7月13日(金曜日)
昨晩は3時まで府の広報誌に掲載されるコラムを書いていたが、自分のへたっぴさにあきれ果て、リビングのソファにうつ伏せのまま、ため息。そのまま目をつむったら寝てしまい、90分して目が覚めたが、気合いを入れる気にならず、寝室で寝た。
翌朝の13日の金曜日は、だから半ば諦めとやけっぱちな気持ちで目覚めたのだった。
それでも、本日は締め切りである。
昨晩までの自分を、キレイさっぱりと捨てさって、新しい気持ちで書き始める。
編集と書き直しを2週したら、いつもの調子が戻ってきて、ほっと胸をなでおろす。どこがどう下手だったのか、内容が薄かったのか、粗末な味が、わかってきたらあとはどうにかなるのである。
こんな時、きまって思い出すのはこんな父の一言だ。
「料理は舌だ。味のわからないやつには、旨いものは出せない」
文の良し悪しが、それでもわかったのなら、もう少しやれるか。そう胸に手を当てて思い、もう一度はじめから見直して昼一には提出した。
その足で淀屋橋の美容室へと出かける。
「アトリエ・スタンズ」は、私が大丸でコピーを書いていた頃から通い続けているのだから、ざっと20年は同じ美容師さんの元へ、こうして出かけることになっている。我ながら、飽きもせず誠実だ。
カリスマ美容師といわれ、パリコレのヘア・メイクも担当したこともあるT氏。彼のファッションセンスと少年みたいな好きなものへのこだわりと好奇心と、ヘアメイクへの限りない自信(誇り)みたいな所がまぁ好きなんだろう。
60〜70年代のクラシックなスピーカーから、この日もご機嫌のサウンドをたくさん聴かしてくれた。元々はデザイナーが4人体制でスタンバイする賑やかな美容室だったが、今は場所を替えてヘアデザインを担当するのはT氏だけで、あと鳥取出身の身長149センチのシャンプーがすこぶるうまいアシスタント嬢のみ。
ストレスになるような要素が何一つみつからない、居心地良い店だと思う。ヘアダイの後のシャンプーはルベル化粧品の一番ランク上の、南国の花の香り。
施術も丁寧だ。カット&シャンプーに、黒にほんの少しの緑とオレンジを混ぜたヘナで毛染めして約4時間を過ごす。
外へ出たらすっかり夏の夜が舞い降りていた。
夏の夜の散歩。
風があまりにも心地いいので、淀屋橋のオフィスビルや中之島フェスティバルホール、その周囲のビルのライトアップ、川面に映るキラキラした夜のとばりをみて歩き、西梅田方面へ。
北新地の雑居ビルからは、きれいなお姉さんや酒によったサラリーマンたち。なじみの花屋やケーキ屋も数年前と変わらずまだあるのに安堵し、ハービス大阪まで歩く。
イタリアンカフェ「アンティコカフェ アルアビス」へ立ち寄り、せっかくなのでカプチーノとエクレアを食べて、持ってきた本を少しだけ読み、リセット。
明日も暑いぞ。帰ろう。
このところ、大阪へ出たついでに、よく映画を観る。
先日は「セラヴィ!」を。
そして一番新しいところでは「ケッペルスと私」。
ちょっと前には、河瀬直美監督の「Vision」も。
あの独特の映画視点をもう1本観たくて「殯の森」と続けて観たら、頭がくらくらして、とても依頼原稿など集中してやる気になれず、現実へ向かうのに時間がかかった。
ともかく夏の夜は、ふわりふわりと頬をなでる、ほんのり潮っぽい風が昔から好きで、よく散歩をする。
大阪も、ずいぶんと無機質で都会的な町になったものだ。時々、立ち止まって見惚れる景観にいくつも出会う。
水のある街は、とても豊かに思う。