

 


 

2017年にアップデートしました

僕の骨髄異形成症候群の説明の仕方(患者さん用)

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医療ニュースいろいろ:新たな可能性

2012-03-17 11:52:46 | 医療

こんにちは

 

昨日は職場の送別会(規模大きい)でした。3次会まで例のごとく残り(お酒が好きというよりも、飲み会が好きな人です)2時過ぎまで飲んでいました。まぁ、最後はカラオケでしたけど。

 

さて、先ほどコメントをいただいた県を書こうかとも思ったのですが、先に記事の紹介をしてしまおうと思います。

 

3つ紹介します

 全国医師ユニオンの植山直人代表は13日、キャリアブレインの取材に応じ、4月以降に勤務医の労働実態の調査を予定していることを明らかにした。結果の公表は秋を目指す。日本医療労働組合連合会(医労連)などと協力し、診療報酬改定などの国の政策が、本当に勤務医の負担軽減につながったかを検証する。

 勤務医の労働実態調査は、医労連が2007年に実施。勤務医の宿直明け勤務の有無や、一週間の労働時間、時間外労働の長さについて、33都道府県の1355人が回答した。

 植山氏は、「政府も厚労省も、診療報酬改定の時に勤務医の負担減を図ると言っているが、ほとんど成果が出ていない可能性がある」と指摘。07年調査と比較して勤務医の負担が軽減したかどうかを測るため、今回の調査にも同じ質問を盛り込むほか、07年以降に国が勤務医の負担を軽減するために行った政策の効果を検証する質問を新設するという。
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多分、目立った効果は上げていないだろうと思います。去年まで働いていた実感から。あと、他の病院の先生方などの話も聞いたうえでですね。
 
何かをしたら「評価」をする必要がありますので、大事な試みだと思います。結果を待ちたいです。
 
 富大附属病院は15日までに、最先端のがん診断が可能となる「次世代PET―CT装置」を中部地方の医療機関で初めて導入した。画像撮影時間は従来の半分に短縮される上、より小さながん腫瘍(しゅよう)を発見できるのが特徴。同病院は新しい装置を有効活用し、分子レベルの治療に役立てたい考えである。

 装置はドイツ・シーメンス社の最新型で、設置費用は約2億6千万円。がんの活性度や悪性度などを診断できるPET(陽電子放射断層撮影)とがんの形や大きさが分かるCT(コンピューター断層撮影)を行う。撮影時間は計10~15分程度。画像の感度が向上したほか、リンパ節に転移したがん腫瘍については、従来の半分の大きさの5ミリでも判別が可能となった。

 患者が入る装置の口径は、閉所恐怖症や肥満気味の利用者にも対応できるよう従来より20センチ大きい77センチとなった。CTは体を40列にスライスして診断する方式で、放射線被曝の低減化も図った。

 次世代PET―CT装置は、4月1日から一般向けの検診に活用する。1日6人程度の検診が可能で、一般の検診費用は9万750円。

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PET-CTに過剰に期待してはいけませんが、たまにPET-CTでの健診で悪性リンパ腫疑い(実際そうでしたが)と紹介されてきた患者さんもいましたね。次世代PET-CT、機械がよくなると診断精度が上がってくるのでより小さなものを見つけることができるかもしれませんが、過剰に拾いすぎる(じっさい、PET-CTで陽性ながら再発にしてはおかしいと1年以上経過を見て、何もなかった方もいました)可能性もありますね。
 
 
脊髄の損傷で後ろ足が動かなくなったマウスにヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から分化させた神経幹細胞を移植し、機能を回復させる実験に、奈良先端科学技術大学院大学(生駒市高山町)の中島欽一教授らの研究グループが成功した。脊髄損傷患者の治療につながる技術として注目されている。

 iPS細胞は体のすべての細胞に分化でき、再生治療への応用が期待されている…

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ヒトのiPS細胞が種の枠を超えたということか?
 
書き間違いのような気はしますが、いずれにせよiPS細胞による治療の可能性が出てきているのはよいことだと思います
 
 

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