昨日に続いて、車の話題です。
今年の2月の記事で取り上げた、アルファロメオの、やや小型の(Cセグメント)SUV、トナーレ。
アルファのブランドが世界戦略車として位置付けて、鳴り物入りでデビューしたはずだったんですが…
あれから8か月経ったのに、私は街中で一度も見かけたことがありません。
明らかに、ぜんぜん売れてない。
少なくとも日本のマーケットでは、大失敗の大はずしになっているのではないかと。
これはヤバいかも…といっても、日本の市場が世界の中で占める割合はそれほど大きくはないので…
アルファロメオのブランド自体の危機かどうかは、わかりません。
日本の主要自動車メーカーだって、国内向けの販売は全生産量の10%にも満たないのですから。
まあ、北米市場と欧州市場、それから中国でどれだけ売れているのかが重要なのでしょうけれど。
特に日本市場というのはご他聞にもれずガラパゴス状態で、ユーザーの嗜好が特殊であるようなので。
たとえば日本ではもう、セダン(サルーン)という車種は絶滅寸前なのに…
北米や欧州、中国では今でも普通に販売・購入され、使われているというのがその一例です。
それでも、アルファの「トナーレ」が日本のユーザーから完全にそっぽを向かれているのは確かであって。
世界一SUVが大好きな国民性なのに、どうして売れないんでしょう。
もっと大型のアルファ製SUVである「ステルヴィオ」も、正直言ってあまり見かけません。
それよりはセダンの「ジュリア」の方がずっと多い感じ。
アルファロメオに求められているものはSUVではなく、走りの面でスポーティーなイメージの車なのか。
それともやっぱり「イタリア車ポンコツ伝説」のせいなんでしょうかね。
特にSUVを好むような層には、イタリア車に対する偏見が強いのでしょうか。
そんな中、日本でSUVと並んで大人気の車種、ミニバンの仲間に入るイタリア車が発売されました。
フィアットのブランドから出ている「ドブロ」という車です。
サイズ的には、トヨタの「ノア」(下の写真)なんかとほぼ同じぐらいのようです。
ドブロが日本のユーザーに受け入れられるかどうかが…
アルファロメオ・トナーレの失敗が、イタリア車全体の不人気なのかどうかの指標になるのかも。
こちらがドブロのバックスタイル。
いずれにしても、日本のミニバンにはない、ポップでかわいいスタイルが「売り」なのでしょう。
トヨタ・ノアに比べると100万ほど割高の、300万円台後半から400万円をちょっと出るくらいの価格。
それで「見た目かわいいミニバン」が売れるかどうか。
日本のミニバンは、クロームメッキの、押し出しが強いフロントグリルなどが目立っているものが多く…
いわば「オラオラ系」のイメージがあるのですが。
ミニバンを使いたいけれど「オラついた」外観がいやな層も、一定はいるみたいです。
その証拠に、ルノーの「カングー」は、欧州のルノー社が驚くほど、日本で売れました。こちら。
「カングー」は本来、商用車として開発されたものがベースなのですが…
その乗用車仕様が、日本では個性的でポップなイメージの「フランス製ミニバン」としてウケたようです。
ルノー・カングーの成功に乗っかって…
フィアット・ドブロに先立ち、同じ「ステランティス・グループ」から…
シトロエンのブランドで「ベルランゴ」と…
プジョーのブランドで「リフター」という…
ドブロの「兄弟車」が日本でデビューしています。
そして、それなりの成功を収めています。
これらの3車種は、同じ車台と同じエンジン、そしてほぼ同じ足回りを持ったものです。
そう。もはやイタリア車のフィアットも、フランス社のプジョーやシトロエンも…
同じ生い立ちと造りを持った車になっているのです。
実際に評論家が試乗した、日本仕様車のロードインプレッションでも…
プジョー・リフターが、ややスポーティー寄りの味付けであるものの…
シトロエン・ベルランゴとフィアット・ドブロは、限りなく似た走りを見せると報じられています。
この時代、イタリア車だからどうのとか、フランス社だからどうの、というのはもはや無意味で…
同じ「欧州車」というくくりで見るべきであるのが、はっきりしています。
フィアット・ドブロの日本仕様車は、1.5Lのディーゼルターボエンジンのみの設定で…
兄弟車のベルランゴ、リフターに比べると、価格が低く抑えられていて…
その分、内装がやや簡素な造りになっているみたいです。
ルノー・カングーの、ほぼ近い仕様と比べても、ほんの少し安い値段設定。
これで「全く売れない」ということで失敗したら…
車の内容や価格が問題なのではなくて、ディーラーの力が無さすぎるのか…
もしくは、やっぱりフィアット=イタリア車のバッジを付けているせい、ということになりますね。
実際はプジョーやシトロエンと同じ素性の車なのに、それでも売れないとなったら…
日本における「イタリア車ポンコツ伝説」の威力がいかに絶大かということ、そして…
根拠の全くない「都市伝説」だということが、はっきりします。
日本人は、フランスという国やフランス人に対しては…
それなりのリスペクトがありますけれど…
イタリアやイタリア人、イタリアの製品については、下に見てバカにしているところがあります。
その偏見がどこから来たのかについては、以前にこちらの記事に書いた通りです。
その偏見が今現在どのくらい強いのか…
フィアット・ドブロが売れるかどうかを指標に、注目してみたいです。
*追記
フィアット・ドブロの日本仕様はディーゼルエンジン車ですが、西欧ではいまやEV仕様だけしか販売されていないとのことです。
日本ではまだまだ普及していないEV。国内の乗り物に関するネットメディアや、YouTubeチャンネルでは「EVは普及しない」「EVは必ず失敗する」と報じられていますけれど…
欧州や中国の交通状況を実際に目にすると、既に「ここまで普及しているのか」と驚く状況のようです。
日本語メディアが、いかに海外のことを伝えてくれていないか。ちょっと恐ろしいことです。