こんにちは
先程、コメントで骨髄異形成症候群に関してのご質問をいただきました。僕は患者さんに対する説明はこんな感じでやっております。
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○○さんは今回血液の数値が少ないという理由でご紹介されました。先日の血液検査、骨髄検査である程度のことがわかってきましたのでご説明します。
○○さんの病気は「骨髄異形成症候群」という病気です。
血液の数値が少ない場合、いろいろな可能性があると思います。
悪い細胞が増えすぎて、他の良いものが作れない場合が「白血病」
血液のおおもとの細胞が少なくなってしまって血液を作る能力が落ちているのが「再生不良性貧血」。量が問題の病気です
で、今回の病気。骨髄異形成症候群というのは「質」が悪くなった病気です。血液の不良品ばかり作ってしまって、「こんなモノ出荷できるか」と骨髄の中で製品を壊してしまう(無効造血)病気です。
今回、○○さんは血液の数値が~~で、血液の病気、特に先ほど言った病気の中では再生不良性貧血と骨髄異形成症候群の可能性を疑い(実際はLDHなどの値から、推測はしてますけどね)、血液を実際に作っているところはどうかという検査をしました。骨髄の中で細胞が少ない場合は再生不良性貧血の可能性があり、骨髄の中で外には出てないけど壊される前の「異常な」細胞がある。要するに不良品の存在が明らかな場合は、骨髄異形成症候群という診断になります。
○○さんの検査の結果、このような「へんちくりん」な、普通の人の体の中にはいないような異常な細胞が多く認められました。要するに血液の異常は、不良品ばかり作るようになり出荷できなくなってしまったからです。
病気の診断はつきました。
この骨髄異形成症候群には先ほど言った「不良品ばかり作ってしまって、血液がうまく作れない」ことによる血液の低下に加えて、実はもう一つ大事な性質があります。それは「前白血病状態」ということです。この病気で急性白血病に進展してしまう方がいらっしゃいます。
今の病気の状態に関して説明していきます。
骨髄異形成症候群という病気は先ほども述べましたが、骨髄という血液を作る工場で、血液の不良品ばかり作っているため貧血などがおきます。症候群と言われるのは、複数の種類があるからです。その種類分けはおおむね「骨髄の中の白血病細胞の割合」で分類します。
簡単に言うと「軽症(RA)」の段階から「白血病になりかけ、重症(RAEB)」、そしてさらに進行すると「急性白血病」というような分け方になります。
○○さんは今、骨髄異形成症候群の「××」という段階にあります。
もう一つ治療のために重要な分類方法があります。それはIPSSと呼ばれるものですが、この病気の「血液が作れない具合」「白血病になりかかっている具合」「遺伝子の異常具合(染色体異常ですけどね、本当は)」を調べて評価します。今の時点では、3つのうち2つしかわかっていないので(染色体検査の結果は3週間くらいかかる)、次の時にまた説明しますね。
今までのところでご質問はありますか?
では、次に大事な治療の部分に入っていきます。
この病気は「骨髄」という工場がダメージを受けて不良品を作るようになってしまいました。これを完治させる方法は、工場を完全に入れ替えるしかありません。すなわち、骨髄移植のみが唯一の完治させる方法です。
○○さんは年齢が(65歳以上か以下か…最近は高齢者のミニ移植(RIST)が流行らしいが・・・)なので、骨髄移植はできません。なぜなら、骨髄移植というのは魔法の治療ではなくてすごく危険性を伴う治療です。若い人でも骨髄移植をしたことによる死亡というのが出てしまいます。高齢になればなるほど危険は上がります。一般に70歳以上で移植をするということはありません。
では、他にどういう治療があるかというと、病気とうまく共存していこうというスタンスの治療です。
一つは足りないものを補おうという「輸血」という治療です。これは対症療法というものに当たりますが、要するにつらいのであれば辛くない程度まで他の人の血をいただいて補いましょう…という考えです。あくまで一定の基準はあるのですが、輸血は少ないに越したことはないし、対症療法(つらいのを改善させる)なので○○さんの自覚症状と検査結果で考えていきます。
保険上は認められているわけではないのですが、ビタミン剤(ビタミンK、ビタミンD3)による分化誘導という方法があります。これは要するに不良品を作っている状態に対し、「少しでもまともなものを作る」ように働きかける治療です。この治療はリスクもあまりありませんが、効果がすごくあるわけではありません。
他には免疫抑制剤という方法もあります。これは不良品を自分の免疫が「こんな不良品壊してやる」って壊してしまっているので、それを「壊さずに、残しておいてよ。不良品でも大事なんだから」という考え方です。壊させないようにして、不良品でもいいから使ってやろうという考えですね。免疫抑制剤を使用するので、今の白血球が少ない状況(感染しやすい)でさらに感染のリスクが上がります。
他にも漢方薬(No48・・ツムラ。唯一国際雑誌 Bloodに効果が書かれている漢方薬ですね)を使用するなどの方法もあります。
ただ、病状が進行した場合、急性白血病に侵攻した場合は白血病に対する抗癌剤治療が必要です。また、悪性度の高い骨髄異形成症候群の場合は「アザシチジン」という薬が効果を発揮する場合があります。
これらの治療は入院での治療が必要だったり、合併症で死亡する可能性もあるリスクの高い治療です。リスクの高い治療はよく考えて、本当にこれを行うことでリスクに見合うメリットがあるのかを考えなくてはなりません。
今の時点では○○さんの病状は~~ですから、リスクの高い治療ではなくて・・リスクの低い治療から開始して、様子を見て(経過を見る)、うまく共存していけるように一緒にがんばりましょう。
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概ねこんな感じですかね。説明に30分から1時間かかるので、だいたい外来日以外の日(いつも水曜日の午後でしたね、僕は)に初診の患者さんの説明をしていました。
参考程度ですが、専門用語をできるだけ使わずにいつもこんな感じで説明しています。
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。
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それでは、また。
2017年にアップデートしました