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アルファロメオと小倉唯

逆らわない「良い子」がおとなになって

最近円安のせいで、海外事情を自分の目で見る日本人が、減ったのではないかと思います。

 

「海外旅行なんて必要ない。日本にはまだ見るべきところがいっぱいある」ですって?

 

いやいや、そうじゃないです。

 

海外を旅することの一番の意義は「日本にない景色」を見ることではない。

 

日本社会以外の社会を、メディアの情報ではなく、自分自身の目で見て来ること。

 

広い世界にある、様々なものやことを、見聞すること。

 

外側から日本を見直してみること。

 

その体験が、何より貴重なんです。

 

そうでないと自分の社会を相対的に評価することができない。

 

ということは、日本の本当に良いところも、悪いところも分からない。

 

だから、海外に行ってみることに意義があるんです。

 

円安や、諸外国との物価上昇率の差で、日本はすっかり「安い国」になり…

 

外国人の日本での観光、飲食や買い物がしやすくなった結果…

 

インバウンドで「来る人」がドカンと増えました。

 

結果、観光地が外国人だらけで混雑し過ぎ、迷惑だ(オーバーツーリズム)とか…

 

外国人が品性も何もなく「爆買い」するのが、見苦しいとか言われていますけれど…

 

これ、バブル全盛期を挟む20年間ぐらい、日本人が西欧や米国で言われていたことと、全く同じです。

 

経済が興隆し通貨が強くなって来た国が皆通る道なのかもしれません。

 

つまり1980年代~90年代と今とでは、日本人の立場が逆になってしまったんですね。

 

円が50年以上前より弱くなってしまった現状では、意義のある「海外を体験する」ことが出来ない。

 

「来る人」ばかり増えて「行く人」が減ってしまった。

 

現状それは、仕方がないのでしょう。

 

でも、マスコミの人間の目や耳や頭というフィルターを通していない…

 

統計やアンケート調査の、生の数字を通して、日本の、相対的な実情を知ることはできます。

 

(日本では経済統計の改ざん問題が発覚し、信用を落としてしまいましたが)

 

日本を世界と比べたときに、著しく目立つ統計のひとつとして、以前取り上げたことがあるのは…

 

「社会的に弱い立場の人は、国・行政が責任を持って助けるべきだ」

 

この考えを持つ人の割合が日本では世界一少なくて…

 

しかも下から2番目の国と、びっくりするような大差がついている、ということでした。

 

「自己責任」大好きな国民性が現れているのですけれど、これは我々にとっては普通でも…

 

世界の他の人たちからみると異様なことだというのを、紹介しました。

 

もうひとつ、諸外国とものすごく顕著な差が見られることが、教育について見つかったので紹介します。

 

 

それは初等・中等教育の場で「批判的思考を育てる」ことをしているかどうか、という点です。

 

OECD(経済協力開発機構)では5年に1回、加盟国(と地域)に…

 

非加盟国(と地域)10数件を加えて「TALIS」=国際教員指導環境調査というものを実施しています。

 

結果がまとまっている、一番最近の調査は、2018年に行われたもの。

 

そちらで、非常に気になる項目があるのです。

 

それは「批判的に考える必要がある課題を与える」という教育を、行っているかどうか。

 

まず、中学校での調査結果です。

 

非常に細かくて申し訳ないのですが。

 

 

赤い線で囲まれたところが、それを「しばしば」または「いつも」実践していると答えた…

 

中学校教員のパーセンテージです。

 

日本は12.6%となっています。これは調査を実施した48か国の中で最下位。

 

ブービーはフィンランドですが、それでも37.2%で日本の約3倍あります。

 

参加48か国と地域の平均は、61.0%で、日本の約5倍。

 

そしてこちらは小学校での実践率。

 

 

こちらは15か国に限られた調査ですが、日本は11.6%でこちらも圧倒的?最下位。

 

批判的に考えること、クリティカルシンキングは「健全な社会人」を育てるのに不可欠な…

 

非常に重要な要素だと、教育学では考えられています。

 

特に民主主義の国では、主権者である国民を育成するために一番大切なことのひとつです。

 

それが日本ではびっくりするぐらい実践されていない。

 

もうここまで来ると「わざとやっていない」のではないかとさえ思えるほどです。

 

それはそうですよね。先生のいうことを素直に聞きなさい。

 

教科書は、絶対に正しいのです。

 

「校則」は既に決まっている絶対のルールですから、四の五の言わず守りなさい。

 

そういう教育環境ですから。

 

教師(権威者)のいうことを黙って聞き、受け入れる、おとなしい羊の群れを養育しているような…

 

そんな日本の教育ですから。

 

「批判的思考」など教えたくない、というのがホンネなのかも。

 

それは教師ではなく、教育行政からの要請、教育プログラムに組み込まれたものかもしれませんが…

 

その中で育てられた教師の頭も、すっかりそのやり方に洗脳されているのですから。

 

教えようと思っても難しいのかも。

 

 

しかも、教室ではきちんと「議論」するやりかたも教えてもらえない。

 

(なので、日本人同士だと、議論ではなくすぐに「口喧嘩」になってしまいます)

 

生徒個人の「意見」や「主張」を大事にしてもらえていない。

 

学校では「憶えること」だけが強制されて「考える力」が育たない。

 

その場限りの知識だけ詰め込まれて…

 

なんなら「定期試験が終わったら、入試が終わったら、忘れていい」とまで言われる。

 

それじゃあ、教育とは、学校とは、学問とは、何のためにあるんですか?

 

ただ単に「成績」と「学歴」で、社会の中で人間を差別化するため?

 

それこそ、学問の軽視であり、知というものを無視した態度。「反知性主義」ですよ!

 

すみません。ちょっと脱線しました。とにかくこんな具合で、日本の教育では…

 

物事を批判的に見ることも、客観的な分析も、思考も、個性も、育てられないんです。

 

これは、教室だけに限定されるものではなく、私たちの社会では隅々にまで行き渡っている…

 

普遍的な「あるべき姿」とされ「道徳」と化してしまっているのです。

 

家庭では「親のいうこと」に黙って従いなさい…

 

部活動では「顧問やコーチのいうこと」に黙って従いなさい…

 

勤めに出るようになったら「上司の命令」に黙って従いなさい…

 

もっと広げれば「政府の決めたこと」には文句を言わず従って…

 

不都合や不合理、理不尽、つらいことがあってもみんな我慢して耐えなさい、という具合になっている。

 

おとなしい羊の群れのような、従順で、そして均質な人間集団になること。

 

日本人はそれを、子どものころから強制され、慣らされて、当たり前のようになっているけれど…

 

日本社会を一歩出たらそれは何とも異様なことだ、ということに気付くべきじゃないでしょうか。

 

我々はこの点で、まさに「異常」だということに。

 

権威者や権力者が言うことや命じることに対して…

 

疑問を持つこと。批判的な視点を持つこと。抗議し主張すること。

 

これらに関して、子どものころから芽を摘みとるようなことをされて来た、私たち。

 

自由と権利の感覚を奪われて来た私たち。

 

これで民主主義など実現できるわけがない。

 

いわゆる「西側自由主義陣営」の、ちゃんとした仲間になれるわけがない。

 

そのことが、近年「西側」世界に、だいぶバレて来ています。

 

「日本人は本当の仲間じゃない」「信じて運命を共にできる相手ではない」と思われ始めている。

 

だって、理念を共にする仲間だというのは、表向きだけのウソなんですから。

 

これでは有事になったとき、他の「西側諸国」が自国の利害損得だけを勘案して…

 

結果、はしごを外されたり、放置されても仕方ないんじゃないですか?

 

それだけではなく、批判的思考が出来なければ、様々な場面での…

 

現状の問題点をあぶり出せないから、物事をドラスティックに変革することや…

 

イノベーションもできなくなります。

 

今の日本が抱えているいろんな問題…

 

それは、権威者に逆らわない「良い子」がおとなになっているからだと、思いませんか?

 

たとえば、マスコミは権力の忠実な飼い犬みたいになり、大衆もそのマスコミを疑わない。

 

批判がましいことを、権力や権威に対して言うのは、いけないことだと思って問題から目を背ける。

 

そういうところが日本を土台から腐らせ、近年の国を挙げての「凋落」「劣化」「腐敗」に…

 

結果としてつながっているのではないか。

 

国民生活が、気付かぬうちに、確実にレベルダウンしているのも…

 

恐ろしい犯罪がスルーされているのも…

 

根っこは「批判したらいけない」「物申すことは悪」という意識から来ているのではないか。

 

それは、自分たちではもう慣れてしまったけれど、本当はすごく異常なことなのだ、ということ。

 

そろそろ気づきませんか?


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