BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説20-16「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-24 20:44:27 | ★ディスティニー20章
 諒が一人で悶々としていると、鈴木から、麻也を二次会とは別の店で無事見つけたと電話がきた。しかし、その声が暗いので、諒にはピンときた。
 やっぱり麻也はかなり飲んでいるのだろう。諒は鈴木が気の毒になって、
Гごめんね、もう鈴木さん帰って休んで…麻也さん潰れてるんならその連れに後は任せれば? 飲んじゃいけないのに飲んでんだから…もういいよ」
その言葉に鈴木は驚いたようだった。諒自身も自分の言葉に驚いた。
 しかし鈴木が電話を切る時は曖昧な口調だったので、諒は少し安心した。責任感の塊のような彼は、麻也を連れ帰るだろう…
 (それに引き換え俺は…)
麻也が飲んでるのはそれだけ麻也も気分転換したいというサインだろうに…
 しかし、その自分の考えについていけないほど、諒は頭も体も疲れていた。
 しばらくすると、誰かがエレベーターから降りてきたようで、酔っ払いたちなのか廊下から女性も混じっているような騒ぎ声が…
 嫌な予感がした諒が急いでドアを開けると…三田たち一行と、ケンに背負われた麻也のご帰還だったのだ。
「諒く~ん、ただいまぁ~」
 叫びながら入ってきたのは三田。いい気なもので、みんな上機嫌だった。
 麻也はなぜか白のひらひら王子シャツに変わっていたが…
 その頭にはいかにも王子様らしいダイヤのティアラがつけられていた。それは麻也の漆黒のふわふわのロングヘアに良く似合っていた。
 それは確かに可愛らしかったが…
(ああそりゃ可愛いさ……)
それなのに麻也は顔をよく見せてくれない。
(……って何で俺は求めちゃってるわけ?)
…惚れた弱味がこんな時に出るなんて…
 そんなフクザツな気持ちの諒にはお構いなく、すっかり酔ってハイになった三田が、
「マグネットピアスだったんだけど…あら、片方落としちゃった?」
 ベッドに座らせられた麻也は、ゴールドやジュエリーのブレスレットやネックレスをじゃらじゃらつけられていた。

★BLロック王子小説20-15「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-23 21:45:33 | ★ディスティニー20章
「そうだけどさって一体なんだよ。まさか、ホテル街にでも消えていったとでもいうの?」
真樹が黙ってしまったので諒は真っ青になった。しかし、
ーいや、男性スタッフも何人か居ないんだって。だからその人達と一緒かもしれない。
「じゃあ、もう俺心配しないことにする…」
 「…真樹、もし何かあったらまた連絡ちょうだい。じゃあね」
 電話を切ってから、真樹にきつく当たったことを後悔したが…東京の初日以来、麻也はますます変だと諒は思う。さらに諒は思う。
(一体うちのマネージャー達も何をしているんだろう…2回も麻也さんを見失うなんて…)
 よっぽど彼らに何か言ってやろうかと思ったが,
麻也からの電話を待つために電話はかけられなかった。
 するとその時、また携帯が鳴り…ディスプレイには麻也の名が…
「もしもしっ!」
―りょお、あろねえ、俺、イタズラされてるの。ピアス痛い。たすけて…
 …間違いなく麻也の声だった。
 麻也のろれつの回らなさは異常だし、諒はどうすればいいのか、頭の中が真っ白になった。
 すると電話の向こうでは男の声で、
―電話なんかすんなよ!
…と、電話は切られた。
 あまりのことに諒は驚き、倒れそうになった。
(……ピアス嫌いの麻也さんが……)
 諒は気を取り直してリダイヤルしたが…誰も出ない。
(…あの背後の男は誰なんだ…)
気が気ではない。三田の携帯にかけることも考えたが、奪還の加勢を頼むことも考えたら男に電話した方がいいだろう。となれば、まずはやっぱり麻也のマネージャーの鈴木だ。これ以上真樹を疲れさせるのも嫌だった。
(それに、警察ならやっぱり鈴木さん通さなきゃいけないし…) 
諒は立場を振り捨ててでも、麻也を探しに飛び出したかったが、
(でも何より麻也さん、そこまで危機感じてるっぽかった? )
 ホテル街の話を聞いたせいか、そんな風にも思えてくる。
 でも…

★BLロック王子小説20-14「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-23 21:16:38 | ★ディスティニー20章
 それだけでも前の方のファンは大騒ぎになったのに、諒の強引なキスに、かなり麻也はたおやかに見られたっぽい…
 天使のキャラ、王子のキャラで温かな笑顔と、きつい男っぽい表情とのギャップが愛されてはいるのだが…
(ちょ、ちょっとこれは…)
 中身はいつも凛々しい麻也も珍しく当惑してしまった…

 しかし…そんなに大変なステージだったのに…
 今夜もマネージャー陣に言われて、喉をいたわるため諒は一次会で帰されたぐらいなのに…
 二次会まで行った麻也は…また姿が見えなくなってしまったのだ。
 この日も諒は提供用の楽曲の締切という名目で一次会で帰ってきたのだが、麻也はなかなか帰ってこない。真樹がついていっているから大丈夫だと思っていたのだが…それに電話をするのも麻也には悪いかなと思って控えていたのに…
 しかし遅い。
 さすがに真樹に電話をしようかと思っているところに、携帯が鳴った。
―諒ごめん、兄貴帰ってる?
困っている様子の真樹だった。
「いや、何の連絡もないし。またいなくなっちゃったの?」
すると真樹はまた言いづらそうに、
―…うん、まあ、そうなんだよね…
と、前回とは違って口ごもる。
「いや、真樹、どうしたの?」
真樹は困った時の癖で投げやり気味に、
―でも、今回は人が一緒だから多分大丈夫だと思うんだ…
「何だよ、はっきり言えよ、この間にも麻也さんが電話してきてるかもしれないじゃん。」
―心配はないと思うけど三田さんだよ。三田さん。
 諒は言葉を失った。
 ずっと専属のスタイリストで、メンバーの姉貴分みたいな三田が…?
「ええ、そんなバカな、だって三田さん酒飲まないじゃん。」
―それが今日は上機嫌で、俺たちが気づいた時は兄貴と飲んでるし。
諒はあきれ果てた。
「でも三田さんって確か旦那さんいるんでしょ」
ーうん、そうだけどさ…

★BLロック王子小説20-13「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-22 21:53:27 | ★ディスティニー20章
 …とさりげなく言った。諒はこういう時は子供と同じで、大きく反応すると調子に乗りまくるのだ。
「はーい…せっかく可愛いおしりなのにねえ…」
予想通り、諒はそっと大きな手を離したが、麻也が選んだブレスレットが諒を表す太陽のモチーフなのを見て、気を良くしてプレゼントしてくれた。
 …その30分後には麻也は「お礼のキス」と言って、麻也の方からリビングで諒の唇をむさぼっていたのだが…

 次の日の移動は随分と麻也を気遣ったものだったが、麻也はずっと乗り物のシートに深く体を沈めてだるそうにしていた。
 麻也は、目はサングラスで隠しているので、すごく生意気に見えると隣に控える諒がそれをからかって笑いに変える。
「ええ~、何だよ~、も~」
麻也もやっと笑顔を見せた。
 遠距離の移動だったが、空港に着くとすぐにリハーサルのために会場入りだった。
 この公演地は、客席の盛り上がりが比較的おとなしめな土地で、万全の体調でも本当は難しいと麻也は思っていた。
 何度も来たことはあるけれど、遠い街だから他の街と同じようにいや、こっそり他の街以上に心を込めて演奏したい気持ちもメンバーにはある。
 案の定、表面は堅実だが中は熱すぎるぐらいといわれる県民性のせいなのか、その日も客席のエネルギーは遠慮がちにゆっくりと立ち上がり、途切れることはなかったが、その頃には麻也はどうにかピンクのレスポールから攻撃的な音を出し、合間に腕を伸ばして客席を煽るのがやっとだった。
 表情が硬いのは自分でもわかる。
(困ったな…だるい…マイク前からもう動けない…)
 その時、
「夜はかるかんより甘いです!俺の恋人、ギターの麻也~!」
気づいた諒が抱きとめてくれて、少し体が楽になった。舌をちろ、っと見せられるくらいに。

★BLロック王子小説20-12「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-22 21:28:39 | ★ディスティニー20章
 憧れの人にそんなことを言われた鈴音は、困った表情になった。
「俺は恋愛に関してはすごく臆病で、むしろ冷たい人間かもしれない。それを、溶かすことができるのは諒だけなんだ…」
…それは麻也の実感だった…しかし、わざわざ他人に言うことではなかった…
 まあ、鈴音には、高校生とはいえ予防線を張っておく必要は常にあるのだが…

 慣れているはずなのに、一人のタクシー移動は寂しい。
(…諒、大好きだよ…)
思わずもらしてしまった心の 声に、麻也は 一人で照れ笑いまでしてしまっていた。

 しかし、いざ診察を受けると医師が言うことは同じことの繰り返し。
 …とにかく休養をとって、薬はこのままで…それで麻也は薬が毎日だと仕事にならないと訴えたが、もう少し経過を見なければと言われ…
 がっかりして麻也が病院の玄関で携帯の電源を入れると、諒のメールが入っていた。
 
ー麻也さん、寝坊してごめんね。迎えに行けるけどどう?
 
 しかし、麻也はせっかくの誘いを断った。諒とデートして気分を変えたい気持ちはあったが、翌日は飛行機移動なので諦めたのだ。
 …でも家に着くとデートに出かけたくなり、近所のレストランに手を取り合ってランチに行ったのだが。
 食事を終えて店を出ると、いつの間にか、隣にシルバーアクセサリーの店がオープンしていた。
「あー、麻也さん、何か入りたい、って顔してる」
「わかる?」
 あまり諒にはピンとくる店ではなかったらしく、いかにも付き合って入ったという感じで…
 ガムを噛みながら、麻也のアクセ選びを待つ諒…だが、手持ち無沙汰になればやることはひとつ…
 
…さわさわ…
 
 最初のうちは麻也も無視していたが、あまりに続くので、商品からは目を離さず、
「諒、やめないと怒るよ。」