BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説20-11「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-21 21:45:04 | ★ディスティニー20章
 次の日、たった一日発生したオフは麻也の通院の日でもあった。
 もちろんライブの翌日なのでやっとの思いで午前中に起き、諒は起こさずに1人で出かけた。ライブ疲れはお互い様だが、諒を少しでも休ませたかった。
 タクシーの中、久しぶりに一人になると…
 …自分にまとわりついてくる鈴音と冬弥のことが妙に思い出されて…憂うつになった。 特に冬弥の思いつめたような表情が思い出されて嫌だ…
 モデルとしてかなり落ち着いてきた冬弥の努力と気持ちはわかるが、何かと会いに来られるのに麻也は辟易していて、それも諒には知られたくかった。
 鈴音の方には2人きりになった時に、麻也は言ったことがある。
「俺にはずっと諒しかいないし、プライベートでは他の男性も女性も恋愛対象になるとは思えないんだよね」
「じゃあ、麻也さんファンは一体どうすればいいの? 麻也さん嘘をついていることになるじゃないですか」
 ふくれっ面でそう訴える鈴音の言葉が麻也には全く理解できなかった。
「何が嘘? 」
麻也にしてみればライブハウス時代からずっと男女のファンを増やしてきただけで、麻也をディスティニー・アンダーグラウンドを愛せなくなった人間はもうすでにいなくなっているはずなのだ。
「ファンのみんなとは、客席とは大恋愛、でも普通の恋愛じゃないよね。俺なら音楽、ライブ、他にも情報とかを通じての愛だよね。鈴音ちゃんは仕事はアイドルだから客席は男性ファンに限られるだろうけど、プライベートで俺たちのファンなら、そういう愛とか仕事内容とかはわかってくれてると思ってた」

★BLロック王子小説20-10「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-21 21:12:36 | ★ディスティニー20章
 麻也の方も何度も恵理には会っていたが、弟は初対面で少しどぎまぎしてしまった。 
 しかし真樹の大切な彼女、いずれは結婚を考えているらしい女性の弟なので一生懸命笑顔で応えた。大学生ということなので扱いやすいかなと思ったのだが、真樹にやましいところはないのに、緊張してしまった。
 恵理の弟クンにはかえって怪しまれたかもしれないなぁ、と麻也は心配になった。
 それより麻也が困ったのが両親だった。
 特に母には体調不良は秘密にしていたのに、すぐ見破られてしまった。
 顔を見るなり大声で、
「お兄ちゃん、あなた…」
 母は自分の大声に驚くとすぐに声を潜め、
「お兄ちゃん、大丈夫? ちゃんとご飯食べてる? オフあるなら帰ってきたら?それとも、お母さんマンションの方に行って諒くんのご飯も…」
 すると隣にいた父が眉をひそめて母の袖を軽く引っ張った。
 そして麻也に向かって、父は男親らしく、
「まあ、皆さんの迷惑にだけはならないように気をつけなさい。お前は何でも頑張りすぎるから」
耳が痛かったが、でも2人の表情は誇らしげで、それが麻也には嬉しかった。
 麻也の両親は直人と諒にも挨拶をしていった。
 特に諒にはしっかりと。でも、諒にはもちろん同居している仲間に対してという態度ではあったけれど。
 そして…横浜のライブも熱かった…
 終演後は親友の恭一が来てくれて、麻也は本当に嬉しかった。諒とひそひそ話をしていたのが気になったが…
 横浜の楽屋は気の置けない人ばかりが来るはずだったのに、2日目は意外にも響子や冬弥や鈴音が来て、麻也も諒も困ってしまった。
 麻也はやむを得ず薬をのんでステージに立ったが、薬のせいで眠気に襲われリハ-サルに遅刻しかけたせいもあってか、悔いの残るライブになってしまった。

★BLロック王子小説20-9「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-20 21:11:38 | ★ディスティニー20章
 それでも横浜を含め関東圏のチケットは争奪戦だったと麻也は聞いている。
 少し無理なツアースケジュールのせいもあって、東京の次の週末が横浜になってしまった。それというのも、バンドの成長が予想以上に早く、会場を押えるのが大変だからで…      
 しかし...さすがに東京ドームには手が届かない...
 そんな横浜の初日は、東京と違って来客の少ないリハーサルの後を見すまして、メンバーたちの両親や彼女たちを招待したのだが...
 諒の両親はもちろん、今回も諒の息子の大翔は連れてこなかった。親戚に預けてきたという。麻也は密かにほっとしていた。
 いくら大翔の存在が世間に知られていても、やっぱり姿をファンに知られたり写真に撮られたりしては、というのがある。
 それに何より本人はまだ2歳、父親の仕事すらまったく理解できていないのだから、連れてきても仕方がないといえば確かにそうだ。
 でも諒には励みになるような、でも、ステージでみんなの王子にこれからなるというのに…
 そう考えるとやっぱり諒の両親の判断は正しかったのだ。
 麻也は大翔の写真は見ているが…理性では納得できても、嫉妬がやはりぬぐえない。絶不調の今日実際に会ったなら倒れてしまったかも…
 真樹の最愛の彼女の恵理は、カモフラージュに弟を連れてきた。のはいいとして、直人の彼女の志帆は突然兄を連れてきたので、さすがの直人もびっくりして直立不動になって話をしていた。
 やっぱり恵理の家と同じで、付き合っている男がミュージシャン、それも超売れっ子となると、付き合っている女の子の家では本当に心配なのだろう。
 しかし、楽屋に他の女性の姿はないし、落ち着いた直人の人柄に志帆の兄は安心したらしく、みんなにも軽く挨拶をするとにこやかに部屋を出ていった。
とはいうものの、直人はツアーが終わったら3人で会食を、と言われたと苦笑していた。

★BLロック王子小説20-8「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-19 21:21:45 | ★ディスティニー20章
「グラムロック界の神童、だから」
「あーそれ、『ロックインパクト』で読んだ。知性の若グラ、とかでしょ。最後に出てきたグラムバンドだもんね。でもグラムっぽいバンドってみんな頭よさそうだよね」
「合法でも体壊さなきゃいいんだけど…」
「それにしても、ゲーノー人ていいわよねえ、鈴音とか関村響子とかさ…打ち上げとかにも行けるんでしょ?」
「藤田冬弥もそうでしょ?」
「その話はあんまり聞かないな…私の友達は地方の追っかけだからわかんない」
「メンバーが嫌がって、関係ないオンナは入れないみたいよ」
「じゃあ麻也王子、オトコと3Pは確定でいいんでしょうか?」
「そうねえ、麻也王子は美しいわ男らしいわでお召し上がり!」
「いやー、私も男に生まれればよかった…」
「いや、そうじゃなくて、ディスグラは世界でいちばんカッコいいバンドです。演奏能力も高くて、ステージング上手くて…」
 
 
「もう朝からたくさんファンが来てますよ…ライブの日をたっぷり楽しみたいんでしょうね…」
 会場前のチェックを担当しているスタッフが笑顔で教えてくれた。
「神奈川は地元だからねえ…」
と直人が言うと、麻也以外の3人で爆笑になってしまった。
 メンバーの地元・町田市は「東京都の端の方」とはいえ一応東京都なのに、
世間では神奈川県に間違われたり、神奈川の端と揶揄されているのだ。
複雑な気分だが…
「まあ地元が二つあると思えばいいんじゃない」
の直人の言葉にメンバーは一つになったのだった…
 しかし、麻也はこの日も人目につかない角度に置かれたソファに転がって、
体力を温存していたので、薄笑いを浮かべるのがやっとだった。
 ツアーファイナルと同じく年末も武道館2DAYSというのは未発表だが、以前からのファンにはバレバレだろう。

★BLロック王子小説20-7「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-19 20:53:30 | ★ディスティニー20章
「おはよー、遅くなってごめーん。 そういえば麻也ちゃんが、警察のご厄介になったって聞いた? 」
「おはよ…えーっ?諒綺ちゃんまで何よ…っていうか、警察って…」
「…え? 今日? ライブ無くなっちゃうじゃん…」
「あー違う、何日も前、地方で。」
 「おはよー、何もりあがってんの?」
「麻也王子のアブナイ話。那直は…」
「ああ、麻也たん、ファンのオトコ二人にヤられたってヤツでしょ。」
「はあ?」
「おはようございまーす。麻也たんのクスリの話?」
「真綾まで…いやーん、麻也たんライブでふらふらしてんのはクスリのせいなの?」
「あれ、みんな知らなかった? 地方で、あの酒に強い麻也ちゃんがベロベロだったって。その様子が普通じゃなくて、ドラッグじゃないかって。
で、歩けないから地元の若いスタッフの男二人に部屋まで送らせて、で、食っちゃったって。」
「…」
「最初は睡眠薬だったのに、マネージャーや付き人がご機嫌取りに合法ドラッグすすめたら、六本木でいけないクスリで接待されるまでになってるんだって」
「ええええ…」
「…まあ、女に男とくればもうクスリしかないんじゃない? 
アッチの方も最高になるっていうし…」
「それよりぃ、残念だけど、最近麻也ちゃんの曲イマイチだからそういうものを体験したかったのかなあ…」
「じゃあ、諒もやってるってこと?」
「うーん、確かに最近は諒の曲の方が深い感じだけど…ボ一カリストは無理じゃない?それに麻也姫にご奉仕しなくちゃいけないし」
「うーん、シューカンセイ? のないものはいいんじゃない?」
「それを言うなら、依存性じゃない? 」
「ん…まあ、ミュージシャンだったら合法ドラックぐらいやってるかもしれないね…」
「うん、きっと合法だよ。捕まるようなこと、真面目なディスグラさんがするわけないじゃん」