ひところのマスク不足はすっかり解消した。街ではおしゃれなデザインの布マスクをした人もみかけるようになった。だがそうした布製マスクの効果はどうなのだろう。不織布マスクは通気性と微粒子カットの絶妙なバランスを考えて作られているそうで、それほどのものを布で代替するのは難しいと思えるのだが。
WHOがマスク推奨に方針転換したとき、布マスクでもいいが異なる素材で3層以上の構造とするという基準を出した(asahi.com 2020-6-6)。おそらく市販の布マスクはこの基準に従っているのではないだろうか。
このたび不織布マスクと「手作りマスク」(ポリエステル、綿;たぶん「3層」ではない)の飛沫防止効果のスーパーコンピュータ「富岳」によるシミュレーション結果が紹介されていた(朝日新聞2020-10-11)。
不織布マスクでは、マスクを通り抜けて前方に飛ぶ飛沫はほとんどないが、鼻のわきなどの隙間から20マイクロメートル以下の小さな飛沫が漏れる。ポリエステルのマスクでは0.3マイクロメートル以下の粒子の約2割が通り抜ける一方、隙間からの漏れは不織布よりも少なかった。綿のマスクでは、0.3マイクロメートル以下の粒子で約4割、0.5マイクロメートルのものも約1割が通り抜ける。これから明らかなように、飛沫の数でいうと、不織布マスクのほうが性能がいい。一方、どんなマスクでも大きな飛沫を防ぐ効果はあり、カットした飛沫の全体積で考えると、不織布とポリエステルでは8割程度、綿でも7割程度の飛沫を抑えられるという。一方、フェースシールドでは、50マイクロメートルの粒子も半分が漏れてしまう。
これらはいずれも、マスクを着用した人の飛沫が外に飛ぶ割合を調べている。マスク着用はあくまでも人に感染させないためのものであって、自分が感染しない効果ははっきりしない。(保湿効果や、手で口元を触らなくなるという間接的な効果はある。)
空中に漂うウイルス(に見立てた0.3マイクロメートルの微粒子)がマスク内に侵入する割合を調べた実験では、次のような結果が得られている(Huffpost 2020-7-13)。
布マスク……100%
アベノマスク……100%
不織布マスク(濾過性能の試験をクリアしたもの)……52%
不織布マスク(濾過性能の試験なし)……81%
防塵マスク(N95とDS2の規格を満たすもの)……1%
なお、不織布マスクも、濾過性能がどうであれ、顔と密着していないと100%という結果だったという。不織布マスクを顔に密着させれば半分を防げると聞くと、なかなかやるなと思ってしまったが、半分侵入するのであれば、やはり自分の感染予防にはならないと思うべきか。
追記:今度は向かい合わせにしたマネキンの頭部を使って、「感染者」からの飛沫・エアロゾルが、人工呼吸器で呼吸する「非感染者」の呼吸経路に張ったゼラチン膜に付着するウイルスの量がマスクによってどう変わるかを調べた実験結果が発表された(朝日新聞2020-10-22夕刊)。調べたマスクは微粒子遮断性能の高いN95マスク、サージカルマスク、綿の布マスクの3種類。
まず、感染者がマスクをつける場合、N95マスク(医療用なので感染者が使うことはないだろうが)では非感染者のウイルス吸い込み量は、マスクなしの場合の0%にできたが、サージカルマスクか布マスクの場合は20~40%だった。
では、非感染者のほうがマスクをつけた場合はどうだろうか。この実験は、「空中に短時間漂う飛沫」ではなく、対面する相手からの直撃を想定したものらしいが、N95マスクなら10~20%まで抑えられたが、サージカルマスクでは50%程度、布マスクでは60~80%だったという。
傾向としては、これまでの研究結果と整合するのではないか。
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このたび不織布マスクと「手作りマスク」(ポリエステル、綿;たぶん「3層」ではない)の飛沫防止効果のスーパーコンピュータ「富岳」によるシミュレーション結果が紹介されていた(朝日新聞2020-10-11)。
不織布マスクでは、マスクを通り抜けて前方に飛ぶ飛沫はほとんどないが、鼻のわきなどの隙間から20マイクロメートル以下の小さな飛沫が漏れる。ポリエステルのマスクでは0.3マイクロメートル以下の粒子の約2割が通り抜ける一方、隙間からの漏れは不織布よりも少なかった。綿のマスクでは、0.3マイクロメートル以下の粒子で約4割、0.5マイクロメートルのものも約1割が通り抜ける。これから明らかなように、飛沫の数でいうと、不織布マスクのほうが性能がいい。一方、どんなマスクでも大きな飛沫を防ぐ効果はあり、カットした飛沫の全体積で考えると、不織布とポリエステルでは8割程度、綿でも7割程度の飛沫を抑えられるという。一方、フェースシールドでは、50マイクロメートルの粒子も半分が漏れてしまう。
これらはいずれも、マスクを着用した人の飛沫が外に飛ぶ割合を調べている。マスク着用はあくまでも人に感染させないためのものであって、自分が感染しない効果ははっきりしない。(保湿効果や、手で口元を触らなくなるという間接的な効果はある。)
空中に漂うウイルス(に見立てた0.3マイクロメートルの微粒子)がマスク内に侵入する割合を調べた実験では、次のような結果が得られている(Huffpost 2020-7-13)。
布マスク……100%
アベノマスク……100%
不織布マスク(濾過性能の試験をクリアしたもの)……52%
不織布マスク(濾過性能の試験なし)……81%
防塵マスク(N95とDS2の規格を満たすもの)……1%
なお、不織布マスクも、濾過性能がどうであれ、顔と密着していないと100%という結果だったという。不織布マスクを顔に密着させれば半分を防げると聞くと、なかなかやるなと思ってしまったが、半分侵入するのであれば、やはり自分の感染予防にはならないと思うべきか。
追記:今度は向かい合わせにしたマネキンの頭部を使って、「感染者」からの飛沫・エアロゾルが、人工呼吸器で呼吸する「非感染者」の呼吸経路に張ったゼラチン膜に付着するウイルスの量がマスクによってどう変わるかを調べた実験結果が発表された(朝日新聞2020-10-22夕刊)。調べたマスクは微粒子遮断性能の高いN95マスク、サージカルマスク、綿の布マスクの3種類。
まず、感染者がマスクをつける場合、N95マスク(医療用なので感染者が使うことはないだろうが)では非感染者のウイルス吸い込み量は、マスクなしの場合の0%にできたが、サージカルマスクか布マスクの場合は20~40%だった。
では、非感染者のほうがマスクをつけた場合はどうだろうか。この実験は、「空中に短時間漂う飛沫」ではなく、対面する相手からの直撃を想定したものらしいが、N95マスクなら10~20%まで抑えられたが、サージカルマスクでは50%程度、布マスクでは60~80%だったという。
傾向としては、これまでの研究結果と整合するのではないか。
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