Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

ダマスクローズ 76

2020年06月28日 | ダマスクローズをさがして — Ⅱ

Das Kochbuck des Meisters Eberhard ---1400 から

R-36. 『レタスは寒である。食べる時にボイルすると他の野菜よりも血を良くして眠りを起こさせる。生でもボイルしても、胃炎又は太陽で頭を痛めた人々には良である。ヴィネガーといっしょに食べると空腹になり食欲が出る。レタスは又熱と乾であり、頭と目、胃を傷つけ悪夢を見る。ダメージを和らげるにはレタスを水の中で2回ボイルするべきであるとアヴィセンナ(Avicenna)※2は書いている。』

 

レタスは寒と湿の2度に分類されています。分類の基準ですが、確たる目安、水準となるものはありません。そのものが採れる場所、気候、見かけ、雰囲気、価格の高低によって決められたものです。採れる場所が、水中、土中、地上、空中であるかによって湿と寒、寒と乾、湿と熱、乾と熱の性質を持たされることになります。レタスは水気が多いせいでしょうか、本来ならば寒と乾ですが、ご覧の通りの記述になっています。

寒と湿の性質を持っているので、このまま食べずに熱を加えるようにガレノスは説いているのですが、アヴィセンナは逆の熱と乾であると説いて、ボイルして湿をレタスに与えるべきであると説諭しています。ガレノスの理論をさらに進め、経験と理論をもとにガレノスの欠点を指摘したこの点がほかのヨーロッパの国々とは大きく異なる点です。ドイツのこの料理書も他のヨーロッパの国のものとは大きく異なります。言いなりではない、いったん受け止めてさらに工夫を積み重ねるというドイツ人の気質すら見えてきます。

          

    レタス Tacuinum Sanitatis. 14th century. Medieval handbook of health. Lettuce. Folio 29r.

 

R-74. 『キジバトは高貴な食べ物であり、感覚と記憶を研ぎ澄ますとアヴェロエス(Averroes)※3とラーズィー(Rhazes』※4は述べています。他のハトは感情を高ぶらせ熱を引き起こす。Rhazesは, 若いハトは熱の性質を強めるが年取ったハトは悪病又はpalsy(中風?)を患った人々に有益であると述べている。ベーコン、杜松、セージと混ぜてローストすべきである。』

 

キジバトは空を飛ぶその姿からでしょうか高貴な鳥でした。ハトも同じように空を飛ぶのですが、すぐに手に入れることができるからでしょうか、なぜか評価が悪いのです。どちらの鳥も空中を飛ぶので、熱と湿の性質を持っています。寒と湿の性質を持つ豚といっしょに食べるべきであると説いているのです。セージは土の上に生えていますから湿で寒と判断するところですが、ハーブ、スパイスはそのほとんどが熱で乾です。キジバトは、熱で湿の性質です。Rhazesはヨーロッパの四元素説からは少しはずれた判断をしていることになります。

   

            キジバト  http://www.larsdatter.com/hunting.htm

        

           ハトと鶏 Tacuinum Sanitatis (BNF Latin 9333, fol. 65), 15th century

                        

 https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2960846-0/fulltext 

                             ガレノス※1 Aelius Galenus(129-216、Galen, Galen of Pergamon)

ガレノスの On the Elements According to Hippocrates は、ヒポクラテスの四体液説(人体が血液、粘液、黒胆汁、黄胆汁から成るとする説)について記したものです。ガレノスのギリシャ語作品の大半は、サーサーン朝時代にジュンディーシャープール

(サーサーン朝ペルシャ帝国の南西部にあった都市)においてサーサーン朝後期からアッバス朝時代にかけてこの地の大学でネストリウス派の僧侶たちによりパフラヴィー語やシリア語に訳された。フナイン・イブン・イスハーク※(Ḥunayn ibn ’Isḥāq al-‘Ibādī、808年頃–873年頃、著書の『ガレノス医学入門』はラテン語訳され、中世ヨーロッパにも影響を与えた。)らをはじめとするバグダードの学者たちは、これを他のギリシャ語文献ともどもアラビア語に訳した。特にアッバス朝時代にガレノスの著作の多くがアラビア語へ訳されました。

                            

                        Rhazes ※4      https://en.wikipedia.org/wiki/File:Portrait_of_Rhazes_(al-Razi)_(AD_865_-_925)_Wellcome_L0005053_(cropped).jpg  

アブー・バクル・ムハンマド・イブン・ザカリヤー・ラーズィー( Abū Bakr Muhammad ibn Zakariyyā al-Rāzī Latinized name Rhazes又はRasis ; 854–925 CE) は、ペルシャの錬金術師、化学者、哲学者、医師、学者『Doubts about Galen』では経験的な方法から四体液説の誤りを初めて証明しました。

 

 

 


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