「スティーブ・ジョブズ」伝記本はものすごい勢いでベストセラーになったらしいけど…すまん、読んでない。
←どうか健康を大切にしてほしい(個人の感想です)
「驚異のプレゼン」のほうは読んだ。内容もたいへんおもしろかったし、翻訳もすごいよくできてるなと思った。私の「推し」はスティーブ・ジョブズではなくて、翻訳者の井口耕二のほうなので…
今回、読んだのは「「スティーブ・ジョブズ」翻訳者の仕事部屋」(井口耕二著)
井口氏は、私の友人の夫であり、そして私が会社員のころは(仕事の領域は遠いけど)同じ業界の人だった。同じ回の「JTF翻訳祭」にスピーカーとして参加していたこともある。
知り合ったきっかけは、井口氏が「育児退職」した関係だけれども、その話はまた別記事に譲るとして、とにかく「スティーブ・ジョブズ」伝記本を世に送り出したときの話がすさまじかったのでそのご紹介。
書籍の世界同時発売というのはどういうことかというと、原文(この場合英語)のまま出版する国はいいとして、他の国では翻訳する時間が必要となる…しかし本というのは中身の鮮度というか時機が非常に重要なのだから、翻訳のための期間を悠長に取っていていいものでもない、と…
つまり…??
殺人的なスケジュールで翻訳していかなくてはいけないということ。(「殺人的」と書いたが実際あまり比喩でない)
もちろんそのことは意外でもなんでもなく、井口さんだって引き受ける前からわかっていたことだけれど、それでも引き受けたいと思う仕事だったから積極的に取りに行ったわけです。ジョブズ本は売れる見込みがあるだけに、翻訳出版権の取り合いも熾烈だったらしいが、それで決まった会社が、特に井口さんがそれまで付き合いのあった会社ではなかった。そこへ井口さんが名乗りを上げて、別のジョブズ本の翻訳実績があることと、それからたぶん…手土産にした鹿角が効いたのかな?
鹿角というのは、鹿が落としていった角を探して拾うという「趣味(?)」によって井口さんがたくさん所有していたものなんだけど、その中で小ぶりで形のいいものを選んで打ち合わせに持参したそうだ。まぁ意表を突く、印象に残るという意味もあるけど、そんなあてもなく野山を駆け巡るようなことができるメンタリティーと体力。そう、最後は体力、としかいいようがない過密日程になるのでそこが大事だったんじゃないのかなぁ(個人の推測です)
当初の予定では、11月21日刊行、分量は15万ワード、原文が届くのは6月半ばということで、そもそもが出版翻訳の常識的なスケジュールを大きく逸脱している案件だったんだけれど、翻訳の怖いところはなかなかどうしてその予定どおりにすら行かないというところ。
・原文が届くのが遅れる(それも大幅に)
・言ってたのより分量が多い(それも大幅に)
・あとから原文が追加・変更される
…そして刊行日は絶対延びない。
ハイ。私の関わっていた(産業)翻訳でもそのへんのことは日常茶飯事だったのでなんとなくわかります。でもそれだけじゃなかった! 原文が機密保持のためといって紙で来るとか、同じ理由で翻訳原稿のメール送付が禁止だとか…そして極めつけが
ジョブズの死により刊行前倒し(o_O)
え??? いやいやいや現状も無理へんに無理かさねて突っ走っているのにそんな…でも、やるっきゃないんですよね??
翻訳期間を縮めるためのワザはいくつかあることはあるけど、いずれも「質」とのトレードオフになるもの。そこをかいくぐって、あるいは努力と根性と智慧で、質をなんとか確保しつつ突貫工事。優れた翻訳者がほかにいないわけじゃなくても、こんな離れ業ができるのは他にいない(たぶん)。少なくとも、やりたい、かつ、やれる人はいない。そんな井口さんでも、終了時には抜け殻というか体調絶不調になって、打ち上げの飲みもできない(吐いてしまう)ぐらいだったそうなんだけど、まさに命を削るとはこのこと。
こんなこと一生に一度で十分ですよね? え、またやったの!? (イーロン・マスク)
この本では、最初の1/3強がジョブズ本翻訳の顛末に割かれているのですが。その中で書かれているいろいろな工夫がそもそもどうして成り立ったのか(と、読んでて不思議に思うだろうと思います)ということについては本の後半でおいおい腑に落ちてくるでしょう。
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「驚異のプレゼン」のほうは読んだ。内容もたいへんおもしろかったし、翻訳もすごいよくできてるなと思った。私の「推し」はスティーブ・ジョブズではなくて、翻訳者の井口耕二のほうなので…
今回、読んだのは「「スティーブ・ジョブズ」翻訳者の仕事部屋」(井口耕二著)
井口氏は、私の友人の夫であり、そして私が会社員のころは(仕事の領域は遠いけど)同じ業界の人だった。同じ回の「JTF翻訳祭」にスピーカーとして参加していたこともある。
知り合ったきっかけは、井口氏が「育児退職」した関係だけれども、その話はまた別記事に譲るとして、とにかく「スティーブ・ジョブズ」伝記本を世に送り出したときの話がすさまじかったのでそのご紹介。
書籍の世界同時発売というのはどういうことかというと、原文(この場合英語)のまま出版する国はいいとして、他の国では翻訳する時間が必要となる…しかし本というのは中身の鮮度というか時機が非常に重要なのだから、翻訳のための期間を悠長に取っていていいものでもない、と…
つまり…??
殺人的なスケジュールで翻訳していかなくてはいけないということ。(「殺人的」と書いたが実際あまり比喩でない)
もちろんそのことは意外でもなんでもなく、井口さんだって引き受ける前からわかっていたことだけれど、それでも引き受けたいと思う仕事だったから積極的に取りに行ったわけです。ジョブズ本は売れる見込みがあるだけに、翻訳出版権の取り合いも熾烈だったらしいが、それで決まった会社が、特に井口さんがそれまで付き合いのあった会社ではなかった。そこへ井口さんが名乗りを上げて、別のジョブズ本の翻訳実績があることと、それからたぶん…手土産にした鹿角が効いたのかな?
鹿角というのは、鹿が落としていった角を探して拾うという「趣味(?)」によって井口さんがたくさん所有していたものなんだけど、その中で小ぶりで形のいいものを選んで打ち合わせに持参したそうだ。まぁ意表を突く、印象に残るという意味もあるけど、そんなあてもなく野山を駆け巡るようなことができるメンタリティーと体力。そう、最後は体力、としかいいようがない過密日程になるのでそこが大事だったんじゃないのかなぁ(個人の推測です)
当初の予定では、11月21日刊行、分量は15万ワード、原文が届くのは6月半ばということで、そもそもが出版翻訳の常識的なスケジュールを大きく逸脱している案件だったんだけれど、翻訳の怖いところはなかなかどうしてその予定どおりにすら行かないというところ。
・原文が届くのが遅れる(それも大幅に)
・言ってたのより分量が多い(それも大幅に)
・あとから原文が追加・変更される
…そして刊行日は絶対延びない。
ハイ。私の関わっていた(産業)翻訳でもそのへんのことは日常茶飯事だったのでなんとなくわかります。でもそれだけじゃなかった! 原文が機密保持のためといって紙で来るとか、同じ理由で翻訳原稿のメール送付が禁止だとか…そして極めつけが
ジョブズの死により刊行前倒し(o_O)
え??? いやいやいや現状も無理へんに無理かさねて突っ走っているのにそんな…でも、やるっきゃないんですよね??
翻訳期間を縮めるためのワザはいくつかあることはあるけど、いずれも「質」とのトレードオフになるもの。そこをかいくぐって、あるいは努力と根性と智慧で、質をなんとか確保しつつ突貫工事。優れた翻訳者がほかにいないわけじゃなくても、こんな離れ業ができるのは他にいない(たぶん)。少なくとも、やりたい、かつ、やれる人はいない。そんな井口さんでも、終了時には抜け殻というか体調絶不調になって、打ち上げの飲みもできない(吐いてしまう)ぐらいだったそうなんだけど、まさに命を削るとはこのこと。
こんなこと一生に一度で十分ですよね? え、またやったの!? (イーロン・マスク)
この本では、最初の1/3強がジョブズ本翻訳の顛末に割かれているのですが。その中で書かれているいろいろな工夫がそもそもどうして成り立ったのか(と、読んでて不思議に思うだろうと思います)ということについては本の後半でおいおい腑に落ちてくるでしょう。
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