Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

フロランタン

2017年12月04日 | フロランタン

フロランタン 1

 

  

『フロランタンを「あなべるお菓子教室」で取り上げてほしい。』と言う声が、同じ方から二度ありました。つい先日、と言っても、二回目の声から既に4-5ヶ月経ちました。次回のクールに入れようと、4ヶ月ばかり考え、そしてこのほどやっとできあがりました。

ある製菓店の作ったフロランタンを教室にもってこられて、その場の我々全員が試食にあずかりました。「どんなフロタンタンになるか楽しみですわ。」とその方がおっしゃった。食べてしまったら、取り上げるしかない。それに闘志も燃え上がる。 

調べ始めると、フロタンタンには二種類あることが分かりました。レースクッキーにチョコレートを塗ったものと、ビスケット生地の上にキャラメルゼしたアーモンドスライスをのせたものです。今、日本でフロランタンと言うのは、そのほとんどが後のものです。何故二種類あるのだろう。(このあたりから始めないとどうにも気がすまない、) 

ドイツの食品便覧( Deutsches Lebensmittelbuch )には、『フロランタンは平たくて丸い、アーモンド又はナッツの中にフルーツの砂糖漬け(オレンジピール、シトロン等の)と蜂蜜を入れた生地を焼いて、その裏側をクーベルチュールでコーテイングする。小麦粉を入れてもよいがその比率は総重量の5%以下でなければならない。』と書かれていました。フランスが起源で南ドイツ地方のクリスマスの伝統的なスナックで、手のひらサイズのものをフロランタン、それよりも小さなものをフロランタンクッキーと呼ぶらしい。

(ドイツ食品便覧はオーストリアで1891年初版のCodex Alimentarius Austriacus.

を基に作られた。)


 

フロランタン 2

 

https://www.annabel-langbein.com/recipes/florentine-slice/819/ から

 

写真はニュージーランド、クインズランドの Queenstown’s Mediterranean Market のフロランタンです。ナッツの下にビスケットが見えます。ビスケットには砂糖、バター、全粒粉のほかオートミールが入っています。ナッツのトッピングには卵、ブラウンシュガー,バニラ、くるみ、アーモンド、そのほかにココナッツ,デイツ、アプリコット、チョップしたチョコレートが入っています。

 

   

 

フロランタンスライス

 

 

 

幾つかのレシピにあたってみたところ背面にチョコレートを塗っていないレシピは、イギリスと関係のある国々のレシピでしたので、上のフロランタンは少し姿を変えていますが、「イギリスの血を引く?フロランタン」と思われます。

 

手元にあるホテルザッハーのレシピ ( Das große Sacher Backbuch ) にあたってみたところ、背面にチョコレート塗ったドイツのレシピでした。 

 

フロランタンには、ドイツ系 ( ヨーロッパ大陸系 ) とイギリス系があるのかも?とあたりを付け、少し時代をさかのぼって検証してみました。


フロランタン 3

歴史をさかのぼる前に、北部フランス料理と関連が深く、しかしながらかつては神聖ローマ帝国の一部であった、ドイツとの結びつきもある、オランダのフロランタンをチェックしておこうと思います。

 

Het Beste Bakboek から、

   

 

本には『溶かしたチョコレートをフチと底に塗って』と書いてあるのですが、写真をよく見ると,底には塗っていないようです。アーモンドの下には小麦粉、ベーキングパウダー、砂糖、バニラシュガー、塩、水、バターで作ったビスケット生地が。

「うーん」どちらにしても悩ましいレシピです。このほかのオランダのレシピを調べると28レシピの内、8つにチョコレートが塗ってありました。

 

 

1900年あたりのレシピを出来るだけさかのぼると、1891年よりも8年早い1883年刊行の、イギリスの Cassell Fetter & Galpin による ” Cassell's Dictionary of Cookery ”  には、次のレシピが載っていました。 

オレンジとアップルのフロランタン
ゴールデンピピンを用意して、皮を剥き果肉を取り出す。冷水に入れる。水を1パイント火にかけて、砂糖を半ポンド入れる。ボイルしてアクを取る。ピピンを入れて火が通るまで、煮崩さずに煮る。冷めたらオレンジマーマレード2 TBS, 少量のレモンピールと一緒にパイ皿に入れる。パフペイストで蓋をして軟らかくなるまで煮る。

( 現在のフロランタンと比べれば、随分姿と内容が異なります。ピピンはリンゴです。)

 

1896年刊行、FANNIE MERRITT FARMER 著の “ THE BOSTON COOKING-SCHOOL COOK BOOK ” では、 

フロランタンメレンゲ

ペイスト又はパフペイストを3㎜の厚さ107インチの大きさに伸ばしてベーキングシートの上にのせる。端を濡らして1/2インチの縁を作る。フォークで6回突き刺してオーブンに入れる。冷ましてその上にジャムを塗る。メレンゲをのせてアーモンドスライスをその上にのせる。パウダーシュガーを振って焼く。

今のフロランタンに近づいてきたように思えるのですが、ドイツのレシピとは異なるようです。


フロタンタン 4

次に取り上げるのは1977年創業の、フランスのラ・メゾン・デュ・ショコラのフロランタンです。アーモンドの中に、小麦粉をまぶしたチェリーとオレンジの砂糖漬けを入れ、そこに生クリームと溶かしバターを混ぜてレースクッキーを作ります。底にチョコレートをコートします。レシピから、総量970gのうち小麦粉を50g使っていますので小麦粉の比率は5.1%になります。ドイツの規格に非常に近いと言えます。

    

少し焦点がぼけてきたので、再びイギリスのフロランタンに戻ろうと思います。

イギリス発のフロタンタンをいくつか調べていて気が付いたのですが、「フロランタン」を「フロランタン」と呼称することもあれば、「フロランタンビスケット」と言うこともあるのです。そして自らの自慢の「フロランタン」のレシピを「フロランタンは、ビスケットの中で一番美味しいビスケットだ」と紹介しているのです。「????でしょう!」

 

「ビスケット」と書かれた文献で一番古いものは 1400 ( a1338 ) Mannyng Chron.Pt.2  ( Petyt 511 )   p.171 にある一文(  Armour þei had plente, & god besquite to mete.)です。綴りは今とは異なりますが「besquite」と書かれています。中世英語では「膨らせていない平たい焼きパン、船員が食べた」を指します。ビスケットは英国の誇るべき、歴史のある食べ物なのです。そのビスケットとフロランタンが「合体」。英国人にとってこれは美味しくない訳がありません。

 

「ビスケット」と聞いたとたんに、英国人気質( 他の人との距離を保ちたがる、島国気質 )が頭の中に浮かび上がり、イギリス式フロタンタンが生まれた理由を納得してしまいました。

このブログを読まれている方は、ヨーロッパ大陸のフロランタンとイギリスのフロランタンが異なる訳を「何やら納得!!」していただけたでしょうか?


フロタンタン 5

お菓子のフロタンタンについてはこれで終わりなのですが、「フロランタン」と言えば、お菓子ではなく、料理を指す言葉でもあるのです。実は、こちらの方が有名です。

 

料理で言うフロランタンとはどういう意味?

https://www.thespruce.com/what-does-florentine-mean-995678 から

    

フロランタン料理の特徴は、この写真のように、卵、トリ又は魚をバターでクックしたホウレンソウの上にのせて、その上にモルネイソースと挽いたチーズをかけ、ブロイルしたものです。(モルネイソースはベシャメルソースにグリュイエルチーズとパルメザンチーズを入れて煮溶かして作ります)レシピの中にある「ホウレンソウ」が「フロランタン」である条件であるとサイトの主は述べています。

 

Wiki.で調べると『ホウレンソウは、(菠薐草、Spinacia oleracea、ヒユ科アカザ亜科ホウレンソウ属の野菜。雌雄異株。)で中央-西アジア(古代ペルシャ)原産で827年にサラセンがシシリーに持ち込みました。地中海に住んでいたアラブ人の間に広がり、それが12世紀になってスパインに、13世紀にはドイツに。イングランドとフランスにはスペインを通じて14世紀に持ち込まれた。』と書かれています。

 

この植物も、ローマ帝国滅亡と同時にヨーロッパから一時姿を消した野菜だったようです。プリニウスがプリニウス博物誌 (  PLINY'S NATURAL HISTORY  ) ” にホウレンソウについて書いた一文が登場 ( XXXVII. Basil, sorrel, spinach, cress, rocket, orage, coriander and dill are plants of which there is Set. ) しているのでヨーロッパには紀元前に既に入っていたことが窺えるからです。


フロランタン 6

手軽な、万人好みの?フロランタンをご紹介して「フロランタン」を終わることにします。

 

チキンフロランタンペストパスタ

http://www.simplyrecipes.com/recipes/chicken_florentine_pesto_pasta/ から

  ~ 伝統的なチキンフロランタンパスタとバジルペストの融合。~

ソテーしたチキンの胸肉をスライスしてホウレンソウ、ガーリック、ホワイトワイン、クリーム、ペスト、パスタと合わせます。

     

材料;

乾燥ショートパスタ               336

チキンの胸肉              450480

                                                    

オリーブオイル                  2 TBS

タマネギ(チョップ)              1C

ガーリック(ミンス)               3

ホワイトワイン又はストック          1/2 C

ホウレン草(葉をチョップ)       220g-450

ブラックペッパー                                   -

生クリーム (36-38 %)            1/4 C

ペスト※                 1/4 C以上

※ペストについては前項のブログをご覧ください。

 

方法; 

1.塩を入れた湯でパスタを茹でる。 

2.胸肉に塩を振ってソテーパンにオリーブオイルを熱する。中火で胸肉の両面を茶色にする。完全にクックしないで茶色になったらパンから取り出す。 

3.チョップしたタマネギをパンに入れて23分間ソテーする。タマネギに火が通ったらチキンを細く切って入れる。 

4.タマネギが茶色になりはじめたら、ガーリック、ホワイトワイン又はストックを入れ、水分が半分になるまで激しくボイルする。 

5.ホウレンソウとチキンを入れる。パンの中の汁をかけながらクックする。ホウレンソウに火が通ってしんなりなり、チキンがクックするまで約2分間クックする。 

6.火を止めてブラックペッパー、クックしたチキンとペストを混ぜる。パスタの水気を切りソテーパンにクリームを入れて一緒に混ぜる。パンの中にチキン、ホウレンソウ、ペスト、パスタ、パスタクリームを混ぜる。ボールの中でパスタと混ぜてサーブする。




 

 



 



 


 

 




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