こんばんは
昨日は雨だったので家の中で論文書いたり、嫁さんと話したりしておりました。今日は以前から気になっていた「悪の経典」の映画を見に行きました。
ネタバレはしませんが・・・僕の中では原作が面白かったので、ちょっと…と思いましたw
おおむね面白い原作の本を映画化するとうまくいきませんよね。特に長編のものは・・・。難しいですよね。
さて、本日は少し溶血性貧血に関して書いてみようと思います。
よく貧血というと「鉄欠乏性貧血」など、材料が足りないことで起こるものを思い出す方がいらっしゃると思います。鉄以外にも「ビタミンB12 」「葉酸」などが足りなくても貧血は生じます。
材料が足りない以外にどのような理由で貧血が生じるかというと、工場である「骨髄」に何かが起きた時です。例えば白血病などの腫瘍性病変があれば、工場の稼働率が悪くなってしまい貧血が進行します。
他にも再生不良性貧血のように「工場」が減少(造血幹細胞が減少)したり、骨髄異形成症候群のように不良品ばかりできるため出荷できないようなものもあります。
溶血性貧血というのは基本的には正常なものができるのに、出荷後に外で壊されてしまうから貧血が起きるものを言います。基本的にと書いたのは「先天性溶血性貧血」というものがあります。
先天性の場合だと大人というよりは小児の疾患で、僕はたまたま会社に入る時の健康診断で指摘されて受診されたひとを診ましたが、どちらかというと小児科で見られることが多いです。
あとは発作性夜間血色素尿症という造血幹細胞レベルで防御力が低下してしまい、ちょっとした変化で赤血球が壊れてしまう病気もあります(赤血球の表面にある『補体』を抑える物質をつなぎとめられなくなることで起きます)。
しかし、ここでは自己免疫性溶血性貧血を中心に書いていきます。
本来赤血球は120日の寿命がありますが、溶血性貧血ではそれよりも早く壊れてしまいます。そのため、工場は赤血球を大増産状態です。そして賄えなくなると貧血になっていきます。外で壊れる原因にもいろいろあり、先ほどから書いている赤血球に問題があるもの、そしてたとえば心臓の手術で人工弁が入ると、そこで機械的に赤血球が壊れて溶血します。この場合、よっぽどひどくなければ貧血にならないかもしれませんが溶血はします。
自己免疫性溶血性貧血というのはこの外で壊れる原因が、自分の抵抗力にあるものを言います。要は自分で自分の赤血球を壊してしまっている病気です。自己抗体という赤血球を壊してしまう物質を作ってしまいます。本当は抗体というのは体を守る物質なんですが、なんかの拍子に自分の中のものを壊すことがおきたりします。
赤血球が壊れると、赤血球の中にあるヘモグロビンがビリルビンという「黄疸」の原因物質になるので、黄疸が生じます。また、それらは胆石の原因になったりします。貧血が生じれば息切れなどの症状も出てきます。
さて、自己免疫性溶血性貧血には基本的に「温式」と「冷式」があります。温式は体の内部の温かいところ…具体的にいうと脾臓で壊されるタイプです。冷式というのは体温が低いところ、具体的にいうと指先や耳たぶなどで生じます。
温式と冷式にこだわる理由はいろいろあるのですが、基本的には温式抗体が原因の溶血性貧血は
1、ステロイドによる免疫抑制療法が効きやすい
2、上記が効かなくても脾臓を取れば壊される場所がなくなるので改善する
ことが多いです。
逆に冷式抗体だと基本的にはステロイドは効きにくいし、壊れる部分が四肢末梢なので脾摘は無効です。まぁ、体を温めておけばよいのですが、なかなか難しいですよね。手袋や耳あてをして保温に努めるのが一番です。
一応、冷式抗体の一つ寒冷凝集素症の患者さんにRituximab(リツキサン)が効くという報告もあり、2人の患者さんと相談してやったことがありますが効果はあったように思います。ただ、温式抗体のようにてきめんというわけではなく、費用対効果が厳しいと言われました。
温式でもステロイドを切れるかどうかはわからないです。溶血性貧血の試験の一つにクームス試験というのがありますが、これが陰性になってから僕は切ってますが、そういう患者さんは再発していません(今のところ)。けど、だいたい2.5㎎前後で溶血し始めたりするんですよね。
ということで、今日は溶血性貧血の話でした。
P.S 2017年に新しく更新した記事も参考にしてみてください
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。