謹賀新年
国の構造的欠陥が様々な面で次々と明らかとなってきた昨年でした。
新年のご挨拶に代えまして、私が愛用しておりますEICネット(http://www.eic.or.jp/)から年末に発表された環境重大ニュースをお知らせして新年への新たな思いとしたいと思います。
EICネットは、(独)国立環境研究所が提供する、環境教育・環境保全活動を促進するための環境情報・交流ネットワークです。(業務運用:(財)環境情報普及センター)
【2005年国内環境重大ニュース】
第1位:京都議定書発効と「京都議定書目標達成計画」の決定
第2位:政府がアスベストによる健康被害救済法案大綱決定
第3位:「3Rイニシアティブ閣僚会合」の開催
第4位:水俣病への新対策発表
第5位:クールビズ、ウォームビズの実施
第6位:愛・地球博に約2,200万人が入場
第7位:知床の世界遺産指定
第8位:外来生物法の施行
第9位:景観法の完全施行
第10位:ラムサール条約登録湿地計33か所に
【2005年海外環境重大ニュース】
第1位:京都議定書発効、第一回締約国会合開催
第2位:EU 温室効果ガス排出量取引スキームがスタート
第3位:EU 新化学物質規制REACH 年内合意にリーチ
第4位:G8グレンイーグルズ・サミット 気候変動等に関する宣言を採択
第5位:国連 ミレニアム生態系アセスメント報告書公表
第6位:大型ハリケーン アメリカを襲撃
第7位:フランス 環境憲章を公布
第8位:北京再生可能エネルギー国際会議
第9位:ドイツ 環境機器輸出で世界一に
第10位:イラク南部湿地 回復へ向かう
特にこの中の海外「第7位:フランス 環境憲章を公布」について詳細を載せます。
フランスでは、環境に対する権利と義務を憲法上位置づける、環境憲章に関する憲法法案が議会で
承認され、3月1日に公布されました。これは、2002年の大統領選挙でのシラク大統領の公約を実現
したものですが、基本的人権、社会権と並んで、環境権を位置づける歴史的な改正となりました。環
境憲章では、環境に関する権利と義務に加え、予防原則や持続可能な開発など、政策上の基本原則も
示されています。
さすが、人権宣言の国、フランス、まずは原則から明確に。
環境権
「人は尊厳と福祉を保つに足る環境で、自由、平等及び十分な生活水準を享受する基本的権利を有する」とした人の基本的な権利。スウェーデンのストックホルムで開催された国連人間環境会議(1972)で採択された宣言(人間環境宣言)の中に盛り込まれた。環境権は、個人の環境利益を享受する権利としての面と、地域社会の共同利益としての環境享有権を守る権利としての二面性を持っている。
日本において、環境権は憲法第25条(生存権)や憲法第13条(幸福追及権)として認められるものであり、法的保護下に置かれるべきであるという主張もある。近年、大阪空港の騒音公害訴訟、伊達や豊前などでの火力発電建設差し止め訴訟など多くの公害裁判でこの権利を主張したが、これまで認められたことがなく、未だに法的な市民権を得てはいない。
予防原則
欧米を中心に取り入れらてきている概念で、化学物質や遺伝子組換えなどの新技術などに対して、人の健康や環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす恐れがある場合、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも、規制措置を可能にする制度や考え方のこと。
この概念は、因果関係が科学的に証明されるリスクに関して、被害を避けるために未然に規制を行なうという「未然防止(Prevention Principle)」とは意味的に異なると解釈される。
1992年の国連環境開発会議(UNCED)リオ宣言は、原則15で予防原則について以下のように記している。「環境を保護するため、予防的方策(Precautionary Approach)は、各国により、その能力に応じて広く適用されなければならない。深刻な、あるいは不可逆的な被害のおそれがある場合には、完全な科学的確実性の欠如が、環境悪化を防止するための費用対効果の大きい対策を延期する理由として使われてはならない」。
これは、地球温暖化対策などで、科学的な不確実性を口実に対策を拒否または遅らせる動きの牽制とする意味合いもある。
フランス議会 環境憲章を承認
フランス議会は、6月1日、ドミニク・ペルバン法務大臣により発表された、環境憲章に関連する憲法法案を、第一読会において承認した。
投票権者532人のところ、有効投票数は338票であった。投票の結果は、反対10票に対し、過半数を超える328票が賛成。憲法法案は承認された。今後、法案は上院に送付される。
環境憲章の全文は以下のとおり
第1条 各人は、バランスがとれ、健康が尊重された環境の中で生きる権利を有する。
第2条 全ての人は、環境の保全及び改善に参加しなければならない。
第3条 全ての人は、法律で定められた条件において、環境に及ぼすおそれのある損害を防止し、止むを得ない場合には、その影響を限定しなければならない。
第4条 全ての人は、法律で定められた条件において、環境に及ぼす被害の修復に貢献しなければならない。
第5条 科学的な知見に不確実性があったとしても、被害の発生が、環境に対して、重大かつ回復不能な影響をおよぼすおそれがある場合には、公共機関は、予防原則を適用し、権限の範囲内で、リスク評価手続きを実施し、被害の発生を避けるために暫定的かつ釣り合いのとれた措置を講じるよう留意する。
第6条 公共政策は、持続可能な開発を促進しなければならない。このため、公共政策は、環境の保護・強化、経済発展、及び社会の進歩を三立させなければならない。
第7条 全ての人は、法律で定められた条件及び範囲において、公共機関によって保持される環境関連情報にアクセスする権利、及び環境に影響を及ぼす公の意思決定の立案に参加する権利を有する。
第8条 環境に関する教育及び訓練は、この憲章に定められた権利及び義務の実現に貢献しなければならない。
第9条 研究及び技術革新は、環境の保護及び評価に貢献するものでなければならない。
第10条 この憲章は、欧州レベル及び国政的なレベルでのフランスの行動を鼓舞するものである。
【フランス エコロジー・持続可能な開発省】
内容もさることながら第10条に世界トップレベルの国のプライドを感じます。これが「日本」に変わる日はあるのでしょうか。
国の構造的欠陥が様々な面で次々と明らかとなってきた昨年でした。
新年のご挨拶に代えまして、私が愛用しておりますEICネット(http://www.eic.or.jp/)から年末に発表された環境重大ニュースをお知らせして新年への新たな思いとしたいと思います。
EICネットは、(独)国立環境研究所が提供する、環境教育・環境保全活動を促進するための環境情報・交流ネットワークです。(業務運用:(財)環境情報普及センター)
【2005年国内環境重大ニュース】
第1位:京都議定書発効と「京都議定書目標達成計画」の決定
第2位:政府がアスベストによる健康被害救済法案大綱決定
第3位:「3Rイニシアティブ閣僚会合」の開催
第4位:水俣病への新対策発表
第5位:クールビズ、ウォームビズの実施
第6位:愛・地球博に約2,200万人が入場
第7位:知床の世界遺産指定
第8位:外来生物法の施行
第9位:景観法の完全施行
第10位:ラムサール条約登録湿地計33か所に
【2005年海外環境重大ニュース】
第1位:京都議定書発効、第一回締約国会合開催
第2位:EU 温室効果ガス排出量取引スキームがスタート
第3位:EU 新化学物質規制REACH 年内合意にリーチ
第4位:G8グレンイーグルズ・サミット 気候変動等に関する宣言を採択
第5位:国連 ミレニアム生態系アセスメント報告書公表
第6位:大型ハリケーン アメリカを襲撃
第7位:フランス 環境憲章を公布
第8位:北京再生可能エネルギー国際会議
第9位:ドイツ 環境機器輸出で世界一に
第10位:イラク南部湿地 回復へ向かう
特にこの中の海外「第7位:フランス 環境憲章を公布」について詳細を載せます。
フランスでは、環境に対する権利と義務を憲法上位置づける、環境憲章に関する憲法法案が議会で
承認され、3月1日に公布されました。これは、2002年の大統領選挙でのシラク大統領の公約を実現
したものですが、基本的人権、社会権と並んで、環境権を位置づける歴史的な改正となりました。環
境憲章では、環境に関する権利と義務に加え、予防原則や持続可能な開発など、政策上の基本原則も
示されています。
さすが、人権宣言の国、フランス、まずは原則から明確に。
環境権
「人は尊厳と福祉を保つに足る環境で、自由、平等及び十分な生活水準を享受する基本的権利を有する」とした人の基本的な権利。スウェーデンのストックホルムで開催された国連人間環境会議(1972)で採択された宣言(人間環境宣言)の中に盛り込まれた。環境権は、個人の環境利益を享受する権利としての面と、地域社会の共同利益としての環境享有権を守る権利としての二面性を持っている。
日本において、環境権は憲法第25条(生存権)や憲法第13条(幸福追及権)として認められるものであり、法的保護下に置かれるべきであるという主張もある。近年、大阪空港の騒音公害訴訟、伊達や豊前などでの火力発電建設差し止め訴訟など多くの公害裁判でこの権利を主張したが、これまで認められたことがなく、未だに法的な市民権を得てはいない。
予防原則
欧米を中心に取り入れらてきている概念で、化学物質や遺伝子組換えなどの新技術などに対して、人の健康や環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす恐れがある場合、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも、規制措置を可能にする制度や考え方のこと。
この概念は、因果関係が科学的に証明されるリスクに関して、被害を避けるために未然に規制を行なうという「未然防止(Prevention Principle)」とは意味的に異なると解釈される。
1992年の国連環境開発会議(UNCED)リオ宣言は、原則15で予防原則について以下のように記している。「環境を保護するため、予防的方策(Precautionary Approach)は、各国により、その能力に応じて広く適用されなければならない。深刻な、あるいは不可逆的な被害のおそれがある場合には、完全な科学的確実性の欠如が、環境悪化を防止するための費用対効果の大きい対策を延期する理由として使われてはならない」。
これは、地球温暖化対策などで、科学的な不確実性を口実に対策を拒否または遅らせる動きの牽制とする意味合いもある。
フランス議会 環境憲章を承認
フランス議会は、6月1日、ドミニク・ペルバン法務大臣により発表された、環境憲章に関連する憲法法案を、第一読会において承認した。
投票権者532人のところ、有効投票数は338票であった。投票の結果は、反対10票に対し、過半数を超える328票が賛成。憲法法案は承認された。今後、法案は上院に送付される。
環境憲章の全文は以下のとおり
第1条 各人は、バランスがとれ、健康が尊重された環境の中で生きる権利を有する。
第2条 全ての人は、環境の保全及び改善に参加しなければならない。
第3条 全ての人は、法律で定められた条件において、環境に及ぼすおそれのある損害を防止し、止むを得ない場合には、その影響を限定しなければならない。
第4条 全ての人は、法律で定められた条件において、環境に及ぼす被害の修復に貢献しなければならない。
第5条 科学的な知見に不確実性があったとしても、被害の発生が、環境に対して、重大かつ回復不能な影響をおよぼすおそれがある場合には、公共機関は、予防原則を適用し、権限の範囲内で、リスク評価手続きを実施し、被害の発生を避けるために暫定的かつ釣り合いのとれた措置を講じるよう留意する。
第6条 公共政策は、持続可能な開発を促進しなければならない。このため、公共政策は、環境の保護・強化、経済発展、及び社会の進歩を三立させなければならない。
第7条 全ての人は、法律で定められた条件及び範囲において、公共機関によって保持される環境関連情報にアクセスする権利、及び環境に影響を及ぼす公の意思決定の立案に参加する権利を有する。
第8条 環境に関する教育及び訓練は、この憲章に定められた権利及び義務の実現に貢献しなければならない。
第9条 研究及び技術革新は、環境の保護及び評価に貢献するものでなければならない。
第10条 この憲章は、欧州レベル及び国政的なレベルでのフランスの行動を鼓舞するものである。
【フランス エコロジー・持続可能な開発省】
内容もさることながら第10条に世界トップレベルの国のプライドを感じます。これが「日本」に変わる日はあるのでしょうか。