諒にとっても、世間の目をはばかった入院生活だった。まあ諒は次の日には退院して、いつものマンションの部屋に戻ったのだが。
事件の日の病院には、最初は両親の2人で飛んできた。まだ小さい大翔〈ひろと〉はご近所に預けてきたという。
2人とも諒を責めなかったが、父が、
「芸術家同士の同居ってものに、無理があるんじゃないか」
と麻也との同居を解消することをやんわりと提案してきた。
特に母は、
「忙しかったらお母さんも身の回りの世話を手伝うから。
その…きちんと再婚するまでは1人暮らしの方がいいんじゃない?」
母の方は諒の麻也への気持ちを黙認している面があっただけに、諒の胸にはずしりときた。
「再婚て…」
しかし、まだ今日の事件ショックから立ち直れてない諒は、理解できなかった。
「大翔もものがわかってきたら…新しい親がどんな人でどうつきあうのか悩むだろうし…」
まだベッドの上にすわっていた諒は、返す言葉がなかった。